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有料過去記事まとめ

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これまで有料で公開してきた記事をまとめています。瞑想の性質についての解説や、独り語りのマニュアルなど、ボリュームと読み応えがあって有益なエントリが多いかと思いますので、よろしけれ… もっと読む
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記事一覧

規範の単一化を求める実に「宗教的」な欲望について

 昨日のエントリでは、近時の言論空間は「カードバトル(以下)化」しているように見えるところ、その背景で進行しているのは、実は「規範の(無自覚な)単一化」という事態ではなかろうか、という話をした。それを受けて本稿では、この「規範の(無自覚な)単一化」という事態の問題点について、とくに宗教との関係に着目しつつ、さらに詳論してみることにする。

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「読む」ことのプロであるとはどういうことか

 昨日のエントリでは、なぜ「人文学」の人たちは原典を読もうとするのか、という問題について、私の立場からの解説をひととおり記した。本稿ではそれに引き続いて、「人文学」の教育現場で多く行われている原典講読のゼミ(演習)の効用についての話からはじめて、さらにこの知的営みの性質について明らかにしてゆくことにしたい。

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なぜ「人文学」の人たちは原典を読もうとするのか

 最初に用語の定義から述べておくと、ここでいう「人文学」は Humanitiesの意味であって、自然科学(Natural sciences, これを複数形にすべきかどうかという問題はとりあえず措いておこう)、社会科学(Social sciences)と並ぶ、学問領域の伝統的な三分類のうちの一に相当するものである。一部SNS等で繰り広げられている「人文学」(もしくは、「人文系」)に関する言説には、どうもこうした基本的な定義の確認すらなされておらず、そもそも自分が立論のために使用

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「人格」や「尊厳」とは、そもそも一体なんだったのか

 昨日のエントリでは哲学教育の意義について述べたけれども、それでもやはり、「そんなことをやって何のメリットがあるのかわからん」と感じた人はいるかもしれない。そこで今回は、現代日本社会において私たちが日常的に使用している「人格」及び「尊厳」という言葉(概念)に着目して、その哲学的背景について略述してみることにより、こうした疑問に対する別の角度からの回答を試みてみることにしたい。

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「搾取だ」という権力行使

「弱者との関わり合いは、結局のところ搾取的にならざるを得ないのではないか」といった話を見かけて、以下の過去エントリを思い出した。  私は「搾取」という言葉は「差別」や「暴力性」と同様に、事実そのものの記述ではなくてその価値付けの表現であると考えている。要するに、事実として存在する関係を特定の誰かが観察して、それに対する本人の評価(価値付け)を当該の関係を描写することで明らかにしたいと思った時に、選択され得る表現の一つが「搾取」だということだ。したがって、「搾取」という言挙げ

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私の故郷の深海のこと――「両生」と「心のスペース」について

 昨日のエントリでも軽く触れたことなのだが、沼田牧師とのツイキャス対談で、私は「相談というものがわからない」という話をした。相談が「できない」ということではない。そもそも「相談」という概念自体が、もちろん語義の説明なら可能であっても、実感としてはシンプルに「わからない」ということである。  相談が「できない」というのは、本当はそうしたほうが当人にとってはよりよいだろうと思われるのに、種々の理由によってそれが不可能な状態にあるということだ。たとえば上掲の文章や先日の対談におい

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わかり手×ニー仏キャス補論―「大人」の責任、「弱者男性」、女性の身体性

 先日のわかり手さんとのコラボキャスで語り合った話題について、いくつか補足的に考えたことがあるので以下に記しておく。 (※録画視聴パスは、今月の本文無料記事の「おまけ」欄にあります。)  述べておきたいことは三つあって、まずは「"庇護されるべき人"に対する "大人"としての責任の取り方」というテーマであり、次には「いわゆる"弱者男性"の包摂に伴う実際上の諸問題」というテーマであり、そして最後は「女性の身体性に関する複数の了解の仕方」というテーマである。  既に限定公開と

