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HIT! ジェットコースターは究極の体験型アート!

No.010 
表紙写真・著作者 Jesse Clockwork



日本初のコースター「ウェーブコースター」(宝塚新温泉・昭和27年)


なぜ人はジェットコースターに乗りたがるのか?

精神分析学者ジークムント・フロイトは1920年、『快楽原則の彼岸』で「死の欲動」という語を用いました。それは人間の「死にたい」という気持ちに駆られる衝動を説明するための論文でした。「快楽が生」という考え方から「死の欲動との闘いが生」であると、考え方をシフトさせた時期だったのです。

フロイトによれば、「死の欲動」は個体発生上、最も古い欲動(衝動)なのだそうです。それは退行の究極点であり、生命発生以前の原初への回帰を目的とする、愛と苦しみを超えた巨大な破壊エネルギー。

こんなやっかいなものを、人間は誰しも抱えて生きているというわけなのだから大変ですよね。「死の欲動」の強い人は、たとえばSM(サディズム、マゾヒズム)のセカイへと身を投じたりします。肉体の筋肉活動を通じて、「死の欲動」が発散されることもあるようなのです。

みなさん想い出してみてください、遊園地のジェットコースターに関して、比較的怖がるのは男性の方で、その手を引いて一緒に乗ろうとするのは女性であったりしませんでしたか?ここにひとつの人間の本質が浮かび上がってきます。

1960年代にアメリカで社会問題になった「リストカット」などの自傷行為は、男性よりも女性の方が圧倒的に経験者数が多かったです。確かに、男はアルコールや薬物には手を出しますが、直接的な肉体に対する自己破壊、自己処罰的な傾向は、女性ほどではないように思います。そのような観点から、ジェットコースターは女性の本質と相性が良いのだろうかなと推測します。


さてさて、本項ではそんなジェットコースターの魅力に迫ってみたいと思います。実際に僕が体験したモノの中から厳選してご紹介致します。

まず皆さんにおすすめしたいのが、、、


福岡県のスペースワールドにある「タイタン(現在はタイタンMAX)」。

ジェットコースターに乗ったことのある人ならば分ると思うのですが、普通は列車が最上部までいくと、そこから下りの傾斜までは平らな状態が少しあるじゃないですか?それがないのです!最上部から間をあけずに、一気に強烈なスピードで下まで落ちていきます。それがしょっぱなから2回連続で続くという暴力的な構造をしており、スペースワールドだけに、そのまま身体が宇宙空間まで放り出されるのではないか!?という恐怖体験を味わいました。


さて続いてご紹介する「死の遊戯装置」は、
三重県のナガシマスパーランドにある「ホワイトサイクロン」。

世界最大級の木製ジェットコースターで、その姿は美しい純白をしており、まるで氷のお城のように気品があります。しかしコースの構造は非常に恐ろしいもので、渦のようにループ状に旋回するコースが北側と南側に2つあり、この間をもの凄いスピードで何度も行き来します。まるで2つの台風にキャッチボールされているような独特の酩酊感を味わうことができます。木製コースターなので振動やきしみ音が半端無く、ビスが外れそうな「洒落にならない」感触が味わえるのも魅力(最も怖いのは木が乾く冬の時期だそうです…)


続いては、東京ドームシティアトラクションズにあるジェットコースター、「サンダードルフィン」です。

このジェットコースターは、80.5mの高さから74度の角度で急降下した後、一気に前方の建物の屋上まで突っ込んでいったかと思えば、今度は壁穴を突き抜けて、そのまま大観覧車の中心を潜り抜けていきます。まるでイルカの曲芸のように縦横無尽に園内を駆け巡るコースが最大の特徴です。他のジェットコースターと比較すると振動が少なく滑らか。是非この1分30杪の「死の遊泳」を皆様にも楽しんで頂きたいと思います。


最後にご紹介するのは、最狂キワモノのデッドコースター
山梨県の富士急ハイランドにある「ええじゃないか」です。

ジェットコースターの種別としては「4次元」というジャンルに入ります。

この4次元ジェットコースターというのは、日本では初、世界では2台目なのだそうです。従来のコースターのループやひねりに加えて、なんと座席自体が前後方向に回転する!急降下したながら座席がグルグルとまわるので、今自分が一体どういう状態になっているのか?まったく把握することができません。

もはやこれは言語化不可能な未知の体験でありました。映画「ゼロ・グラビティ」で宇宙空間に放り出された女性の視点が観ていて酔いそうだったけれども、あれを実際に凄いスピードと衝撃で体験しているのだと想像して頂ければ伝わるでしょうか?これを作った人もそれに乗る人も、本当にクレイジーだと思います。

ジェットコースター、それは人間が「死の欲動」から「生」を勝ち取るために試行錯誤して作り出された、まさに究極の体験型アートです!

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