卑怯な大人18

店長は中岡を雇う事を渋っていました。

なんとなく大丈夫と思っていたが

後になってやっぱあかんわとか言いそうな

雰囲気があったので俺は中岡を喜ばした

ものの不安でした。

しばらくして店長と阪神VS広島戦を甲子園に

見に行きました。

店長に念願の甲子園のカレーを奢ってもらい

本当は未成年なのでダメですが

生ビールも奢って貰いました。

いまはテレビの性能がいいので

テレビで見るのも楽しいですが

やっぱ現場で見ると音の臨場感や

球場に響く声援等迫力が全然違います。

席は一塁側の内野席でした。

目の前に選手たちがダッグアウトを出入りしています。

ひときわ体の大きな選手が出てきました。

ネクストバッターズサークルで44番の背中が見えました。

バットをブンブン振り回しています。

4番ブリーデンのアナウンスが球場に響きました。

「おおおーブリーデン頑張れー」

大声で叫びました。

それに気づいたのか目が合いブリーデン選手が

バッターボックスに入り際俺たちに手を振ってくれました。

ウインクしてチョンチョンと外野を指さしています。

その時は何のことかわからなかった

ですが約束したホームラン打つという

ジェスチャーだったと思います。

店長は立ち上がって子供の様に手を大きく振っています。

 カキーン!!!!!

球がグングン外野の方にライナーで飛んで行ってます。

「おおおおお」

ラッキーゾーンのはるか上段レフトスタンドに突き刺さりました。

「凄いすね あんなん約束して打てるもんすか?」

「ほんまやなぁ~ 来てよかったわぁ~~」

店長は目の前でブリーデン選手がホームランを打った

事を見れて超興奮気味で言いました。

「もうブリーデンさんだけ特別に出前したらなあかんのちゃいますか笑」

「う~ん」

「やっぱ スーパーバイザーにばれたら怒られるやろ」

「なるほど そういうもんすか」

どこまでいっても店長はスーパーバイザ―が天敵の様です。

そのあとブリーデン選手と握手できてサインとグローブと

阪神の帽子までもらいました。

さすがにグローブは欲しかったのですが全部店長にあげました。

「中元君 ほんま有難う」

「自分はなんか人を惹きつける何かがあるな」

その言葉はいままで5人の全く関係のない人間が異口同音

に言ったので俺には人を惹きつける何かがあるんやと

気づくようになりました。


そういえば香港の黄大仙の占いストリートのおっさんも俺の

手相を見て同じことを言いましたので6人ですね。


でも最初に言ったのは店長が初めてでした。

帰り道いまだ見た事ないぐらい店長は上機嫌でしたが

俺は中岡の事で悩んでいました。

やっぱり交換条件みたいなことはあかんかと思い

帰り際まで俺は中岡の事を一言も切り出せずにいてました。

別れ際店長が言いました。

「中元君、あいつのことは任せとけ」

「ええー ほんますか」

「おぅ~ こんだけ自分に世話なってんのに当然やろ」

「じゃぁな」


続く。。。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?