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ネットでみんなで喋るコツ

 ちょうど一年ほど前のことになりますが、「ネットで一人で喋るコツ」というエントリを、こちらの noteに投稿したことがありました。  こちらは本文にあるとおり、「Youtubeやツイキャス、ニコニコ生放送といったウェブサービスを通じて、複数の聴衆に対して一人語りをする際の、コツについて述べるエントリ」で、幸いにも多くの読者の方々よりご好評をいただくことができました。  本エントリは、上掲記事の内容を発展的に補うものとして、今回は一人語りについてではなく、二人もしくはそれ以

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栗本薫さんのこと――没後十年と『転移』に寄せて

 中島梓/栗本薫さんの闘病記・絶筆である『転移』を読む。まず何よりも彼女が亡くなったのが既に十年前であることに(迂闊ながら)驚いてしまった。旦那さんによる「私の奥さんは他界してしまいました」というコメントはよく覚えていたので、せいぜい数年前のことのように思い込んでいたのだが、あれも mixiでのコメントだったらしく、私はミャンマーに渡航する前にそれを目にしたのだということになる。  読了直後の感想を端的に言えば、誰もが指摘することだが、やはり「書くこと」への中島/栗本さんの

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〈非難のレトリック〉に、置き捨てられた女性たちのこと

 昨夜は「アンチツイフェミフェミニスト」ことチカさんとのツイキャスコラボ対談だったが、音声配信をされるのは初めてだったということにもかかわらず、質的にも量的にもたいへん充実した話をいただいて、私も実に啓発されるところが大きかった。リアルタイムの視聴者数やコメント数も非常に多く、おそらくはご覧になっていただいた方々にとっても楽しくて、かつ「考えるヒント」も同時に得られる時間となったのではないかと思う。 (※録画視聴パスは、9月16日以降の本文無料記事の「おまけ」にて公開の予定

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なぜ「ニー仏はこわい」のか

 ここ一ヶ月くらい、様々な豪華ゲストの方々とツイキャスコラボをやらせていただき、おそらくは視聴者の方々にも(主にはお相手の力量によって)好評をいただいているものと理解しているのだが、そのように楽しい放送をお届けしているにもかかわらず、なぜか一部の視聴者の方々は、「ニー仏はこわい」というイメージをお持ちになってしまうようなのである。  そういえば先日も、ある方からキャスの感想を送っていただいたのだが、「ニー仏さんのトーク力は凄いなあと感じているし、一度お話ししてみたいなと思い

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「ヤバい文章」の見分け方

 これまで長いことブログやらツイッターやらをやってきまして、見ず知らずの人からメッセージを受け取ったり、その結果として実際にお会いしたりする経験もそれなりに積んできたわけですが、そこから実感的に理解されてきたことは、「リアルで交渉をもつ以前に行う文章でのやりとりは、その相手が『自分にとって大丈夫な人かどうか』を判断するに当たって、ものすごく役に立つ」ということです。  今回のエントリは、そのように私が見ず知らずの方々とテクストでのやりとりを長年のあいだ行ううちに、経験則とし

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「プール」の別の使い方

 「出産とは(女性の)人権侵害ではないか」と主張するツイートを目にして、なるほど、たしかにフェミニズムの一つの極にはこういう主張が成立する余地があるだろうな、と思いつつ、ただ、その道の先はまあまあ隘路になるだろうとも考えた。  以下、この件に触発されつつ、以前から個人的に考えていたことをまとめて記しておくことにする。むやみに持って回った表現をして読みにくいエントリにしたくはないので、有料記事である。個人的には女性に対して攻撃的なスタンスではなく、むしろ擁護的な内容の文章にな

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「ありのままの私」という呪縛――「ありのまま」と関わるための「もう一つの道」について

 もう数日前のことになりますが、テレビ番組の影響などもあって、またツイッターで「ありのまま」が話題になったようです。  私自身は、「如実知見(実の如く知り見ること)」を説く仏教の勉強を長くやっていたこともあって、「ありのまま」を認識しようとすること自体には(その事態の内実について丁寧に問う必要性は感じるにせよ)決して否定的な立場ではないのですが、こうした日常会話のレベルで語られる「ありのまま」に関しては、しばしば違和感を覚えることもあります。というのも、こうした文脈における

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