短編小説 『金色の稲穂と彼女のふくらはぎ』
私は全力で走っている。視界の隅を黄金色の稲穂がざあざあと音を鳴らしながら揺れている。稲穂をなぎ倒していく風が鮮やかな陰影を作り、左から右へと流れていく。その陰影は、ちっちゃな私を飲み込んで大きな波となり、向こうの山まで続いていく。両膝に交互に体重がかかる。私のふくらはぎはそれを受け止めては跳ね返す。膝がスカートのプリーツを弾く。私はそうして田んぼの一本道をただただ走っている。後ろから自転車が追いかけてくる。私は全力で、それはもう全力で走り続ける。手を前後に思い切り振り抜きなが