ザクのこと。
ネコビル1Fに住む『ザク』。
彼は猫エイズキャリアのいわゆるりんご猫。
推定とされる年齢はだいたい7歳前後らしいのですが、どうももう少し歳をとっていそうだな。という行動が多く、スタッフの見立てでは11歳ぐらい。
ニンゲンにかまってもらうことが大好きで、お部屋のすぐ横にあるソファに座ると、駆け寄ってきて手を出して
『はいっておいでよ』
と誘ってくれます。
ザクはもともと岐阜のネコリパブリックで暮らしていました。
岐阜県内のスーパーマーケットの敷地内でうろうろしていた元野良猫で、人懐っこいあまり、店内にまでついていこうとしてしまい止むを得ず保健所に連れて行かれるということになってしまい、保護されることに。
岐阜店のころから一緒に暮らしているおなじりんご猫のオレオと大の仲良し。寒い日にはファンヒーターの前でふたりで抱き合いながら眠っています。
りんご猫たちが持っているFIV(ネコエイズウイルス)。
もちろん人にはうつりません。HIV(ヒトエイズウイルス)とFIV(ネコエイズウイルス)は同じ種類ではあるものの、FIVは猫属に特定されるウィルスのため人間や他の種の動物にうつることはありません。
感染経路は喧嘩の噛み傷から感染することがほとんどです。FIV(ネコエイズウイルス)はウイルスに感染した猫の唾液に多く含まれます。
感染した猫がほかの猫をグルーミング(毛づくろい)することで感染する可能性もありますが、その確率はとても低いと言われています。
発症しなければ普通の猫たちと変わらないぐらい長生きをし、天寿を全うしてくれる彼らはキャリア(発症していない猫)です。
ザクもそうでした。
歯が悪く、思うようにご飯を食べられなくなってきたザクのために、いただいたご寄付で歯の抜歯をしようと病院で血液検査をしてもらった2018年1月10日。
腎数値が思いの外わるいことと、黄疸がでているのでその治療を1週間して再検査後に抜歯しましょう。とのこと。
『早く歯抜いて、思いっきりバクバクご飯たべようなぁ。ザク。』
と、私たちスタッフも治療に対してとても前向きに、ザクをつれて点滴に通いました。
1週間後の1月18日。
いつもおだやかでとても物腰の柔らかいかかりつけ病院の先生。
血液検査後、そんな先生の表情がこわばっていたことをとてもよく覚えています。
1週間の点滴と投薬にもかかわらず、腎数値が悪化していたこと、原因を更に調べるためエコー検査をしても、発症以外に説明がつかない結果だったことを告げられたのです。
呆然としながら、ザクを連れて乗り込んだ帰りのタクシー。
キャリーから、『ねぇ、ねぇ』と言っているように伸ばしてくるその小さな手を見ると、涙がとまりませんでした。
どのような形でみなさまにお伝えするのが最適か。考えすぎてお知らせが遅くなってしまったこと、すみませんでした。
先生によると、ザクの余命は約半年です。
だけど本人はいたって元気。
誰よりも貪欲にごはんを催促し、気に入らないごはんは断固として食べない。そんなわがままもいつも通り。
腎数値を気にしながらあげていた予防食はもうやめました。
大好きな総合栄養食のチュール、魚がメインの缶詰、お腹を壊さない程度に好きなものを食べさせることにしたのです。
余命半年と言われた日からも、よく食べてよく遊んでよく眠る、変わらないザクの毎日がここにはあります。
君の最期は、受け止めきれないぐらいの愛情をもって、私たちが看取ってあげる。
だから思いっきりわがままをしていいよ。
最期までいっしょに。
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