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NCL遠野コーディネーター インタビュー(後編)

現在、NextCommonsLab遠野(以下、NCL遠野)はローカルベンチャー事業メンバーを募集しています。

前編では、NCL遠野コーディネーターの方々が、NCL遠野に参画するまでの経緯やコーディネーターとしての活動内容について、お話を伺いました。
後編では、より具体的にNCL遠野コーディネーターとしての活動がイメージできるように、みなさんの働き方や実際に活動されて感じていることなどをお伝えします。

お話していただくのは前編に続いて、NCL遠野コーディネーターを務める、室井 舞花さん、多田 陽香さん、木内 真美子さんです。

NCL遠野コーディネーターの働き方とは?

------みなさんどんな働き方をされているのですか?

---(室井)「仕事」と呼んではいるけど、もはや「活動」なんですよね。

---(多田)仕事とプライベートの切り分けができなくなってきていて。地域の方々とお会いして、話をすることも仕事といえば仕事なんだけど、自分の中では仕事と捉えていない時もあります。

---(木内)プライベートで関わり始めた方と、次第に「一緒にお仕事ができそう」という話に発展することもよくありますね。

---(多田)ほぼすべてのことが仕事に繋がっている気がします。だからと言って「バリバリ働いている」と言われるとちょっと違う気もしますね。

---(室井)とはいえ、仕事とプライベートが曖昧になりすぎると気持ちの切り替えがしづらくなるので、意識的に休みを取ることも大事ですね。私は東京と遠野の二拠点で生活をしているのですが、実はそれが良いバランスになっていたりします。

------みなさんそれぞれ各自が裁量を持って活動されているのですね。

---(木内)今自分のするべきことが何かを考えて動くことがほとんどです。もちろん状況によって、個人ではなくチームとして取り組まないといけないこともあります。
みんながそれぞれ単独で動いていくために大事だなと思うのは、チームに対する信頼感ですね。チームへの信頼感がないと絶対がんばれない。そういう意味で、今のメンバーはとてもチームワークがいいし、お互いに信頼しあって仕事に取り組めていると思います。

---(室井)ある程度働く環境が自由でも、信頼感とチームでやっている意識を持つことができれば、勤務時間を縛ったり、同じ場所で働くことを強制することは重要じゃないんだなと思います。

---(木内)一方で、「おかしいな」とか「なんでこうなっているの」という状況が起きた時は、どこかで話し合うとか、疑問を吐き出し合うようにしています。思っていることをそのまま言えるのも信頼がないとできないこと。お互いに違和感に気づきあって声を掛けあうみたいなことは、適宜、調整しているチームだなと思います。

---(多田)私もチームワークがすごくいいなっていうのは参画した当初から感じています。
なんでそうなっているんだろうと考えると、人の気持ちの変化を察することができる人達だからかなと思いますね。ちょっとした変化に気づいて声を掛け合う、みたいなことが1対1でもできているし、全員が一緒にいる時もできているから、不信感が生まれない。

---(室井)それは意識して気を付けていますね。コーディネーター間だけではなく、起業を目指すラボメンバーに対しても、特に活動の初期段階で意識してきたことかなと思います。「今あまり体調がよくない」とか「こんなことがあってちょっとへこんでいるみたいだよ」とか「疲れが溜まっているみたいだよ」とか、設計した事業計画だけに則ってその人のプロジェクトを評価するよりも、その人の生活や周辺環境全体を見て、伴走するようにしています。

(cap:ラボメンバーと呼ばれる起業家へのサポートとして実際に作業を一緒にすることも)

「見たいと思っていた光景が、少しずつ実現し始めている」これまでと
「次のチャンスに向かう」これから

------最後に、みなさんが実際にNCL遠野コーディネーターとして働いてみて、感じていることを教えてください。

---(多田)そうですね、私は遠野に来たことで、会いたかった人に会えているなという実感があります。今一緒にいる方たちは、それぞれ経験してきたことは違うけど、疑問や課題意識をもって、今、自分の意志で遠野という場所にいる。自分と感性が近い人たちと一緒にいられているなという喜びがありますね。

---(木内)私は遠野に来る前から抱いていた「様々な立場の人同士の接点や関わりを地域でつくる」ことが、瞬間、瞬間でできているなと感じることが増えてきています。例えば、Commons Spaceの隣にある福祉施設を利用している障害のある方(Aさん)が、「U」を訪れてくれるので、私とAさんとの接点・関係ができているんです。さらに、AさんとUに訪れる子ども達との間でも徐々に関係が生れています。この間、子どもが高く積み重なった本の中から、下にある本を引き抜こうとしていたんです。そのまま引き抜いたら、上から本が崩れてしまうような危ない状況で。その時、Aさんがその子に「上から順番に下ろして取るといいよ」と声を掛けて一緒に本をおろしていくというやりとりが自然に起きていて。これって障害者は障害者施設、子どもは保育園や児童館、という分断された環境では生まれない景色だと思うんです。双方が、自然に存在しあう場所になったなと感じた瞬間でした。また、Aさんがそういう危険に気づく視点があること、声をかけるスキルや優しさがあるということが分かったし、子どもにとっては、小さな頃からAさんのような方との接点が自然にあれば、障害理解教育にもつながると思うんです。見たいと思っていた光景が、少しずつ実現し始めていると感じています。

