見出し画像

かぶとの彩色勉強中です。

こんにちは。
伝統工芸・奈良一刀彫ブランド「NARADOLL HIGASHIDA」の職人見習い、阪本小雪です。
作家 東田茂一先生のもとで、日々勉強させていただいています。

5月5日は端午の節句。男の子の健やかな成長を願い、兜飾りやこいのぼりを飾ってお祝いする日ですね。
初節句を迎えられたみなさま、誠におめでとうございます。
奈良一刀彫の節句人形制作を学んでいる私にとっても、ひなまつりとならんで一年の節目となる日です。

自宅にもかぶとを飾りました
NARADOLL HIGASHIDA かぶと 群青
小さいながらも凛々しいかぶとです

いつも、ひなまつりの季節に向けて大忙しとなるNARADOLL HIGASHIDAの工房。
兜飾りの制作も並行して進んでおり、無事に雛人形をお届けし終えた頃からはいざ兜飾りの仕上げへ!というのが私たちの春です。

大兜 茶

大きさやデザインなど、いくつかの種類があるNARADOLL HIGASHIDAの兜飾り。
そのなかでいちばん小さい『かぶと』の彩色を中心に、今年から私も兜飾りの彩色を教わり始めました。

彩色途中のかぶと

今まで、彩色についてはおもに雛人形や小物などから学ばせていただき、そのなかでも水干絵具を用いる部分について携わってきました。
今回からは、いよいよ岩絵具を用いての彩色に挑戦させていただくことになり、緊張の連続。
(奈良一刀彫の彩色には、おもに「水干絵具(すいひえのぐ)」と「岩絵具(いわえのぐ)」を用います。どちらも日本画で使われる日本古来の顔料です。絵具についてはまた別の投稿で詳しく書かせていただきたいと思っています。)

岩絵具の原石
京都 エビスヤ画材にて

岩絵具の感触はまた独特で、膠との配合の加減や沈殿しやすさ、筆へののせ方、塗り重ねの加減など、経験を重ねて感覚として身につけていくべき課題がたくさん見えました。

最後に鍬形を取り付けて完成します

今までずっと見てきたかぶとでしたが、実際に自分で彩色してみると絵柄の配置のバランスや均一さ、線描きの太さなどにそれぞれ「これが心地よい姿」という塩梅があって、彫りと彩色どちらも緻密に構成されているということを改めて実感しました。

例えば吹き返しの部分を菱形に割って菊花を描いていくときですが、まずはコンパスを使って均等に配分を設定していきます。これをガイドにして描いていくわけですが、吹き返し部分は平面ではなく多面でカーブしている立体なので、いろいろな角度から見たときに違和感のない、心地よい姿になるように微調整しながら描いていきます。

蝶結びの忍緒の下地部分は藍色。吹き返しの黒と、微妙なコントラストがあります。

先生が描くとこともなげにスムーズに進んでいく彩色ですが、自分がやってみるとこういった感覚的な微調整の部分が難しく、慎重に慎重に(というかかなりビクビクしながら)進めていくのでとても時間がかかります。

時間をかけたから良い仕上がりになるかというとそうでもないのが職人仕事の不思議なところで、熟練の技をもってある程度リズミカルに描いた方が佇まいの気持ちいい姿に仕上がるのです。
こればっかりはもう、練習と本番を重ね、ひたすら経験を積んで目と手を養っていくことでしか成長しないものだな、と思います。

かぶとシリーズ 全3色

難しさも感じつつ、新たな題材に取り組むことはやっぱりとても刺激的でワクワクしています。
かぶとのベースに塗った黒を磨き、彫りの細かい溝の中まで刷り込み筆で丁寧に磨き上げていく工程などは、雛人形では経験したことのない工程で新たな楽しさを発見しました。
塗ったばかりの黒と、磨き上げた黒を見比べると、同じ絵具を使った黒でも質感の違いでこんな風に表現を変えられるのか…!と。

今期、東田先生が制作された大兜
彩色前の大兜
奈良一刀彫らしい「面」での構成

これからまた、大きなサイズの兜飾りなどの彩色、そして彫りも身につけていけるよう、まずは目の前の課題からコツコツ積み上げていきたいと思います。まだまだ先は長い、長い。

NARADOLL HIGASHIDAのHPでは、インテリアとしても魅力的に映える兜飾りの写真などもたくさんご覧いただけます。
ぜひ、全体の雰囲気と細部のこだわりなど、じっくりとご覧いただければ幸いです。

それでは、また。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

NARADOLL HIGASHIDA Instagram
https://www.instagram.com/naradollhigashida/

阪本小雪 Instagram
https://www.instagram.com/ittobori_sakamoto/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?