HIT! モアイ像と死体写真の芸術性

No.024
表紙写真・著作者 Jesse Clockwork


モアイ像とはチリ領イースター島にある、人面を模した石像彫刻です。島にはこのような像が887体あります。モアイの目的、用途に関しては「祭祀目的」という見解や、台座から人骨が多数発見されたことで「墓碑であった」という説などがあります。しかし未だに、誰が何の目的で作ったのか、定説はありません。


2012年、カルフォルニア大学の調査チームがモアイ像の地下を掘り起こしました。モアイ像には、実は胴体が存在したことが分かりました。


これはモアイの「背中」です。タトゥーのような模様、ペトログリフ(文字や意匠など)が刻まれており、お尻はフンドシのようなものを締めていました。地中深くに埋められた部分に、人間の美意識や知性を感じます。

芸術の本質はこのような「隠す」という行為にあるのではないでしょうか?例えば日本の着物には「八掛(はっかけ)」という裾の裏につける布があります。動作をした時に少しだけチラリと見え隠れする部分です。あえて見せない、秘めたところが着物の「粋」であり「お洒落」なのです。アート作品に於いても、最も重要とされる本質部分をあえておおっぴらには出さない、「隠す」ことが「お洒落」であり、高級な芸術の愉しみであると理解しています。


これはメキシコシティの「テピト」という犯罪が多発している地域で、釣崎清隆さんが2016年に撮影した死体写真です。今年5月、高円寺にあるギャラリー「ナオナカムラ」で私が企画し展示しました。

この写真、状況の説明などは何もなく、一見すると死体が写っていることも分かりません。しかしよく観ると運転席で少年がうなだれており、耳や首筋の辺りからは血液のようなものが滴り落ちています。後部座席のガラスが割れていることから、銃撃されたことが分かってきます。

作品として抽象的な表現ですが、周辺の情報から現場の実態が少しづつ浮かび上がってくる見せ方をしています。これは紛れもなく「死体写真」なのですが、死という過激さを「隠す」ことで芸術性が高まっていると思います。

つまりイースター島のモアイ像も、日本の着物も、メキシコの死体写真も、色気のある重要な部分(娯楽性、快楽性)をあえて「抑える」「隠す」ことで、私たちを迷宮化した深い森へと誘う芸術作品にさせるのです。

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笹山直規

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