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BONNIE PINK ~ しろぼし

 一番好きなアーティストは何と聞かれてなかなか即答できなかったのですが、最近はBONNIE PINKと答えるようにしています。十年二十年と聞いていたはずなのですが、そこまで好きだと自覚していませんでした。そんなことがあるんでしょうか。不思議な話です。大好きなアーティストは聞いた瞬間から大好きなわけではなかったようです。
 BONNIE PINKは洋楽の匂いのする曲をずっとやっているシンガーソングライターです。欧米のロックやポップスやR&Bのエッセンスを、洋邦楽ともいえる独自の形へ落とし込んでいます。メロディアスで奇抜で心地よくて、キャッチーすぎない。パンチのある曲はそのぶんくどさや飽きやすさにもつながりますが、ボニーピンクの曲はスルメです。噛めば噛むほど味が出るし、その時々の気分でマイベストを組めば全く違うプレイリストに仕上がります。
 ベストアルバムもリリースされていますが、果たしてこれはベストなのだろうかという地味さ。ボニーピンクを聞くときはこの曲が聞きたくて聞くという聞き方をあまりしません。ボニーピンクの世界へ触れる、ボニーピンク自身へ触れるという感じがあります。極論どの曲でもどのアルバムでもいい。曲同士で大きな差がないのです。
 ボニーピンクを聞いてみてと誰かにすすめるとしたらと考えながらプレイリストを組んでみました。でも正解は出ていない。好きなぶん、上手く選べない。並べたものを聞いてみる。ボニーピンクはやっぱり素晴らしい。でもこれが本質かと言われると違う気がする。なんなら全部聞いてほしい。それでも良さはなかなか伝わらない気がする。よく分からないなりに何となく聞いているうちに、ボニーピンクのことが急に掴める瞬間がくる、かもしれない。それには時間がかかるかもしれないし、こんな格好いいアーティストだったのに何故なんとなく聞き続けていたんだろうと反省するかもしれない。周波数が合うまでは、ざらついた曲をラジオのように聞き続ける。いまいち判断のつかない曲たちが、覚えられずに素通りしていく。脳が喜んでいるのにそれを言語化できないあまりに好きだとすら気付くのに時間がかかる。
 神格化はされていない、音楽ファンなら知っているし、皆がきっと悪くないと思っている、それなのにファンの声をあまり耳にしない。今となっては活動ペースを落としているのでさもありなんですが、大ファンだと私は宣言しておきます。

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