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イケメンにはイケメン寿命がある。

イケメンにはイケメンでいられる期間、イケメン寿命というものがあるらしい。

私の祖父は若いころ、銀幕スター顔負けのイケメンだった。祖母が亡くなったあと、遺品のアルバムから出てきた祖父の写真はどこかで買ったブロマイドかと思ったほどだ。遺影のなかで笑う祖父は、どこからどう見ても禿げたお爺さん。巣鴨の通りでも歩いていれば、昔はイケメンだったなんて誰も気づかないだろう。ありふれたどこにでもいそうな老人だ。

生前の祖母はよく自分の子供に、「お父さんは若いころ俳優の池辺良さんに瓜二つだったんですよ~オホホ」なんて惚気ていたらしい。その池辺良似なイケメンの息子である父は、とくにイケメンではない。それどころか、若かりし頃撮ったお見合い写真は、お相手のお嬢さんにばっさりとお断りされるありさまだった。お相手曰く、見た目が好みじゃないと。


そんな父でもちゃんと恋愛結婚をした。周りの同年代より少し遅めの結婚だったが、かれこれもう30年以上連れ添っている。両親が不仲なところは見たことがないし、つまらない諍いはあれど家庭生活は順調だ。諍いの内容も「スイカを縦に切るか横に切るか」程度の犬も食わないレベルのものだ。別にイケメンじゃなくたって結婚して幸せになることはできる。

私が思春期の子供だったころ、「ねぇ、お父さんと結婚した決め手ってなに?」と母に尋ねたことがある。母は、「ま、誠実だったからね」と言った。大切なのは顔面偏差値ではなく誠実さらしい。あとは父が結婚を少々焦っていたこともあるようだ。どうやら必死さは土壇場で力を発揮するらしい。

イケメン祖父も家庭生活は順調だった。それが誠実さによるものか、イケメンパワーのなせる業か今となっては知る由もない。ただ、遺品の写真からうかがい知れることは、池辺良に似たイケメンでも年を取れば普通のお爺さんになるということだ。髪の毛だってなくなる。諸行無常のような、なんだかさみしい気もするけど。


幸運にもイケメンに生まれた人は、イケメン寿命を無駄遣いせず誠実に女性と接してほしい。残念ながらイケメンではない人も、やっぱり誠実さがものをいうようなので、誠実さと少しの必死さで頑張ってもらいたい。イケメン祖父の孫のくせに、美人でもない普通顔な私が陰ながら応援するから。


がんばれ非イケメン!!負けるな非イケメン!!

イケメンもちょっとだけがんばれ。

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