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けいとら(母の日におくる物語)

かれこれ5、6年つらつらと考えていた絵物語を、母の日に合わせて公開しようと、制作に取り掛かったのが数日前。結局、母の日には間に合いませんでしたが、読み返してみたら、母の日とはあんまり関係なかったわと、2日遅れでアップいたします。

有料の設定になっていますが、全ページを無料エリアに掲載しています。おもしろかった、気に入った、もっと頑張れ、と思った方は、ぜひ100円の投げ銭を。(有料エリアにオマケあり)

この作品に関しては、今後もシーンをどんどん追加していく予定です。


「けいとら」母の日に送る物語

ぼくが自動車運転免許を取得したその日、

父が死んだとの知らせが届いた。

ぼくは父の顔を知らない。


母は父について語らない。ぼくも尋ねない。

20年間の暗黙の了解のまま、

母とぼくは父が暮らしたという町へ向かった。

父が残したもの。

自らの骨、わずかな家財道具、軽トラが1台。

母は黙って骨を持ち帰った。

ぼくは父の軽トラで旅に出る。

ぼくは父の顔を知らない。

風の向くままに進み、

気の向くままに立ち止まる。

山があれば登り、

海があれば渡り、

腹が空けば食い、

眠くなれば寝、

金がなくなれば働き、

人が居れば出会い、

雪が降れば耐え、

花が咲けば眺め、

雨が降れば休み、

実れば味わい、

帰りたくなれば……

ぼくは父の顔を知らない。


母は言った。

「あんた、あのひとにそっくり。」

母はぼくを強く抱きしめた。

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