猫のまにまに

フリーペーパー「猫のまにまに」「そのヒグラシ」発行人。本業はフリーじゃないライターです。

猫のまにまに

フリーペーパー「猫のまにまに」「そのヒグラシ」発行人。本業はフリーじゃないライターです。

マガジン

  • コラム

    落穂ひろい

  • ショートストーリー

    フリーペーパーに掲載したものの再録など

  • ある歌人神官がみた明治

    物置から出てきた史料から、先祖は代々古い神社に仕えていたと判明。明治27年~明治33年に高祖父が詠んだ歌を紹介しつつ、ファミリーヒストリーを追っています。

  • 観劇記録

    舞台、ライブなどなどの感想

  • 「飲食店ラプソディ ―何の飲食哲学の欠片もなく」

    「生きていくのが苦しいのは、自分自身の、自分だけの問題」と思っていたが、飲食店を開いてみると、大げさに言うならば、それは、世界の構造上みんなが抱えていた苦しさ…だった。(中原蒼二)

最近の記事

サブ手帳として使っているfILOFAXのミニ6サイズ、フィンスバリー。メイン手帳ばかり使ってるので出番があまりない。ちょっと使い途の変更を考え中。

    • さよなら、闇堕ち お雛さま

      実家で四半世紀以上しまいっぱなしになっていたお雛様を引き取り、毎年飾っています。今の住宅事情では貴重となった七段飾り、でも飾るたびにちょっと複雑な思いになる。それでは聴いてください、「お雛様の闇堕ち」。  実家じまいで七段飾りのお雛様を引き取り、毎年飾るようになった。  お雛様を見に女友だちがやってきて大人のお雛祭りを催すなど、「楽しいひなまつり」が続いている。  実は上巳の節句3月3日は私の誕生日でもあり、年中行事の中でも雛祭りは特別な思いがある。  だが、この七段飾り

      • もう3月も終わりだけど、ゆえあってまだお雛様でてる。まあ知ってる限りいくつかの美術館でも今月いっぱいお雛様を展示しているところがあるし。ただ、ほんとそろそろしまいたいのですが、連日の雨でしまうにしまえない。

        • <ショートストーリー>池のぬし

           久しぶりに帰省して、せっかくなのでそこらへんをちょっと歩いてみることにした。お昼までに戻ってくれば墓参にはじゅうぶん間に合う。  ついでに供花を買ってきて、スーパーで売ってるから、という母の声を背中に聞きながら、玄関の適当なスニーカーに足を突っ込んだ。  ところどころ新しい家に建て替わっている住宅地を抜け、通学路をたどってみる。少し坂をのぼるとみえてくる調整池は以前のままだ。危険だから近づいてはいけないといわれていた。江戸時代、田んぼの灌漑用に造られた池とかで、ぐるっと外

        サブ手帳として使っているfILOFAXのミニ6サイズ、フィンスバリー。メイン手帳ばかり使ってるので出番があまりない。ちょっと使い途の変更を考え中。

        • さよなら、闇堕ち お雛さま

        • もう3月も終わりだけど、ゆえあってまだお雛様でてる。まあ知ってる限りいくつかの美術館でも今月いっぱいお雛様を展示しているところがあるし。ただ、ほんとそろそろしまいたいのですが、連日の雨でしまうにしまえない。

        • <ショートストーリー>池のぬし

        マガジン

        • コラム
          4本
        • ショートストーリー
          5本
        • ある歌人神官がみた明治
          14本
        • 観劇記録
          2本
        • 「飲食店ラプソディ ―何の飲食哲学の欠片もなく」
          5本

        記事

          「猫のまにまに」という漫画があるんですね…フリーペーパー「猫のまにまに」は2017年から不定期で個人的に発行して鎌倉の立ち飲み屋周辺で配ってきたもので、無関係です。なんか、すみません。いまんとこ猫要素ないのになぜ「猫のまにまに」なのかも…ごめんなさいね。

