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「知らない」せいでキモくなること

 ツイッターでは今日も「社会性」という謎ワードが話題ですが、これに関していろいろな議論をしている人たちのことを眺めながら、当方が感じたことを少しばかり。

 まず、いわゆる「キモい」人や「非モテ」の人に「社会性」を身につけさせればましになるんじゃないかという話について、「それができないからキモい人はキモいのであって、そんなことを言うのは無意味な自己満足に過ぎない」といった意見が散見されたわけですが、私としては、そういうことをおっしゃるのは、むしろ(相対的に)コミュニケーションに難を感じずに生きてきた、要するに「できる」人の考え方なんじゃないかと思いました。

 もちろん、ひょっとしたら私のこの想像は当たっていなくて、そういうことを言われる方も、コミュニケーションに苦労なさってきた(もしくは、苦労なさっている)のかもしれません。ただ、たぶん私がかつてこの原稿に書いたような、「そもそも人間社会の『普通』とか『常識』とか称される謎の暗黙知が全く把握できなくて、ゆえに素で振る舞うとつい『キモい』ことをやらかしてしまう」タイプの「おかしな人」とは、ちょっと違うんじゃないかなあという気もします。そういうタイプの「おかしな人」は、端的に「知らない/わからない」せいで苦労していることが多いので、もしその「社会性」なるものの具体的な内容を言語化して教えてくれる人や書物が存在するなら、そういう「アドバイス」は、むしろ有り難く受け取りたいものになることが、かなり多いように思われるからです。

 最初に「謎ワード」と書きましたが、実際この「社会性」というやつは曖昧なバズワードで、いかなる行動が「社会性」があるとされるのかは文脈によって可変的ですし、そもそも「行動」ではなくて「身なり」や「容姿」のレベルで「社会性がない」という判断を他人からくだされてしまうようなこともあります。そして、その判断はしばしば暗黙のうちに(「当然」のように)行われることになるので、言語化されて教えられなくてもその曖昧な基準をなんとなく自然に(「普通」に!)把握してしまえる人はよいですが、そうではない私のような頓珍漢は、どういう理由で自分が「キモく」なったのかもわからないまま、闇から闇へと、七転八倒の人生行路を歩むことになるわけです。

 それで、そういう暗黙のルールを「知らない/わからない」せいでキモい振る舞いをやらかしてしまうタイプの人間にとっては、そのような自分にとって未知のルールを教えてくれる人やテクストは、わりと有り難い存在になることが多いんですよね。個人的には、けっこう年を食ってから、「おいおい、人間の社会はそんなルールになっているのか。だったらそう早く言ってくれよ」と思ったことは、十度や二十度ではありませんでしたし。

 もちろん、私が言っているのは「『社会性』について具体的に教えてくれるアドバイスが、実際に役に立つ人というのは確実に存在するよ」ということであって、全ての「キモい」人にそれが有効だなんて言うつもりはありません。というか、一つの方針で「全て」に対処できると考える人がいるのなら、そちらのほうが、それこそ「おかしい」ような気がします。

 私が今日のエントリで述べたのは、「そういうアドバイスは全て無意味で、ただの自己満足である」というふうに理解している人がいるのだとしたら、それについては「あんがいそうでもないよ」というだけのことです。この点、ご留意いただければと思います。


※以下の有料エリアには、過去のツイキャス放送録画(私が単独で話したもの)の視聴パスを、投銭いただいた方への「おまけ」として記載しています。今月の記事で視聴パスを出す過去放送は、以下の四本です。

 2018年5月29日
 2018年6月17日
 2018年6月23日
 2018年6月27日

 九月分の記事の「おまけ」は、全て同じく上の四本の放送録画のパスなので、既にご購入いただいた方はご注意ください。

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