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発酵プロジェクト 八重樫海人インタビュー

こんにちは。NextCommonsLab(以下NCL)遠野の富川です。このブログではNCL遠野の活動をレポートしています。
今回は「発酵プロジェクト」に、どぶろくの蔵人として参画している、八重樫海人さん(岩手出身・1986年生まれ)を紹介します。

大学院まで心理学を学んだ後、WEB調査会社でアンケート項目の設計を担当していた八重樫さん。どぶろく作りとは程遠い人生を歩んできた彼が、なぜ発酵の道に進もうとしたのか。そして、なぜNCLに応募したのか、話を伺いました。

− ご自身のプロジェクトについて教えてください

遠野出身の醸造家/料理人の「とおの屋 要」佐々木要太郎さんのもとで、3年間発酵について現場で技術習得をしながら学び、自立を目指すプロジェクトです。


− 今、取り組んでいることを教えてください

2016年10月から活動を開始し、どぶろくづくりと、研修先である「民宿とおの」で料理や配膳などの手伝いをしています。
どぶろくづくりは最初は分からないことだらけでしたが、教えてもらいながら見よう見まねで取り組んできて、最近はようやく慣れてきました。
また、どぶろくの原料になる米も自分たちで育てているので、夏は、田んぼの作業がある日は草取りや水の上げ下げを調整してから出勤しています。
一日の行程としては、午前中にどぶろくの仕込み、午後は商品発送の作業、夜は民宿の手伝いといった流れになりますね。なかなか忙しいですね(笑)


− これまでの経歴を教えてもらえますか?

もともと発達心理学に興味があり、大学では教育学・心理学を専攻していました。心理学を深めたいという思いから院にも進みました。その後、新卒でWEB調査会社に入社し、アンケートの設計などをしていました。

− NCLに参加しようと思ったきっかけを教えてください

NCL遠野の募集があった時、地元・盛岡に戻って遠隔で仕事を継続していました。次の仕事をどうしようかと考えていた、ちょうどその時にこのプロジェクトのことを新聞で見かけて興味を持ちました。
その頃は発酵プロジェクトに応募することは考えておらず、遠野は盛岡とそんなに遠くないし、とりあえず応募してみようかなぁと軽い気持ちでした。最初は、クラフトビールが流行っていることもあってビールプロジェクトに興味を持っていました。安直ですよね(笑)

その後、東京の説明会に参加したのですが、その時もまだ具体的なイメージは湧かなかったんです。ただ、説明会の個別説明の時に発酵プロジェクトの話を聞いたんです。。いま思えば、それがきっかけだったかもしれません。
その後、遠野の現地説明会にも参加して、現場を見ることで少しずつイメージが具体的になり、なんとか事業計画を書いて応募したという感じでした。

現地説明会の様子(民宿とおのにて)

− 最終的に「発酵プロジェクト」にしようと思った理由は?

現場を見て、話を聞いて、一番イメージが湧いて事業計画を書けると思ったものが、発酵だったからでしょうか。ビールプロジェクトは興味がありましたが、他の応募者の方々と差別化できるポイントが少ないかなぁ…と思っていました。

− NCLで惹かれた部分を教えてください

NCLは、これから日本各地に拠点が出来ていきますが、各拠点で得られた経験や知識、情報をオープンソース化していくという部分がいいと思いましたね。

− 元IT企業出身の視点ですね

どうでしょう(笑)
もちろん地域おこし協力隊制度を活用したベーシックインカムも魅力的ではありました。

−プロジェクトの拠点となる「民宿とおの」で活動してみてどうですか?

まもなく研修を始めて一年経つので、どぶろくの作業手順など、土台となるものは覚えてきました。でも、まだまだ理想の味に対する明確な基準は自分の中には持てていないですね。それには経験が必要です。
ただ、作業をする上で疑問に思う部分は、同時期に入ったチームメンバーと議論しながら、その都度考えて進めてきましたね。


「民宿とおの」では、これまでパートナーの佐々木さんともう一名の蔵人の方が長年二人三脚でどぶろくを仕込んできました。そういう意味では、僕を含めたメンバー達がほぼ初めて外から入ったので、教える方も大変だろうと思います。今は、作り方を早くマスターして、一緒に最高のおいしさを追求していけるようになりたいです。


