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いのちを得る

歌川たいじさんと言えば「母さんがどんなに僕を嫌いでも」という著書で、映画化もされて大ヒットした作家です。

「母さんがどんなに僕を嫌いでも」の、歌川さんのお母さんやお姉さんの描写で、私は、自分の実家を表現してくれた人がいる、とビックリしました。
重なるところがいくつもあります。20歳を過ぎた当時の私が、過去と向き合っても、どう認識していいか分からなかったことたちが描かれていました。

例えば、歌川さんのお姉さんは、アメリカで結婚し、生活されています。きっと今もそうでしょう。生まれ育った、反社会的勢力も多い、貧乏な下町での環境からだいぶ離れた、すごいチャレンジだっただろうと思います。また、しがらみのない土地で、自分の居場所を見つけたんじゃないかと思いました。

漫画の中で、30代とかだろうか、大人の年齢になった歌川さんが、母親のお葬式のために、ごく短期間帰国したお姉さんに「どうしてあの頃かばってくれなかったの」と聞き、お姉さんが「私も居場所がなかった」と話したエピソードで、私はすごく、視界が広がった感覚を得たのを覚えています。

当時、20歳そこそこの私は、同じく20歳そこそこの姉に、
「どうしてあの頃かばってくれなかったの」と聞いて、逆ギレされて戸惑っていたから。数十年後、互いが天国に上がったあとの会話かもしれないが、それでも、キレられずに、そんな一言が聞ける日が来るのかもしれないと思ったら、まだ、やっていけると感じたのです。

歌川さんは「母さんがどんなに僕を嫌いでも」が有名だけど、私も声が枯れるまで何度も泣いたけど、私の再推しは「母の形見は借金地獄」の方です。お母さんが亡くなった後の話です。

それがアニメ化していて、たまげました。下にも貼りましたが、衝撃的なサムネイル画像なので、なかなか見始められませんでしたが、歌川さんのビビッドで明るい色使い、ミュージカル俳優でいらしたこと、楽しませる才能が影響してるのか、倍音の多い温かなお声の朗読がホッコリする、引き込まれるアニメです。

私も、このシリーズを全話まともに追ってるわけじゃなくて、他の楽しい小ネタ動画を見つつ、たまに戻ってる感じです。

今、たまたまご縁があって、歌川さんがなじみ深い地域に住んでいます。
昔、歌川さんの本で、その地域の話を読んだときに、うわぁ~いいなぁと思ったんですが、今回暮らし始めてから気づきました。そういや、ここじゃないかと。

あちこち転々とすることで、良かったのは、こうやって色んな作品、色んな人、色んな時代の自分を思いながら、その土地で自分をよしよしと緩めてやることが出来ることです。昔は、歌川さんが何とか立ち直ったんだから、私もと思いました。

20代前半のときに著書を読み漁り、歌川さんが食肉工場で働いてた話を読んで、私も単純作業というか、体を使う仕事をしようと思ったのは、良い判断だった。

その後に波乱万丈を経てサラリーマンになってらっしゃるのを読んで、単純作業を経ることで、オフィスワークが全然できない私も、何か、言語化できない何かを得てステップアップできると期待したんですよね。

私もようやく、たまたま、歌川さんがなじみ深い地域で、オフィスワークに就けた。会社に出勤する、なんて、言ってます。今までむずがゆくて、工場、工場、って言ってたけれど、オフィスワークだと「現場」更には「会社」って言うしかないもんね。いくら派遣バイトでもね。

私が高校で心身をひどく壊したとき、熱中して読んでいたネットのコンテンツで、今も続いてるのは、歌川さんのブログぐらいなんです。大学生になって実家を出られたとき、すぐに、歌川さんが出てらしたバーに会いに行ったんだ。私は、当時、今よりズタズタのボロボロだった。数回行っただけだけど、すごく学んだことがあった。あれから10数年。

歌川さんがどんどん新しい表現方法を得て、漫画の描き方も変わり、絵柄もどんどんチャレンジされ、ひいては素晴らしいアニメを作られるようになって、本当に嬉しかった。YouTubeチャンネルを見つけたのは、ここ最近いちばん嬉しかったことの1つだ。

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