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利口な人は、上手に流れてゆけばいい

 数日前に、研究に「世間を持ち込まない」という岡潔さんの態度について述べた上で、この noteもしばらくはそれでやっていきたいと書いたばかりだが、noteと同時にツイッターも再開してしまったので、そのTLを眺めたり、ときどきツイートしてしまったりすると、あっという間に心が「世間」モードになってしまい、どこでもそういうことを書きたくなってしまう。「世間」というのは、どんな形であれ他者と関わっていれば自然に己の中に入ってきてしまうものなのだから、それを「持ち込まない」でいようとするには、やはり相当に意識的な努力が必要である。

 私にとって、その「意識的な努力」の一つというのは、やはり瞑想の実践ということになるのだけど、個人的な信条としては、人生において瞑想以上に実践する価値のあることなんてほとんどないと思っているので、いまとなっては、それも努力というほどの努力ではないかもしれない。

 昨日のエントリでは「現実教」に基づいて他者と「呪い」をかけあう日本の人たちの習い性について書いたけれども、言葉を換えれば、これこそがまさに「世間」なのであって、そういうものから距離をとるための具体的な方法を知ることができたのは、本当に幸運なことだったと思う。

 ただ、最近はアメリカ発の「マインドフルネス」の流行が、上記のような元々の日本の人たちの傾向とシンクロしたせいか、瞑想でさえ「世間」や「現実」の唯一性と実在性を当然視した上で、それに合わせることを目的とする技法として、語られることが多くなったようだ。仏教の開祖であるゴータマ・ブッダは、自身の教えを「流れに逆らう」ものだと述べたけれども、そこから派生した実践の技法を使って、「上手に流れる」ことを唱導する人たちも増えてきたということである。

 もちろん、そうしたレッスンによってこそ救われる人たちというのもたくさん存在するのであろうから、そういうサークルはそういうサークルで、存分に活動していただいたらよいと思う。ただ、そうしたところでしばしば語られる、「このように世間と『上手くやる』ことがゴータマ・ブッダの教えの真意」であるとか、「瞑想の本義」であるとかいう話を耳にすると、そこはちょっと待ってほしいとも言いたくなる。さきほど紹介した「流れに逆らう」というゴータマ・ブッダの基本的なスタンスはどうなったんだということでもあるし、また「世間と上手くやる」ということであれば、現代の状況に即応した、心理療法や自己啓発セミナーのほうが一枚上手になることも多いのではないかと、私には思えるからである。

 要するに、「それなら仏教でなくてもいいんじゃない?」と私には感じられてしまうということだが、これはたぶん私にとっての仏教の「おいしいところ」が、普通にそこに巻き込まれていれば唯一であり盤石であるように見える「世間」や「現実」の、可変性や複数性を知らしめてくれるというところにあるからだろう。だから、「世間」を所与のものとして、それに合わせることを「現実」であるとするような、日本の人なら誰でも言うようなことを仏教の人に言われてしまうと、「ちょっともったいないんじゃないか」と思うのである。

 私としては、「世間」や「現実」の可変性や複数性を如実に知見することで、間接的にそうしたものとも「上手くやる」方途が開けるということこそが、仏教の実践が独自に示すヴィジョンだと思うのだけど、とはいえこれはもちろん私がそれで楽しくやっているというだけのことであるし、世の中を見て考えたことも、せいぜいこのように自分の noteに書いておけば満足だから、別の考え方で幸せになっている人たちがいるのであれば、彼らに個別に文句を言いに行きたいとは、とくに思わないのであった。


※以下の有料エリアには、先月のツイキャス放送録画の視聴パスを、投銭いただいた方への「おまけ」として記載しています。今月の記事で視聴パスを出す過去放送は、以下の四本です。

 2018年11月11日
 2018年11月16日(さむさんとの対談)
 2018年11月17日(長尾俊哉さんとの対談)
 2018年11月26日(沼田牧師との対談)

 二月分の記事の「おまけ」は、全て同じく上の四本の放送録画のパスなので、既にご購入いただいた方はご注意ください。

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利口な人は、上手に流れてゆけばいい

ニー仏

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ニー仏

だいたい「もにょっとしたところ」の言語化をやっています。それと瞑想とか。noteは一部記事は有料、全文無料記事の場合は、ツイキャスでの過去放送視聴パスを、投銭に対する「おまけ」としてお知らせする形式で運営しています。

魚川祐司

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