−プロジェクトの醍醐味を教えてください

やはりどぶろくを作っているので、飲んでもらって「美味しい!」とか「こんなどぶろくは初めて!」と言っていただくのが嬉しいですね。
また、「ここのどぶろくが楽しみできました!」というお客さんもいます。民宿に足を運んでいただいたきっかけは要太郎さんが積み上げてきたどぶろくですが、現在は自分がつくったものを提供しているので、「美味しい」といっていただけると同じ品質が担保できているんだなと思えて嬉しいですね。
これからは、品質の安定化に向けて学んだことを体系立ててまとめていけたらと思います。前職でマニュアルの作成などもしていたので、オープンソース化できたらいいなぁと思います。


−プロジェクトの大変な部分を教えてください

肉体的に疲れるというのはありますが(笑)、これからどぶろくの事業を拡大していくため、そして自主プロジェクトを進めていくためには資金が必要なので、資金をどのように集めてくるかに頭を悩ませていますね。助成金なのか投資会社なのか、プロジェクトのパートナーから出資してもらうのか。そのあたりを要太郎さんと一緒に考えているところです。



− NCLに参画してみてのギャップや、改善点などはありますか?

遠野は第1弾ということもあって、立ち上がりは全体がバタバタしていた記憶がありますね。活動拠点も事務局もこれから出来ていくところでしたので、土台や仕組みから全員で作っていくものなんだな、と理解しました。
あとは、他のメンバーと仲良くやっていけるかなぁと心配でした(笑)

また、Next Commons Labが、従来の地域おこし協力隊制度とは異なるプログラムであるということを、もっと地域の方々に知ってもらえるように改善できたらいいなと思います。どちらかというと、「地域おこし」よりも個々人の起業を重視している取り組みですので、利己的と思われる側面もあるかもしれません。ただ、遠野の地域資源を磨き、発信していく地域に根ざした取り組みなのは間違いありませんので、そこは地域の方々に理解してもらえるような活動をしなければいけないと思います。


−2年後のイメージを教えてください

実は、いまのところ起業する事は考えていません。というのも、やればやるほど発酵の道は奥が深く、技術的にも資金的にもすぐに独立というのは難しいと考えているからです。いまは要太郎さんのもとで活動している事が楽しいですし、彼がこれから挑戦しようとしている事にも積極的に関わっていきたいと思っています。現状では、3年後も引き続きここで活動していきたいと考えています。


−最終的にやりたい事はどんな事でしょうか?

教育に興味があるので、中高生に発酵について教えていく取り組みが出来たらと考えています。
加えて、アルコールから一番遠い人、例えば子どもと妊婦さんにアプローチしていきたいんです。具体的には、どぶろくを原料とした酢を製造していますので、まず酢に興味を持ってもらい、その後にどぶろくや米に興味を持ってもらう。そんなイメージで展開できれば面白いですね。

−他のプロジェクトやメンバーとのコラボレーションは何か考えていますか?

フードハブ・プロジェクトの料理人・藤田さんとは一緒に何かワークショップ等をしたいと思いますね。忙しいのでなかなか実現していませんが、8月から市内の高校に向けた総合学習にNCLも関わっているのですが、「発酵」もテーマの一つとして扱うので、まずはそれを一歩目としたいです。ほかにも、発酵プロジェクトを進める中でメンバーに相談や協力関係がつくれたらと思います。


−NCLに興味を持っている方にメッセージをお願いします
NCLは地域おこし協力隊制度を活用しているため、それによって暮らしやすさがある反面、個人ですべて事業を進めていく場合には遭遇し得ない制約やまわりからの評価に直面することもあります。そういう部分はメンバーとして参画してからでないとわからないこともたくさんありますが、説明会や選考の過程で抱くイメージと、実際の活動のギャップを埋めるためにも、一度どこかのNCLの現場を訪れて話を聞いてみることをおすすめします。可能ならば、現地ラボメンバーのシェアハウス等に泊まって暮らしの一部分だけでも体験し、生の声を聞いてもらうのも良いかもしれません。私の住むシェアハウス(通称:コタツハウス)は、いつ来ていただいても構いません(笑)。
一言では括れない色々なタイプの仲間がいることもNCLの大きな魅力だと思うので、ぜひ話を聞きにいらしてください!


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