HIT! 霊界からのお中元

No.019
表紙写真・著作者 Jesse Clockwork


ツイッターを初めて、かれこれ5年目になる。気軽に色んな人間と繋がることができるし、写真や動画機能も搭載しているので、あらゆる状況下においてリアルタイムに情報を発信することができる。しかし時にはその利便性が仇となり、冗談半分に投稿した内容がネット上に拡散されて炎上を起こすなど、昨今は大きな社会問題にまで発展している。

私は自他ともに認める「ツイッター中毒者」であるが、今までに計り知れないほどの恩恵を受けている。私以上にツイッターを効果的に使っている美術作家はいないのではないだろうか?と思うほどだ。

ツイッターを始めた当初、私は東京での生活がうまくいかず、困窮していた。
画廊には在籍していたが、リーマン・ショックの煽りで絵がさっぱり売れなくなり、夜勤アルバイトをしながらアトリエの家賃を支払い、ギリギリ食いつないでいた。頑張っても頑張っても日々の暮らしは良くならず、精神的にも体力的にも疲弊しきっており、自殺を考えたこともあった。

そんな折、ある若手アーティストのツイッターでの呟きに私は激怒した。某百貨店での展示に関して、ここではアートの挑戦はしませんということをいっていたのだ。芸術家たるもの、いつ何時どのような場合であろうとも、チャレンジ精神を無くしてしまっては終わりではないのか?作品が売れ始めたからといって、あからさまに開き直って、商業主義に傾いているようにみえた。なぜそんな事を呟いてしまうのか?理解できずに私はツイッターで彼に噛み付いた。

これはヒッポホップの世界でいうと「DIS(ディス)」といって、色んなひとが見ている状況で、あえてプロレス的に喧嘩を売ってみる行為だ。彼も僕のディスに反応し「笹山さん、展示会場で待っていますよ」というような展開になった。ツイッターでのやり取りを見ていた人達は「さ〜これから喧嘩が始まるぞ〜!」というテンションになって、当日は色んなアーティストが会場にやってきた。

プロレスラーならば試合でカタを付けるのだろうけども、私たちは美術作家であり乱暴なことは好ましくない。殴り合いのような激しいことには当然ならなかった。展覧会後に居酒屋で彼を囲んで、この件について色々と議論した。アートを普及させ利益を上げることは難しく、自分たちがどの場面でどのように力を使っていくべきか、様々な意見を交わした。

次の日、彼は車で僕のアトリエにやってきて、ケースに入ったビールや高価な画材など、色んなモノを贈ってくれた。何故ディスった相手からこんなに感謝されるのか分からないが、率直に意見を述べたことが相手には心地よかったのかもしれない。

こういったことから、私はとにかく積極的にツイッターで人と絡んでいこうと思い実践し続けた。時には大御所のアーティストをディスってしまい大目玉を食らったこともある。本人からというよりは、ファンの方々から悪質な嫌がらせを受ける羽目になった、まぁ自業自得だ。ツイッターでこんなことを続けていたせいで、いつしか私は完全にヒールキャラとなり、笹山に展示を観られたからめちゃくちゃ酷評されるかも!という具合に、周囲から警戒されるようになった。

嫌われ者になって損ではないか?

いやそうともいえない、私の心意気を買ってもらい、会ってみたいと申し出てくれる人がたくさん現れたのだ。個展など開催すると、ツイッターで私を知って遥々遠方からきてくれる方も増えて、作品も徐々にではあるが売れ出した。

それからというもの、生活費に困ったと呟くと野菜やお米が届けられるようになった。551の肉まんが食いたいと呟くと、色んなところから食べきれないくらい大量に肉まんが届けられた。東京で展覧会をやると呟くと宿を貸してくれる人が現れたり、海外で展示をするが渡航費がないと呟くと旅費やホテル代まで出してくれる人もいた。皆ツイッターで知り合った、元々は赤の他人だ。

今年はこんなことがあった。イラストやドローイングをネット販売していたことや、日頃から不満を呟き続けていたことが災いして、5年間所属していた東京の画廊から遂に契約終了を告げられた。もう画家として終わりだ、、、と失意のどん底だったのだが、その私のツイートを読んだ他のアートスペースから直ぐに連絡が入り、なんと12月に個展が決定したのだ。

私の呟きが神の国にまで届いているのだろうか?

危機的な状況に陥ったときほど、正直に自分の気持ちを呟けば、手を差し伸べてくれる人が現れる。頑張って生きていれば、どこからかチャンスは訪れる。人生とはそういうものなのかもしれない。

先日私はこう呟いた「去年から警備員の仕事を始めたが、派遣なので毎日色んな現場へ行かなくてはならない。原付バイクがあれば便利だけど貯金が底をついた。カードローンで購入するしかない。。。」
翌日私宛のメッセージが届いた。

「宜しければ私がお好きなバイクを買って差し上げますよ、価格と口座を教えて下さい。訳あって名乗れませんので、ユウレイ(幽霊)としておきます」


最初はイタズラではないかと思った。
しかし相手に口座番号を教えるくらいのことは、取り立てて問題ない。過去に数々のミラクルをツイッターで起こしてきた私だ、バイクが欲しいと呟いた翌日にバイクを買ってもらう、なんて奇跡が起きることもきっとある筈だろう。

そして連休明けの昨日、ATMで通帳記入して仰天した。

本当にユウレイという名義で原付バイクの代金20万円が振り込まれていたのだ(5日前に2.000円を引き出して、残高が778円しか残っていない状態だったのに)

貧乏な呟きが、高価なバイクへと姿を変えた。

ツイッターの呟きは本当に神へと通じているのではないだろうか?
人を傷つけるような悪いことを呟けば罰が下されるが、本当に困っている時に呟くと願いが通じることもある。私はどれだけツイッターに救われたか分からないし、今後もツイッターを通じて神と交信していくことができればと思っている。数年後にはツイッター教を設立していたりして、、、(おしまい)




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笹山直規

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