---(室井)私は、遠野で暮らす10代の子たちとの出会いを通じて、大きな手応えを感じています。市内で開かれたワークショップで出会った、学校生活や人間関係に悩んでいた子が、私を含めNCL遠野のメンバーと話すうちに「いろんな生き方があるんだ」と気づいてくれたこと。不登校の高校生とそのお母さんが、私と知り合ったことが後押しとなって、ピースボートの船で世界一周を経験したこと。木内が以前勤めていた大学の教え子が約1か月遠野に滞在し、彼が遠野にいた時のことを「出会った人達がいい意味で個性的な人が多くて、荒川アンダーザブリッジ(※)の登場人物みたいだった」と話していると聞いた時は、これ以上ない私たちへの誉め言葉だと思いました(笑)

10代の子たちとの関わり以外にも、「小上がりと裏庭と道具 U」で地元の女性たちがフリーマーケットを企画したり、ビールプロジェクトのメンバーが小学生の宿題を見ている場面があったり。肩書にとらわれず、その場に居合わせた人同士で交流が生まれる場面を見て「いいなぁ」と、感じる機会が増えています。

そうした一つずつの出来事は偶然に起きていることですが、「人が集いやすい環境を作り、コーディネーターたち自身のバックグラウンドを開示していくこと」は、場づくりにおいてとても意識していることです。地方は、人口や他の地域との物理的な距離から、学校や家族、職場以外での人間関係を築きにくい側面がある。そうした地方に、私たちの活動によって新たな交流を生む「サードプレイス」となるような場所を作っていけるといいなと考えています。しかし、なかなか目指す形に追いついていないところもあるので「もっとできることがたくさんあるな」とも感じています。

※『聖☆おにいさん』でもお馴染みの作者・中村光作の漫画。荒川の河川敷に住む不思議な人々と、一人の青年の魂の交流を描く、笑いあり感動あり?の人間物語。

(cap:小上がりと裏庭と道具Uでは他にも、NCL遠野メンバーと地域の人が交流する「ごはん会」やスタッフの得意分野を生かした企画を体験することができる「スタッフ常駐DAY」などを実施。NCL遠野コーディネーターは場づくりにも積極的に取り組んでいます)

------まだ現状に満足できるような状況ではないのですね。

---(室井)私たちが普段していることは、人と人を繋げながら、誰かの背中を押したり、何かが起きるきっかけをつくること。そうしてNCL遠野の立ち上げからこれまでは、起業支援を主軸に事業を展開してきました。これからは徐々にその対象を地域の人や市外、県外の人にまで広げていけるといいなと思っています。

現場では日々いろんなことが起きています。1年目に考えて動いてきたことが最近になってようやく形になってきているんです。そういう瞬間があるから、本当に面白い。今は、立ち上げの時期を経て、次のチャンスに向かう段階。やりたいことはたくさんあるし、もっと面白い人達がたくさん集まる場所にしていける。まだまだこれからです。

地域に入り込みながら、最前線で「ポスト資本主義の実現」に取り組む

NCL遠野コーディネーターの活動は、メンバーそれぞれが意識していることや得意なことによってさまざま。そのため、メンバー間での信頼感を強く持ちながら、各自が「自分で考えて動くこと」を基本として活動しています。インタビュー中の様子からも、個々それぞれが想いの実現に向けて活動していることやメンバー同士が信頼感を持って関わりあっていることが、強く伝わってきました。

座談会形式でのインタビューに加えて、採用担当の多田さんからは、それぞれどんな役割や人物像が求められるのかも、お話していただきました。

---(多田)今回2名コーディネーターを募集しているのですが、一人はマイクロワークの取り組みを担当する人を募集します。、現在マイクロワークの専任担当の木内さんのパートナー的な役割を担う人です。
マイクロワークはテクノロジーや地域通貨を活用して進めていくプロジェクトなので、マイクロワークの仕組みを理解しながら、テクノロジーや地域通貨を組み合わせて新しい発想ができるような人。相手の認識レベルに合わせて適切なコミュニケーションがとれる人に応募していただけるといいですね。
募集するもう1人は、企業や団体と連携しながら、企画を立案・実行する人です。交渉力が求められる場面で、積極的にコミュニケーションのとれる人。新しい事業を立ち上げることができる人。企画力・実行力がある、精神的にもタフな人に応募していただけると嬉しいです。

NCL遠野は発足から、今年で3年目。室井さんが「歩んでいるなという感じはしながら、『まだまだだな』とも思っています」と話す通り、想いを実現するための取り組みはこれからさらに活発化していきます。

今回の前編、後編の記事を呼んで、NCL遠野の取り組みやコーディネーターとしての活動について、興味を持った方はぜひ下記の募集要項をご覧ください。
NCL遠野では、室井さん、多田さん、木内さんらと共に、地域に入り込みながら、最前線で「ポスト資本主義の実現」に取り組む仲間を募集しています。

(文章・写真:宮本 拓海)

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Next Commons Lab遠野では、2019年度次期メンバー(コーディネーター、ビアツーリズム)を募集中です!

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