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余計なお世話かもしれないけど

今の40代、50代の人達のことを心配している。そういう僕も50代。何を心配しているのかと言うと、この世代の人達は終身雇用幻想を持って社会人となり、今まさにそれが幻想であったことを思い知らされている世代だからである。

それなりの会社で長く勤めてきた人ほど、自分の立っている場所の脆弱性に漠然と不安を持っているだろう。何しろ定年まで勤められるかどうかが危うくなってきているし、そうでなくても50を過ぎたら窓際も覚悟しなければならない。60歳で定年を迎えても年金を貰えるようになるまでは間がある。雇用延長の条件は厳しい。

世の中は人手不足だそうである。しかし長く会社の中で過ごしてきた人にマッチする仕事はそう簡単には見つかるものではない。自分が思っているよりも世の中は大きく変化している。やりたくもない仕事を半分以下の収入でやらなければならないことはざらである。

会社から出たら、「世間の荒波」は想像以上であったと感じるに違いない。

まあ、それはある程度覚悟したとして、実は予想していないところから襲いかかってくるのが「孤独感」である。

会社は役所の手続きをかなりの部分代行してくれているのだが、それが当たり前のように思っていると、全部自分でやらなければならないことに気づいたときに結構焦る。一人であることを切実に感じる。

そして何より堪えるのが「自己紹介」である。所属が言えない。「無職の何某です」とカラカラ笑いながら言えれば上等であるが、これがなかなか言えないものなのだ。そして、その度に孤独を味わう。人と会うのが億劫になる。不安がどんどん大きくなる。そしてメンタルをやられる。いきなりの「天涯孤独」はとてもおそろしい。

と、ひとしきり怖い話をしたが、では僕はどう乗り切ったのかという話をしよう。

先に書いた危機は僕も遭遇はしたのだが、笑って話せるほど軽く通り過ぎることができた。

どうして軽く済ませることができたのかというと、第一に会社の外のコミュニティと接触を持っていたからである。とあるオンラインサロンに入っていたのだが、そこはリアルな人の交流も盛んだった。それも全国的なスケールで。とにかくフットワークの軽い人が多くて、主宰者(本をたくさん出していて、テレビにも出るような有名人)と一緒にテレビゲームをすることもあった。東京が中心ではあるんだけど、北海道のメンバーもユニークな人が多く、北海道でイベントをやるとなると全国からメンバーがやってくるような雰囲気だった。僕はそこでいろいろな人と会い、いろいろな話を聞くことができた。

その人間関係の中から、「読書会」というものの存在を知った。本好きの僕にはお誂向きの場所で、いそいそと通っては本の話をしていたが、そこで友達になった人と、また違うコミュニティにつながることになった。

結果的にいくつものコミュニティに属する自分が生まれることになった。いつもなんらかのイベントがあって、そこで新しい人とのつながりが生まれることになった。

SNSも役に立った。実際に合った人とFacebookでつながるというのは安心感がある。繰り返し会っているうちに友達らしい友達になってきたりもする。ありがたいことに年齢差の大きい若い人も付き合ってくれる。相手がどんなふうに思っているかはわからないが、僕はさほど年齢のことを気にせずにいろんな話をする。

結果、孤独感を感じたのは一瞬だった。いろんなコミュニティの中で役割ができるとコミュニティなりのエピソードの中で自己紹介はどんどん簡単になる。起業している人にも出会って、とりあえずやりたいことをとりあえずやってみようという感じで税務署に開業届を出して、その屋号を使って名刺を作ったら、それはそれでひとつの落ち着きどころを得た感じになった。名刺など100枚作っても1000円もかからないから、会う人ごとに配りまくって、なくなったらちょっと肩書(もちろん自分で考える)を考え直してマイナーチェンジしたものを作り直したりするのである。

所属など自分で作ってしまえばいいし、肩書も自分で名乗ってしまえばいいのだ。僕は比較的得意なIT系の肩書を作って使っている。そこから仕事の芽も生まれだす。まだまだ稼げるようにはなってはいないが、少しずつ人様から直接お金をいただくということにも慣れてきた。

いつしか会う人に「いつも幸せそう」と言われるようになった。本人はそれどころではなく結構苦心しているんだけれど、周りの人にはそう見えるようである。

雑然と書いてきてしまったが、大事なことをまとめると、安心して組織を卒業するための効果的な準備は「会社以外のコミュニティを持っておくこと」ということに尽きる。それは別に仕事に関わるものでなくてもいい。むしろ仕事とは関係ないほうがいい。そこに自分の居場所を作っておけば、「会社」を失っても大丈夫なのだ。

欲を言えばそのコミュニティに多様な人がいるほうがいい。いろんな生き方を見ることができれば、自分が生きていく道筋の参考になる。たまには自分の持っている知見が若い人の役に立つこともあるかもしれない。そうやって徐々に自信をつけていくのだ。

新しい仕事先はたぶん面白いことばかりではないだろう。それでも自分の属するコミュニティはココロを守ってくれる。

おすすめする。いろんな人がいるコミュニティで損得抜きで誰かのために動いておこう。それは未来の自分を救うことになる。

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