ネネネ

短歌をつくっています。

ネネネ

短歌をつくっています。

マガジン

  • 担架

    ネネネの短歌まとめ

  • ネビュ〜

    映画・本・漫画・アニメのレビューや感想

  • neeessay

    ネネネのエッセイ、ネッセーです

  • 小節

    フィクションとノンフィクション

最近の記事

きみは左で

酢醤油が絶妙だった それだけでたぶん理由はじゅうぶんだった コンビニがひかって見える時間帯魔法にかかったふりするごっこ コーヒーの温度は82℃がいい舌が痺れる感覚が好き オンビキを伸ばし棒ってきみは言う いや、ちがうな、「のばしぼー」だな 潜水が上手な子どもだったこと海を見るたび思い出す ほら これ以上奪われないですむように笑えるくらい深い深爪 窓のない部屋のまんなか ばかでかいベッドだろうと端っこで寝る まだ夢の続きみたいでこわくなる 喉がふるえて、生きてるん

    • 思い出はいつもきれいだから

      無意味だと思った日々を振り返る無意味な時間ばかりいとしい うしなったことだけわかる唇がちいさな音を立てて乾いた 砂時計何度も何度も反対にしたかったのに 好きだったのに じゃんけんぽん(きみは優しい)あいこでしょ(ぱーを出したら笑ってくれる) 花束をふたりでほどく 運命も奇跡も恋も色褪せていく 2021/1 映画『花束みたいな恋をした』 ***** 『花束みたいな恋をした』を観て短歌を作った。 この映画、「すごくよかった」っていう感想と同時に、「でも結局さ」とい

      • 花束みたいな日々と恋

        映画『花束みたいな恋をした』を観ました。 観ている途中から、「あ、この映画はわたしの中で記憶に残る作品になる」という確信があった。 観終わってすぐのこのホヤホヤの感情を忘れたくないので、感想と銘打ちながらただただ思いの丈を綴らせていただきます。 がっつりネタバレもしているので、まだ観ていない人はお気をつけて。 終電を逃したことがきっかけで知り合った、絹ちゃん(有村架純)と麦くん(菅田将暉)。この映画は、そんなふたりの甘く切ない花束みたいな恋をした5年間を描く、純度100

        • 知らない

          丁寧に夢を語った夏のこと忘れないまま六年過ぎた 泣いたのはもうかなり前 親指の付け根の傷をゆっくりなぞる そういえば毎年晴れる命日のやさしい風にあなたをおもう かなしみを全部溶かしたそのあとでこんなにきれいに揺れる青空 #tanka

        きみは左で

        マガジン

        • 担架
          ネネネ
        • ネビュ〜
          ネネネ
        • neeessay
          ネネネ
        • 小節
          ネネネ

        記事

          鬼滅の刃短歌まとめ

          お家時間が格段に増えている。 本当だったら今日、鬼滅の刃の「全集中展」に行っているはずだった。しかし、結構な倍率を勝ち抜いて整理券一番という奇跡的な数字をゲットしていたにもかかわらず、やむなく中止が決定。 こんなご時世だし、残念だけどしょうがないねと泣く泣く納得し、今日はひたすら録画した春アニメを観たあとミッションインポッシブルシリーズを振り返っていた。(いちばん好きなのはローグ・ネイション) 夕方過ぎ、一緒に展示に行く予定だった友だちからラインがきた。開くと一言、「あし

          鬼滅の刃短歌まとめ

          さよなら神保町

          会社を辞めた。 プシュ〜ウ、と音を立てて閉まる電車のドアがひとつの区切りのように思えて、なんでもそうやって物語にしたがる自分の脳みそに「ばぁか」と言いたくなる。ばぁか。うん、ばかだよな。 でも、今までのように毎日この駅に降り立つことはなくなるのだ。すこしくらい感傷にひたってみてもいいのかもしれない。 ***** 辞めることは1月末から決まっていて、今日は最終出社日だった。 朝、出社してすぐに東京バナナをばらまいて社員の人たちにお礼を言ってまわった。前の席のYさんは自宅作業

          さよなら神保町

          正常な無呼吸

          合言葉ふたりで決めて手放した 片方だけじゃ意味がなかった ハウリングしちゃって笑って壇上でごめんなさいっておどけた記憶 脳みその捏造ばかり上手くなるわたしは自分を信じられない 飼い犬のしまい忘れたベロのこと 美しかった夕立のこと 発言はやめておきます群青の異臭を放つ朗らかな人 パパラッチみたいなことをしてんなよ三白眼で花はほほえむ あなたなら大丈夫って言わないで誰かの善意がずっと重たい こわいのは無自覚の嘘 知らぬ間に友達だってことになってる 生きづらいことを

          正常な無呼吸

          闇に沈む 『パラサイト 半地下の家族』

          どこで引き返せば、どこまで巻き戻れば悲劇をふせぐことができたんだろう。 「もしも」の展開を考えても考えても、けっきょくあの結末からは逃れられなかった気がする。 映画『パラサイト 半地下の家族』を観た。 予告編 主人公のキム・ギウは、父、母、妹と半地下で暮らしている浪人生。家族仲は良いけれど全員失業中で、生活は苦しい。 そんなある日、ギウは大学に通う友人からの紹介で上流家庭パク一家の娘の家庭教師をすることになった。身分を偽り、パク一家に入りこむギウ。ギウは、もともと働いて

