見出し画像

ジェイの喝でよく分からなかった部分について日本語文と英文を比較してみた【北海道コンサドーレ札幌2023シーズン】

昨日Twitterを眺めていると、一つの記事が話題になっていた。2021年をもって引退した元イングランド代表で、北海道コンサドーレ札幌にも在籍していたジェイ・ボスロイドのコラムである。その記事にはコンサドーレの現状を憂う内容など最近のJリーグに関してジェイがいわば「物申して」いた。

ご意見番ジェイ、コンサドーレに喝!

コンサドーレに関する箇所だけ、軽い感じで内容を箇条書きすると以下のような文意である。正確な内容を知りたい方はちゃんと記事を読んでほしい。

  • コンサドーレは心配だ。同じチームで同じフォーメーションでプランは一つ。新しいことをまったくしてない。

  • 田中駿汰も荒野も本来はMFだし、金子はウイングバックではなく右のウイングで出たほうがいい。

  • 福森は守備がうまくない。セットプレーもパスも素晴らしいが、守備が仕事なのに守備がダメ。守備を磨けばヨーロッパでプレーできる。

  • コンサドーレは守備を修正しないと、残留争いしちゃう。

  • ミシャの日本サッカーへの貢献度は高いが、優勝できないのは彼のスタイルが原因。

  • ミシャは頑固。誰の意見も聞かない。だからコンサドーレは成功が難しい。

ジェイの発言をどれだけ真に受け止めていいかはまだ僕には判別がつかない。ここは僕が大好きなプチ鹿島さんのイズムに従って「半信半疑」ぐらいのスタンスがちょうどいい気がする。しかし傾聴に値することは間違いない。

「自分のパフォーマンスを見ることはない」とは?

コラムを読んでいると、福森に関してジェイが次のように述べていた。

私がいた頃、彼は1対1の練習を一切しなかった。ミシャ(訳注:ペトロヴィッチ監督の愛称)が個人的に指摘しても、ディフェンダーとして自分のパフォーマンスを見ることはなかった。

【ジェイ・ボスロイド独占コラム】古巣・札幌の現状を憂う「とても心配している」

みなさんは何を言っているか分かっただろうか?僕は正直よく分からなかった。

まず一文目の「私がいた頃、彼は1対1の練習を一切しなかった。」は、文意としては分かる。しかし「1対1の練習を一切しなかった」という言葉にはいくつか解釈のしようがある。

  • 全体練習で行っている1対1の練習に一切参加しなかった

  • 全体練習で行っている1対1の練習をちゃんと取り組まなかった

  • 1対1の練習を自主的に行わなかった(いわゆる自主練)

このように解釈の仕方によっては福森への印象が大きく変わると感じる。なお他にこういう解釈をしたという方がいれば、ぜひ教えていただきたい。

そして2文目の「ミシャが個人的に指摘しても、ディフェンダーとして自分のパフォーマンスを見ることはなかった。」である。こっちはそもそも文意から分からない。

特に「ディフェンダーとして自分のパフォーマンスを見ることはなかった」は、なんのこっちゃという感じである。1分目のつながりもよく分からない。「ミシャが個人的に指摘しても」というのは、「福森が1対1の練習をしないことをミシャがしても」という意味だろうか。

Twitterを眺めてみると「ミシャが個人的に指摘しても福森は言うことを聞かなかった」的なニュアンスで解釈している方が数人見られた。それはおおむね合っているのかもしれないが、このよく分からない文でそういうニュアンスだと断定する自信は僕にはない。

英文でコラムを読んでみよう

そう思っていたら、ジェイが記事の英文バージョンをTwitterに載せてくれた。おそらく記事はこの英文を翻訳したものなのだろう。ジェイよ、本当にありがとう。

英文から自分なりに文意をとっていけば、分からなかった箇所が分かるようになるのかもしれない。

余談だが、僕は英語と数学と理科が苦手だった。あまりに苦手すぎたのだが国語と社会が異常に得意だったため、苦手部分を覆い隠す以上のカバーができ受験を生き延びてきた。たまたま僕と接点があり出自を知っている方は「え?こんな英文もちゃんと読めないの?」と思われるかもしれないが、どうか気にしないでほしい。

さて、僕が意味が分からなかった該当箇所の英文を見てみよう。

When I was there he never practised his one-on-one defending, he never looked at his performances positionally, even though Mischa singled him out a lot.

Jay Bothroyd column 01032023

まず「When I was there he never practised his one-on-one defending,」の部分を考えていく。

practise~はpractice~のイギリス英語表現である。「~練習する」という意味のイメージがあるが、実は「~を実行する」という意味もある。

「When I was there」は「私(ジェイ自身がそこ(コンサドーレ)にいたとき」、「he never practised his one-on-one defending」は「彼(福森)は決して1対1の守備を実行しなかった」と訳せるだろう。

つまり「自分がコンサに在籍したとき、福森は決して1対1の守備をやらなかった。」と解釈ができる。

続いて「he never looked at his performances positionally, even though Mischa singled him out a lot.」の部分を見ていく。

even though~は「~だが」、single~outは「~を選び出す、抜擢する」という意味なので、「even though Mischa singled him out a lot」は「ミシャは彼(福森)をよく抜擢したが」と解釈できるのではないだろうか。ここでいう「抜擢」を僕は「スタメンに起用する」という意味だと考えた。

次に「he never looked at his performances positionally」を読み解いていく。

look at~は「~を見る、考える、~に目を向ける」、positionallyは「位置的に」という意味である。ただこれだとpositionallyが分かりにくいため、英和辞典を参照すると「in terms of position」となっている。よって「ポジション面では」という意味が適切なのではないだろうか。

そこで僕は「彼(福森)は絶対に彼(福森)のポジション面のパフォーマンスに目を向けようとしなかった」と訳してみた。ここでの「ポジション面」とは福森が起用されているポジション、つまり左CBのことである。

つまり「ミシャは福森をよく抜擢したが、彼は絶対に彼のポジション面のパフォーマンスに目を向けようとしなかった」と解釈ができる。

改めて該当部分を繋いで僕なりに訳すと、以下のようになった。

When I was there he never practised his one-on-one defending, he never looked at his performances positionally, even though Mischa singled him out a lot.

自分がコンサに在籍したとき、福森は決して1対1の守備をしなかった。
ミシャは福森をよく(スタメンに)抜擢したが、福森は(自身が起用されている)ポジション面の(自身の)パフォーマンスについて目を向けようと絶対にしなかった。

Jay Bothroyd column 01032023

より細かく解釈すると、次の通りである。

福森は1対1の練習をしないのではなく「試合で1対1の守備をしっかりしなかった」。つまりジェイは「福森が守備がちゃんとできない」ことを言いたかったのだ。

そしてミシャは福森を左CBとしてよく起用していた。左CBとはDFであり、ジェイにとってDFは守備が本職の選手である。にも関わらず、福森は「DFに必要とされる守備面の自分のパフォーマンスにはあまり気をつかわなかった」ということではないだろうか。

当初日本語の記事を読んだときより、印象が変わったのではないだろうか。要するにジェイは「福森がDFであるにもかかわらず守備をおろそかにしすぎだ」と繰り返し言いたかったのである。

この記事が参加している募集

サッカーを語ろう