          「猫のまにまに」という漫画があるんですね…フリーペーパー「猫のまにまに」は2017年から不定期で個人的に発行して鎌倉の立ち飲み屋周辺で配ってきたもので、無関係です。なんか、すみません。いまんとこ猫要素ないのになぜ「猫のまにまに」なのかも…ごめんなさいね。

          <ショートストーリー>道の果て

          「だいだらトンネル(仮称)全面開通を早期実現しよう!」という色あせたスローガンを掲げたトタンの立看板が、風でベコベコ音を立てている。それ以外に主張するものはない、荒涼とした空地が広がっていた。  エンド・オブ・ザ・ロード。誰も通らない道路は山裾に突っ込むように唐突に終わる。その先はアスファルトの敷設もなく、もっさり生えたセイタカアワダチソウが、トタンの鳴らすベコベコにあわせて黄色い頭を振っていた。  私が知らない昭和とかいう時代に、この山のどてっ腹にトンネルを通して、隣町

          <ショートストーリー>道の果て

          ある歌人神官がみたかもしれない大正

          今回は小ネタです。葦の舎あるじの孫娘タツ、すなわち私の祖母が持っていた写真、撮影時期はいつで写っているのは誰なのか、考察してみました。答えは、はたして。先にいっておくと、わりと中途半端です。 証明写真サイズのちっさな写真  「ある歌人神官がみた明治」では、私の父方の高祖父(4代前の先祖)、“葦の舎あるじ”が書き残していた歌集『随感録』を読み解いている。  葦の舎あるじの戦前・戦後の写真を、私の祖母タツは何度か引っ越ししながらも、ずっと保管していたようだ。  当人は認知症

          ある歌人神官がみたかもしれない大正

          先祖の恋歌編、完結。永遠の愛をあの岩に誓うよ/ある歌人神官がみた明治(13)

          恋に破れた明治29年。ふたりで写真撮りながらも別れゆく明治30年。國學院卒業にともない帰郷した明治31年、ついに葦の舎あるじはめぐりあう。 たとえば千年 千年じゃ足りないか?  「ある歌人神官がみた明治」(10)でもふれたとおり、帰郷してまもなく葦の舎あるじの歌には「わぎも子(吾妹子:恋人)」の姿が登場する。  何気ない花見のお誘いのような歌ながら、どこか華やぎ艶めいた気配がする。一緒にうちの庭の桜をみようよ、が口説き文句になるとは。逢いたい逢いたいしつこく詠んでいた2

          先祖の恋歌編、完結。永遠の愛をあの岩に誓うよ/ある歌人神官がみた明治(13)

          舞台「タマリ」観劇記。良質なシチュエーションコメディの、イタく愛おしい者たち

           地元の推し役者が出演すると聞き、ラゾーナ川崎プラザソルへ。千穐楽の開場前、すでに行列ができていました。  脚本はNetflix「サンクチュアリ-聖域-」を手掛けた金沢知樹氏。元・芸人で、構成作家でもあるとのことで、テレビ業界の裏側の「我々一般人は実際に見知ってるわけじゃないけど、きっとこんな感じなんだろうなあ」っぽさ、見せ方がめちゃ上手い。  最終リハーサル前、収録スタジオ脇のスペースで繰り広げられるワンシチュエーション・コメディです。登場するのは、いずれもかつては一世

          舞台「タマリ」観劇記。良質なシチュエーションコメディの、イタく愛おしい者たち

          <ショートストーリー>梅は飛び桜は枯るる世に

           本家の庭にある梅の木に、「小太郎殺し」という物騒な名前がついていると教えてくれたのは叔父だった。私はまた小学生だったと思う。  大きな梅の古木は、いわゆる源平咲きという、紅白に咲き分けて花をつける種類だ。咲き分けの品種には有名な「思いのまま」という八重咲のものがあるが、この梅は一重咲で、まるで尾形光琳の紅白梅図屏風の二本の梅がひとつになったような佇まいをしている。  梅が咲く季節に本家を訪ねる機会はそうないのだが、記憶のなかの梅はいつも、夢かうつつか、静かに花びらを散らし

