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私はなぜYESと言えなかったのか(2)

黒のヤン車風アルファードで登場した、B’zをリスペクトする稲葉さん。挨拶もそこそこに、記念すべき第一声が「他の男とも会ってんの?」で始まった初デートに、一気にののむ(野々村議員ね)化するナヲ子。

浮気を疑われているような責められているような気分になり、うっかり罪悪感を感じてしまいましたが、ちょいちょいちょい!ってか、私たちまだ付き合ってもないし、そもそも本日初対面ですから!!

ナヲ子、牙を剝く

稲葉さんはテンションが低く雰囲気もどこかしら尖ってます。こりゃ絶対ヤンキーだから、ナメられたらヤヴァイぜよ。危機管理アラートが体中を駆け巡り、野生動物のように警戒心MAXのナヲ子。

「会ってないよ。稲葉さんはどうなの?」

実際は他の男性とも会ってましたが、あえて事実を言う必要なし!言ったら最後、殺られちゃうかもしれないしね。ツンケンした言い方で都合の悪い話はさっさとスルー、質問返しで逃げ切るぜ。

「オレは、ナヲ子だけだよ」

初めてこちらに顔を向けた稲葉さん。顔は、かっこいいな。まゆげ細いけど。細マッチョで腕が太くてハンドルを握る手が大きい。私がジッと見返すとすぐに目をそらし、また寡黙に運転に集中しています。

そもそも初対面で呼び捨てっていうのも何でしょうね?ヤンキー界では常識なの?!既にオレの女感を出してくる稲葉さんですが、こちらから気を遣って話しかける気にもなれず、ひたすら黙っているナヲ子。

「オレのこと、どう思う?」

またしても唐突に聞いてくる稲葉さん。ヤンキーはコミュ力がないのか、どうもこうも答えようがないよ!と思いましたが、ここで隙を見せたらやられちゃう・・・。まずは先手必勝、とりあえずガツンと言っとくぜ。

「どうって、とにかく怖い。怖いしかない」

そのまんま感想を言うヤンキー化したナヲ子。なめんじゃねぇ。婚活セオリーガン無視の気遣いゼロ発言です。

「・・・えっ?オレ怖い??どの辺が」

またもこちらに顔を向け、驚いた表情の稲葉さん。明らかに動揺しています。眉間にシワを寄せたままのナヲ子は、ヤンキーに負けぬようドスのきいた声で続けます。

「どの辺って全部だよ。挨拶もそこそこに他の男に会ってるかって聞かれるのも怖いし、顔も喋り方も雰囲気も怖いし、こんなヤン車みたいなゴツい車に初対面で乗れって言われるのも全部怖い!そもそも今からどこ行くつもり?!」

ふぅ。言ったった。ヤンキーはヤンキーで制す。初対面で出会って10分で吠えるのは最短記録ですかね。てへっ。稲葉さんは一瞬面食らっておりましたが、意外にもブチ切れ返しすることもなく大人な対応を見せてきます。

「ごめん・・・。今からスタバ行く予定」

スタバ??ヤンキーだから人気のない倉庫とか埠頭に連れて行かれたらどうしようと思っていたナヲ子は拍子抜けしました。ヤンキー認定していたけど、もしかして勘違い・・・?

ヤンキーではなく職人だった稲葉さん

その後、ナヲ子の怖がりポイントについてひとつひとつ釈明する稲葉さん。稲葉さんは職業インテリアデザイナーと書いていましたが、実は内装職人で普段男だけの職場だから、怖くなっちゃうのかもとのこと。

確かに車には仕事道具と思われる工具が几帳面に積まれています。私は設計の仕事をしていたので、現場で職人さんと接する機会が多く、職人独特の佇まいや雰囲気も知っているためなるほど納得です。

最初に他の男と会っているのか聞いたのは、前の彼女に浮気されたトラウマがあるため、つい不安になって聞いた。俺は同時進行はできないタイプだけど、私はどうなのか興味があったとのこと。

なる、そういうことでしたか。色々と疑問が解消され、少なくとも殺られることはなさそうだと緊張も解けてきたタイミングでスタバに到着しました。

「ナヲ子、何飲む?俺、買ってくるから座ってて」

テラス席を確保すると、そう言ってレジに並ぶ稲葉さん。結構気が利くし優しいじゃん。いつの間にか眉間のシワも消え、牙もなくなったナヲ子。ようやくLINEでやりとりしていたような楽しい会話が出来るようになりました。

とりとめのない話がひと段落すると、また稲葉さんからサラッと一言。

「ナヲ子んちはさ、男の子いないんでしょ。俺、婿養子でもいいよ」

へ??まさか初対面でそんな話が出るとは思っていなかったのですが、驚きと同時にちょっと前のめりになる自分もいました。そうなんです、実は後継問題は結婚する上で私の中でずっと引っかかっているポイントなのです。

「ナヲ子の親と同居も全然OKだし。調べたんだけど婿になっても相続は関係ないから安心して。別に財産狙いとかじゃないから」

聞くところによると、稲葉さんは幼くして両親が離婚し、母親と二人暮らしだったそう。稲葉さんが大学生の頃に母親が再婚し苗字も変わったが、その後母が他界。義理の父親とは関係も深くないため、今の名字にこだわりがないそうなのです。

この話を聞いてまず1番に感じたのは稲葉さんの孤独感です。母方の祖父母も亡くなり、本当の父親も他界し親戚付き合いもなかったそうなので、稲葉さんには肉親がいない。それってどんな気持ちだろう・・・

20代で肉親を亡くして一人で生きてきたかと思うと、そこには大きな穴がぽっかり開いたような深い孤独を感じます。だからこそ稲葉さんは家族を欲しているんだろう。なんか泣けるね・・・。

ナヲ子の頭の中にB’zのAloneが流れ始め、ちょっとだけ稲葉さんに優しくなりました。お茶だけで解散の予定が軽くご飯を食べて帰ることになり、また会う約束をして家まで送ってもらい、少しだけ距離が縮まる二人。

このまま稲葉さんとお付き合いして結婚しちゃったりするんだろうか・・・。そういえば私も中学生の頃、B’zにはまってたなと思い出し、久々に鼻歌を歌いながら次のデートに臨むのでありました。

長くなりましたので続きはまた次回お届けしますね。本日もここまでお付き合いいただきありがとうございました。恋愛&婚活ネタを中心に連載しておりますので、よろしければスキ&フォローもお待ちしておりますね!






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