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HIT! コップのフチ子さん

No.011 
表紙写真・著作者 Jesse Clockwork



<画像提供・アーティスト奥田真希>

大学で哲学を学んでいる知人がツイッターで異様に面白がっていたので、それなに?と尋ねると「コップのフチ子さんという、ガチャガチャで買えるフィギュアですよ」と教えてもらった。フチ子さんというOL風の女性キャラクターを、コップの縁などに添えて鑑賞を楽しむことのできるフィギュアだ。

試しに僕も購入してみる。

300円で買える手頃なフィギュアで、SNSを中心に口コミで広がり大ヒットした。現在では岡本太郎の「太陽の塔」バージョンなど、様々なバリエーションが出ている。

このフィギュア、机上のコップなどモノとの関係性を作ることで、自分たちの生活環境そのものをジオラマ化してしまう奇妙な力を持っている。小さな部屋がまるで巨大な都市のように広大に感じて、己自身もフチ子さんの世界の背景の一つとして取り込まれてしまったかのような錯覚を起こすのだ。

現代アートの彫刻といえば、やたらと巨大で高額なモノばかり思いつくが、手のひらに乗るサイズのフチ子さんは誰でも安価で買えて、コップに引っ掛けるだけで周辺環境を一変させてしまう程の力(具象彫刻からインスタレーションまでの大きな流れを汲んでいる)があるというのは、結構凄いのではないだろうか。モティーフである女性自体の素性は設定されておらず、同じ顔をしたフチ子さんが無数に存在する、その匿名性もまた面白い。

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