          闇に沈む 『パラサイト 半地下の家族』

          fake me

          夢のまま溶ける快楽 絶望が背中合わせで微笑んだ夜 あの頃に戻りたかったあの日々のわたしをいつか許せるのかな Never say die あの子のいない夏の日につぎはぎだらけの心臓の音 変わらないことが正しいわけじゃない泣かないことはつよがりだった クレイジーブルース そんな簡単に傷つくなんて思わないでね 2019 「TANKA SONIC」で出した連作です。去年のマイヘアに続いて、今年はYUIでつくりました。 高校時代飽きるほど聴いたYUIの曲、いまでもほとんどの

          ムーミンがこっちを向かない月曜日

          ムーミンがこっちを向かない月曜日 きみの背骨のくぼみを撫でた 火曜日はカエルの声が聞こえない わたしの喉はまだ治らない 終わらない仕事まみれの水曜日 駅のホームで飲み干すビール 木曜日きれいな月は見えなくて かざした指は白い深爪 会いたいと言えないくせに金曜日 マックシェイクをがんばって吸う 土曜日を引きずったまま日曜日 ムーミンいつかわたしを見てね 2019 歌人のふんどしで編んだ連作です。 #tanka #連作

          ムーミンがこっちを向かない月曜日

          st

          「ほんとうにぺったんこやな、仰向けになったらおれと変わらんくない?」 Tシャツも着物もワンピースも似合うちいさな胸にちゃんと謝れ 慎ましく生きるタイプじゃないけれど人目を気にせず走れるタイプ 心臓が直接つかまれたことをまだ覚えててたまに苦しい 貧しくはないです 夢も悲しみもきみへの想いもちゃんと守った 2017/4 なつかしいのまとめました。ツイッターにあげていたやつです。に、にねんまえ………… #tanka #連作

          空腹と寝不足

          楽しげに花を殺して占った無邪気なままで机を彫った 正しさを信じて走る夢を見て、それでも上手に泣けなくて、朝 秒針の音がうるさい刻まれる感覚だけで生き延びた過去 気だるげに首をかしげる扇風機はりつく汗が嫌じゃなかった ぐずぐずに溶けたアイスの実をあげる 濁れ、きれいな絵の具みたいに 見たいものだけ見ていいよ、偽物のわたしはすこしやさしいみたい 冗談と夢と言い訳 適量はちゃんとわかっていたはずだった (元気だよ、どうしようもないほど元気)電気を消してまぶたを閉じる

          空腹と寝不足

          モグラの夢

          小さい頃に見た夢を今でも覚えている。 なぜかわたしはモグラで、ひたすら土の中を車で走っていた。かなり長い間走ったあと、途中で崖から外に飛び出して落下。飛び出した先には海があって、車体から放り出されてゆっくり背中から海へ落ちた。空を見上げる姿勢になったとき、崖の上に父と母が立っていたことに気がついたけれど、伸ばした手は届かなかった。視界がスローモーションになって、両親の姿はどんどん離れていく。わたしはモグラの姿のまま落ちていく。これは夢だと、夢の中で気がついたのはそのときがは

          モグラの夢

          BANANA FISH聖地巡礼 -NY旅行記まとめ-

          去年『BANANA FISH』にはまり、先日とうとう舞台であるニューヨークまで行ってきました。4泊6日でもじゅうぶんに聖地巡りと観光を楽しめるんだな〜と大満足。(トータルで見るとなかなかに波乱万丈な旅になったような気もするけれど……) そんな聖地巡礼&観光の旅行記をまとめたので、よかったら読んでみてください。おそろしく長いので時間があるときにでも。 それにしても最高でした。つぎはどこに行こう〜! #旅行 #BANANAFISH #聖地巡礼

          BANANA FISH聖地巡礼 -NY旅行記まとめ-

          「これ以上ないってくらい暗くてひどい話」

          救いようのない話がすき、というと語弊があるような気もするけれど、俗に言うハッピーエンド以外の結末に惹かれることが多い。絶望としか思えないようなラストでも、その結末は登場人物である彼や彼女たちにとっては希望ということもある。しずかに余韻に浸りながら絶対に重ならない人々の人生を考える時間がすきだ。どうしてもわからないこと、理解できないこと。だれも説明してくれないことに、生きていれば何度もめぐり合う。 そのたびに、わたしたちの日々も簡単に完結しないのだということを思い知る。 --

          「これ以上ないってくらい暗くてひどい話」

          それなり

          アパートの前の工事は冬までかかるらしい。 毎週月曜日に工事進捗のチラシがポストに入れられて律儀だなあと思う。確かに朝8時から鳴り響くトンカントンカン音はうるさいしわずかながら揺れるのだけど(これはたぶんわたしの住んでいるアパートの構造にも問題がある)、むしろ目覚ましのかわりになっているし、べつに生活に支障をきたすほどじゃない。 それなりに、平和だ。 きのうは朝から横須賀美術館に行って、せなけいこ展をみたあと灯台に登った。横須賀美術館は海のそばにある。建物のかたちはクラゲみ

          それなり