          <ショートストーリー>梅は飛び桜は枯るる世に

          問わずがたり ライターになったころ

          フリーペーパー『そのヒグラシ』(特集「新世界」)に寄稿したテキストが自己紹介に流用できそうなので、一部加筆の上で転載します。※コロナ禍前の文章です。 そもそも『そのヒグラシ』が何かという話はいつか別の機会に。 問わずがたり ライターになったころ  数年前、「サードプレイス」という言葉を知った。自宅(ファーストプレイス)、一日の大半を過ごす仕事先(セカンドプレイス)とは違う、居心地の良い第三の空間のことをいう。現代社会において重要な、創造的な交流が生まれる場だという。  社

          問わずがたり ライターになったころ

          Missing…言葉にできるなら少しはマシ/ある歌人神官がみた明治(12)

          会いたくて会いたくて震えていた葦の舎あるじである。つのる想いとは裏腹に、彼に訪れた運命とは。 前回はこちら まるで織姫・牽牛みたいに逢えない二人だねって ボクは  前回から引き続き、逢いたいのに逢えない恋に、葦の舎あるじの心は乱れていた。  七夕に詠む歌も、あきらかに逢えない自分を仮託している。  明治29年の七夕。葦の舎あるじは帰郷中だったと思われる。おそらく東京にいる我が織姫を思い浮かべ、再会を待ちわびていたことだろう。  だが、9月になって彼が須磨で途中下車して

          Missing…言葉にできるなら少しはマシ/ある歌人神官がみた明治(12)

          四月大歌舞伎の席とれた。3月はせめて幕見でもと思ってたけど、結局行けなそう。團菊祭と時蔵襲名披露は行きたいしどちらかは良席おさえたいからそのための我慢と思う。

          四月大歌舞伎の席とれた。3月はせめて幕見でもと思ってたけど、結局行けなそう。團菊祭と時蔵襲名披露は行きたいしどちらかは良席おさえたいからそのための我慢と思う。

          〈ショートストーリー〉おん・ばらだ・はんどめい・うん

           おや、久方ぶりの香を聞く。  打ち鳴らされる鈴の音と御堂に満ちる坊主達の読経…やだ、もうそんな時期なのね。  まあ、久方ぶりというのは人の世の感覚で、私にしてみれば33年なんて刹那ってとこ。ちなみに、経典上では指パッチン1回が60〜65刹那といわれてるわ。  あるいは成人男性がふたりでカーシー産の絹糸の束を引っ張り、もうひとりの男がよく切れる刀でその糸を断ち切る時、1本切れるごとに64刹那経過するとも。  たとえ話にしてもややこしいわね。とにかくあっという間ってこと。私

          〈ショートストーリー〉おん・ばらだ・はんどめい・うん

          恋歌。「エモい」で済むなら31文字も要らない/ある歌人神官がみた明治(11)

          明治29年は、葦の舎あるじにとって恋の年だった。のだと思う。恋歌が突出して多い。逢いたいのに逢えなくて、思いをつのらせる青年の歌だ。 思わないようにしようとすると、かえって忘れられない  明治29年に詠んだと思われる53首のうち、17首が恋歌である。明治30年は1首のみ、明治31年は64首中12首、33年に至っては1首もない。※『随感録』は32年の歌が存在しない。  怒涛の連作。逢いたい、逢いたい、逢えない。君のことばかり考えてしまう。どストレートに思いのたけがこもった

          恋歌。「エモい」で済むなら31文字も要らない/ある歌人神官がみた明治(11)

          〈ショートストーリー〉停電に山椒魚の夢をみる

           枕元のスマホをかざすと、Wi-Fiが切れて圏外になっていた。  未明の静まり返った寝室で、耳をすませてみる。階下でかすかにうなっているはずの冷蔵庫のモーター音も聞こえない。そっと起き上がってカーテンをひくと、この時間ならまだついているはずの街灯が消えている。  どうやら停電。  浅い眠りをさまたげた違和感の正体がわかり、もうひと眠りしよう、と寝床に潜りなおす。  谷戸に位置する我が家は携帯電話の電波が届かない。こうなってしまうと情報収集はお手上げになると、去年の台風時に3

          〈ショートストーリー〉停電に山椒魚の夢をみる