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一流に捧ぐラブレターを。

友達というには私が不相応な、仕事仲間というにもおこがましい。

とはいえ、20代前半からの付き合いで「今さらなに言ってんの?」と、静かに&激しく突っ込んできそうな自慢の2人がいるんですよ、私には。

ヒグチアイ と 草野華余子

どちらも素晴らしいシンガーソングライターで、作詞家で、作曲家です。「悪魔の子」に「紅蓮華」と言えば、もう誰にでも伝わる、もはや説明しなくても良いぐらいの、日本を代表するアーティストの2人。

ヒグチと華余子ちゃん。そして2人は私を、それぞれ「マリエたん」と「マリエ」と呼びます。どちらがどちらなのかは、パブリックイメージの通りでしょうか。

今日は、そんな2人のツーマンライブを見てきました。

出会いがどうとか付き合いがどうとか、プライベートな話はステージ上の2人に繰り広げてもらうとして(アンコールでのMCは本当に酷かった!(褒め言葉だけど!笑))、私は2人がインディーズの下積み時代からずーっとライブを観ていて、なんなら同じステージに立っていて、ツアーを一緒に回ったりもしていた。かつて、同じステージから、同じ景色を見ていた事があるんですよ。今では信じられないけれど。

そして私は27歳、ちょうど10年前にシンガーソングライターを廃業しました。ひとつの悔いもなく、今でも「あの時の私、めっちゃカッコ良かったんですよ!」と言える引退ライブをしました。今でも華余子ちゃんから3年に1度くらいのペースで「また歌いたくならんの?」と聞かれる事があるのだけれど、毎回即答で「全然ならないね」と答えています。嘘でも虚勢でもなく心からそう思っているし、それを分かってくれているからこそ「ほんまにやり切ったんやなぁ」と、毎回しみじみした返事が返ってきます。

表方から裏方へとシフトした後も、ずっとライブに足を運び続けていたのは、この2人だけのような気がするなぁ。他にも音楽仲間や先輩・後輩はたくさんいるけれど、活動のスタンスが変わったり、どうにもタイミングが合わなかったり、色々な事情が重なったりして。それでも、この2人の節目のライブに関しては、いつもどうにかしてスケジュールをこじ開けていたように思います。そして、その度に「色々あるけど、また頑張るかー!」と元気を貰ってきました。

記憶が確かならば、先に華余子ちゃんの作曲家デビューがあり、その後にヒグチのメジャーデビューがあり、そこから数年。華余子ちゃんはライブの日にスタッフとして声をかけてくれる事もあれば、ヒグチは編集長を務める雑誌で執筆の依頼をしてくれる事もありました。

そこに至るまで、そこに至った後も、本人達が思うようにいかないであろう日々があった事でしょう。2人にとっての私もそうであったはずで、お互いに、時には3人で、それぞれを見てきました。

そんな2人が、ここ数年のうちで一気に社会的に大きな成功を収め、日本に留まらず世界中で数多くの人に知られるような存在になった事が、とにかく純粋に嬉しいんですよ。

ほんの少し前まで、まだ世間に見つけられずにいた、"私だけが知っている"かのように思えていた才能が、こんなにも世に大きく放たれて、盛大に評価を受ける瞬間に立ち会えた事は、素晴らしく爽快でした。ついでに言うなら、痛快で、愉快でした。

それとは逆に、薄暗い気持ちを記すならば、「表方という同じ土俵に立っていなくて良かったな」とは、結構本気で思う。今の私は裏方であり、音楽の現場だけに留まっている訳ではないからこそ、羨望や嫉妬といった余分な感情に支配される事もなく、単純に元気を貰う事が出来るのだと冷静に分析しています。

私個人の意見として、ひとりの人間が「一流になる」までには、本人の資質や才能や技術や努力や運やその他諸々の、『本人』によるところが大きいと考えています。

ただ、ひとりの人間が「一流で在り続ける」には、『本人』にプラスして、さらに『その周りにいる人たち』がどれだけその人のために身を砕けるか、だと思うのです。私がこれまでに直接お会いした一流と呼ばれる方々が、もれなくそうだったので。

その上で、私は2人をずっと観てきたので、断言できるんですよ。

彼女たちはこの先ずっと、一流で在り続けますよ。だって、こんなにも求心力のある人たち、他にいませんからね。

一流である彼女たちに私から渡せるものは今のところ特に見当たらないのだけれど、そんな事を言うと華余子ちゃんから「またマリエは!そんなこと言うて!!」と盛大にしばかれそうだし(恐い)、ヒグチは「……」と無言で微妙な笑みを向けてきそうなので(怖い)、このあたりで黙ろうかな。

私がこれから一流になるには、あまりに遅く、足りず、欠けているものが多いので、また同じ視点から何かを眺める事はないかもしれないけれど、それでも腐らずに生き延びて、一流の"二流"あたりまでは上り詰めるつもりなので、ちょっと待っててね、という気持ちではあります。

しかしまぁ2人とも容赦がないのは皆様ご存知の通りですし、今後もどんどん先へ上へと行くのでしょう。正直あんな高みで待たれていても普通に困っちゃうし(笑)、私は遠くから見て、相変わらず凄いなぁ……と爆笑しているぐらいが幸せなんじゃないかと思っています。「あー、見えるなー」ぐらいの位置で。

ただ、大切で尊敬する2人の友人が、この先もそれぞれにとって幸せな音楽人生である事を、心から願っています。さらに願わくば、健康と共に。

いやぁ、我々もそーいう年齢になりましたからね。私は、ヒグチがよくライブ(特にワンマンライブ)の結びで言う「元気じゃなくても、また会いましょう」という言葉が大好きなんですけど、元気じゃなくても、健康ではいましょう。

一流たちと。
※掲載許可は頂いています

(1番左はヒグチの実妹であるギタリストのひぐちけいちゃん。けいちゃんもまた才あるひとり。昨夜のライブは出音の素晴らしさに「けい様」と呼びたいぐらいでした。)

今日も今日とて、素晴らしい夜でした。愛と敬意を込めて。

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