卑怯な大人26

中岡の充実した表情を見て瞬間自分も

清々しい気持ちになりました。

けれどその気持ちをかき消す

どんよりとした黒いなにかに少しづつ

心が支配されていってるような感じでした。

その頃オカンも親父もほとんど家にいません

うちの家庭は崩壊していました。

そのせいか俺は荒んだ気持ちになって毎日夜遊びに

出かける様になりました。

麻紀ともあれ以来会ってませんでした。

あの頃は携帯もないので家か店の電話かお互いの家に

直接行くしか連絡を取る方法はありません。

じりりーん

(電話うるさいな)

嫌々電話を取りました。

麻紀からでした。

「どうしたの?」「なんで連絡してくれへんの?」

「あ、あーごめん」

何かを話してるけど何故か上の空で

生返事しかできませんでした。

「おうちいってもいい?」

「いや今から出ていくからあかんわ」

若い頃は相手のやさしさに気づかず

なぜかふてくされたようになってしまう事

が往々にしてあるとおもいます。

「わかった」「また絶対電話してきてね」

「あぁ」

客観的に見て麻紀は何も悪くありません

ただ俺が勝手にふてくされてるだけの奴です。

麻紀の電話を切ってすぐにまた電話がかかってきました。

「小堀です。」

「あー小堀さん 元気すか?」

「こんにちわ」「今話してもいい?」

「はい」

「あの人の事だけど」

「はい」

「2日に1瓶正露丸飲んでるけど大丈夫かな?」

「えっ?」

(そういえば中岡はいつの頃からかいつも正露丸を

持っていて全然効かん薬やとか言って飲んでたな)

「病院行った方がええかもですね」

「私もそうおもって言ったんだけど、聞いてくれないの」

「う~ん」「俺からも今度病院いけっていいますわ」

「うん、あの人中元君のいう事は聞くみたいだから宜しくお願いします。」

「わかりました言いますわ」

(小堀さん心配そうな感じやったなぁ)

電話を切っていつものように出かけようと思い

家がやっていた喫茶店のバーテンのお兄ちゃんが

カワサキの250CCのバイクを持っていたので

借りて無免許で六甲山に走りに行きました。

スマホもパソコンもプレステも何もない時代

家で音楽を聞いたりバイクを乗り回したり

釣りに行ったりするかしかありません

俺は一度もした経験がありませんが

悪い仲間はよくシンナー遊びをしていました。

中岡の事は気になりましたが脳がはじけそう

になっていた俺はバイクで突っ走るしかありませんでした。

続く

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