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「コンサの成熟」に関するひとつの仮説【2023年J1第2節 北海道コンサドーレ札幌vsヴィッセル神戸】

2023/2/25に行われた北海道コンサドーレ札幌vsヴィッセル神戸は、1-3で神戸が勝利した。

あらかじめ断っておくがこの文章は、いわゆる「マッチレビュー」ではない。しいて言うなら感想文、イメージとしては試合を見た上で書いた「日記」のようなものだ。

以前書いた日記とやらはこちら。

吉田ああああああああああああああ!!!

突然だが昔のウイイレのCMの話をしたい。

主人公は謎の外国人(?)「吉田」とウイイレ対決をしてボコボコにされ敗れる。その後「吉田を倒せ!」の文字とともに主人公が「吉田ああああああああああああああ!!!」と叫ぶ。そういうCMである。

何が言いたいかというと、札幌は「吉田」に非常に弱い印象が僕にはあるのだ。「吉田」とは吉田姓の監督である。

札幌が2017年にJ1復帰してからの神戸との対戦成績は3勝0分10敗だ。今回の試合を含めて目下7連敗中である。

だが、それでも神戸への苦手意識よりも僕は「吉田」への苦手意識の方が強かった。

2017年以降、札幌が対戦した吉田姓の監督は二人いる。吉田孝行と吉田達磨だ。

偶然にも両者ともに割と手腕が評価されてない監督のイメージがある。達磨監督は2022年にJ2のヴァンフォーレ甲府を天皇杯優勝に導き名を挙げたが、本来の絶対目標であるJ1昇格とは程遠い順位でリーグ戦を終え退任するという、どう評価していいか分からない結果を残している。

調べてみると、孝行監督との対戦成績は2勝0分4敗、達磨監督との対戦成績は0勝1分3敗で、吉田姓との通算成績は2勝1分7敗であった。

確かに苦手としている感じはするが、2勝をしていることに拍子抜けしてしまった。人の印象とはあてにならないものである。

今後両者に加えて、現在ブラウブリッツ秋田を率いている吉田謙監督とも対戦する機会がないことを願いたい。

1トップか2トップか

この試合札幌は荒野を1トップ、青木と浅野を2シャドーに起用した。

本職がボランチで運動量のある荒野を最前線に起用ということでハイプレスの奇襲をねらったと思いきや、そういうわけでもなく、むしろ突撃ハイプレスで奇襲をかけてきたのは神戸の方だった。結果まんまとはめられ、早々に失点することになる。

荒野の1トップ起用は、プレッシングよりもDFラインの裏を狙っていくこととセットだったようだ。

神戸は長いボールを前線に入れる戦いをしてくると予想していた。その中で自分たちがセカンドボールを拾えたならば、相手の背後にある広いスペースを使うことができる。それもあってスピードのある選手を前線に先発させた。

試合後のペトロヴィッチ監督コメント

とはいえ実際に裏を狙ったのは荒野ではなく青木と浅野だった。荒野は神戸のボランチ(山口か齊藤)の見張りをすることが多く、そもそもボールを奪った時点で最前線におらず、青木と浅野の2トップ状態であることがほとんどだった。

後半はゴンヒが入り、前半とは違って最前線で1トップが起点になることが増えた。相手を見てトップの人選を変えたともいえるが、ミシャはいい出来のチームは相手に関わらずいじらない傾向にある。そう考えると、まだ1トップの最適解は見つかってないのかもしれない。

なぜコンサのサッカーは成熟しないのか?

札幌はミシャ体制になって今季で6年目である。しかし開幕して数試合を眺めると、毎年のように監督就任1~2年目の発展途上のチームに見えてしまう。チームが毎年ガラガラポンされ、リセットしている印象を受けるのだ。

選手個人の能力の上積みは見て取れる。例えば、岡村は昨季当初よりも落ち着いてボールを持てるし、守備でも相手にしっかり対応できるようになって自信をつけている。しかし、そういった個々の上積みがチーム総体としての強さにうまく反映されていない。

実は経営側もそういったチームを許容している節がある。三上GMはスポーツ報知の連載で次のように書いている。

ただ、札幌は例年、尻上がりに成熟していくチームで、今季もそのスタンスは不変。

戻ってくる声出し応援が楽しみ…三上大勝代表取締役GMのコンサ便り

ここで三上さんがいう「成熟」がどの程度の基準かはわからないが、少なくともシーズン序盤はチームとしての完成度が低くても許容している雰囲気がある。

今思うに我々は勘違いしていたのかもしれない。「ミシャのサッカー」というのが明確な型があると。そりゃ「ミシャ式」と呼ばれていたからには型があると思うだろう。

ただ実際は、そのとき所属している選手に応じてパッチワークのように作られるのではないだろうか。特に2~3人中軸となる選手を決め、彼らに合わせたサッカーが「コンサのサッカー」になる。

そう考えると毎年開幕後にチームがリセットされたようになるのは納得である。昨季は中軸であったはずのチャナティップが退団したので、新たなサッカーを構築する必要があった。その中心を担ったのはおそらく興梠だろう。

そして今季は、昨季の中軸だった興梠、彼がいないときにその代わりを果たしたシャビエルがいない。つまりまたパッチワークのように今いる選手を当てはめる作業の途中なのだ。

なんだかんだ言われながらもミシャの元で札幌がJ1に残れているのは、超攻撃的サッカーとやらを貫いているからではない。ミシャが都度与えられた戦力の中で中軸になりそうな選手を見抜き、パッチワークのようにシステムにはめているからではないだろうか。

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