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私はなぜYESと言えなかったのか(3)

稲葉さんのヤンキー疑惑が晴れた初デートから1週間。「お勧めのイタリアンがあるから行かない?」と誘われ、二度目のデートに向かうナヲ子。ヤンキーはイタリアンなんて行かないだろうし(思い込み?)、一安心です。

「こないだと同じ場所に迎えに行くから」とのことで、真っ黒のヤン車風アルファードの扉を開けると、ビリっビリに破けたジーンズにピッチピチのTシャツの稲葉さんがB’zの名曲love me 、i love youを大音量で聴いてます。

Lovemeぴりぴりするならすぐにムッとするのグッと耐えて

二度目のデートということもあり、先回とは比べ物にならないくらいリラックスしていたナヲ子。貝のようにダンマリだったのが嘘のように、無口な稲葉さん相手によく喋ります。

途中から私が新たに挑戦しようとしている仕事の話題になりましたが、なにぶん初めてでリスクもあり、上手くいくかも分からない状態であることを説明すると、稲葉さんは真っ向から否定してきました。

「それ、やめておいた方がいいんじゃない」「危ないよ」「何かあったらどうする?」「上手くいく保証はないんでしょ」「俺は賛成できないな」「無理せず今のままでいいと思うけど」

いやいや、何もそんな危険で怪し気な仕事じゃないんですけど。確かにサラリーマンじゃないからリスクはあるけどさ、よく知りもしないで反対反対って、あんたあたいの何なのさ?!

稲葉さんは一人親方で自分も自営で大変だからこそ心配してくれているんだと思いますが、その頑固で決めつけるような言い方が私をムッとさせます。ナヲ子のヤンキー魂が蘇り、一瞬にしてピリつく車内。

「そういう言い方されると気分悪いんだけど!」

今日もデート開始早々、元気に吠えてま〜す。

「いや、そういうつもりじゃ・・・。俺はただ、ナヲ子が心配なだけ」

余計な心配しやがってとムッとしましたが、せっかくのディナーの前に喧嘩するのも勿体ないとグッと耐えるナヲ子。一触即発ムードを何とか鎮静化したちょうどその頃、稲葉さんお勧めのイタリアンのお店に到着しました。

波長が合わん。

国道沿いのイタリアンのお店は小さいながら活気があり、常連さんで賑わっています。トマトとニンニクの香ばしい香りが漂い、肉の焼ける音にはらぺこナヲ子のテンションは一気に上がります。

「この店は俺のお気に入りなんだけど、どれ食べても旨いから。ナヲ子の好きな物頼んでいいよ」

メニューを見ると前菜だけでも十種類以上、肉も魚介もパスタもピザも沢山あって目移りしちゃう♡ワクワクしながらチョイスするナヲ子。

ナ:「じゃ、このシーザーサラダ食べてみたいな♡」

稲:「サラダならこっちの方がいいよ、魚介のサラダ。ドレッシングが旨いから」

ナ:「あ、そう?じゃ、それいってみよっか」

ま、いっか。美味しいならそのお勧め食べとこっと。

ナ:「パスタはカルボナーラかペスカトーレが気になる!」

稲:「パスタならミートソースがいいよ。ここの旨いから」

ナ:「あ、そう?じゃそれで」

ま、いっか。ミートソースも嫌いじゃないし・・・。

ナ:「あと、このとろ〜りイタリアンチーズコロッケっていうのどうかな?」

稲:「揚げ物頼むならイカのフリットにしたら?旨いから」

・・・。私の好きなもの頼んでいいって言ったくせに、ことごとく却下されてんじゃん!結局自分のお勧めというか食べたいもの頼むなら、最初っからそうすりゃいいじゃん!!

きーーーーっ、とろ〜りチーズコロッケ食べたかったのにぃ!食べ物の恨みは忘れないわよ〜〜〜っ!!!

稲葉さんは稲葉さんなりに私に美味しいものを食べさせてあげたいと思って言ってくれたのかもしれませんが、レストランの注文一つでいちいちイラっとするなんて疲れちゃう。

恐らく稲葉さんは我が強い。そして私も負けず劣らず我が強い。我vs我。メニューひとつ決めるにもまるで戦場のような緊張感です。

短い恋のエピローグ

確かに美味しいイタリアンではありましたが、会話の噛み合わなさと、どうにもならない波動の不調和にモヤモヤしながら店を後にするナヲ子。打って変わって帰りの車内では口数も少なめです。

「どうだった、あの店?旨かったでしょ」

「うん、美味しかった。ご馳走様でした」

しーーーん。

「この後、どうする?」

「んー、そろそろ帰る」

しーーーん。

明らかに盛り下がってるぜぃ、いぇい!

そんな中、果敢にクロージングに臨む稲葉さん。意外と男らしい。

「まだ時間早いし、二人きりになれるところ行かない?」

「行かない」

「・・・ナヲ子、なんか怒ってる?」

怒ってはないよ。怒ってるんじゃなくて。レストランで感じたモヤモヤや、私がやろうとしていること、やりたいことに対して否定的なことばかり言う稲葉さんが、束縛が強くて息苦しい感じがした旨を伝えたナヲ子。

私はこの人合わないな、と思ったので関係を終了する理由として伝えたつもりだったのですが、稲葉さんは「心配して言っただけで悪気はないよ。俺はナヲ子のためを思ってさ・・・」とゴニョゴニョ。

でも最終的には「言ってもらって逆によかった!」と、朗らかな笑顔で妙に前向きな稲葉さん。

私の家の近くに車を止め車内で30分ほど話していましたが、帰り際、しばらくの沈黙の後、意を決したような表情で「キスしていい?」と一歩踏み出すのですが・・・。

う〜〜〜む。いいかと聞かれたらだめでしょ。そもそも手繋いだりキスするのにいちいち許可を求める男って、わたし好きじゃないんだよね。

「ダメ。」

「ダメかぁ・・・」

気まずさを誤魔化すように苦笑いする稲葉さんは男の色気がありました。多分キスしても嫌な感じはしないだろうなと思いましたが、私は稲葉さんと一緒にいると、束縛されて籠の中の鳥になる予感がしたのです(眞子様?)。

稲葉さんは無骨だけどとてもいい人。でも稲葉さんに合う女性は私じゃない。稲葉さんの孤独を満たしてあげられなくて申し訳ないなという気持ちも多少ありましたが、わたしカウンセラーじゃないし。

そもそも私が幸せを感じられる人じゃないと意味ないしね!ということで、ここでの「またね」が結局稲葉さんとの最後になりました。

そして稲葉さんのお陰で私は私のことを自由に泳がせてくれる男性じゃないとダメなことを痛感しました。大らかでYESマン的な男性じゃないと、我の強い私とガチンコ衝突が避けられないことを悟ったナヲ子。

神様!アラフォーで微妙なルックス、強気な無職を受け入れてくれる男性はこの世界にいるのでしょうか?でもさ、スペックはいまいちだけどさ、あたいこう見えて結構いい奴だからさ、誰かカモーーーーン!!!

ということでナヲ子の婚活はまだまだ続きます。本日もここまでお付き合いいただきありがとうございました。恋愛&婚活ネタを中心に連載しておりますので、よろしければスキ&フォロー&ヘルプ(佳代さん?!)じゃない、サポートもお待ちしておりますね!









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