HIT! <芸術とはなにか?>NYが舞台の2つの映画

No.013
表紙写真・著作者 Jesse Clockwork


昔の「映画」には、芸術と娯楽が同居していました。

それがいつしか、娯楽映画、芸術映画、と分離するようになります。
夏はヒット狙いの娯楽映画、秋は賞狙いの芸術映画、というのがハリウッドのスタイルであると聞いたことがあります。そうやって時期に合わせて作り分けているのですね。


さて本項では、
『セックス・アンド・ザ・シティ』と『フローズン・リバー』
という2つの映画を比較してみましょう。

どちらも2008年に公開された、
ニューヨーク州を舞台としたアメリカ映画です。


『セックス・アンド・ザ・シティ』で描かれる世界というのは、大衆が求めるイメージで作られたものである思います。NYに住む人間の多くが、実際には貧乏でさもしい生活を送っているそうです。しかし、たとえばハリウッドのおしゃれな恋愛映画などを観て気づきませんでしょうか?そこで描かれるアメリカ人の生活というのは、庭付きの高級住宅や高層マンションに住んでいたり、高級車に乗ってショッピングを楽しんだり、とにかくゴージャスで華やかな世界ですよね。汚らしい現実などは映画の中では一切「存在しないモノ」として描かれています。エンターテインメントというのは、真実の外部で作られるモノ・ゴト、が基本にあるのではないでしょうか。


一方、同じ時期に公開された『フローズン・リバー』は、低予算で作られたアメリカのインディーズ映画です。ニューヨーク州の最北端で、子供達と貧しいトレーラー暮らしをしている、生活資金に困った女性の物語。

彼女はある日、思いがけない事から不法移民を車に乗せ、警察の目を欺きながら、凍った川を渡り密入国を手助けする仕事をすることになります。お金のためとはいえ、非常に危険な仕事でした。もうこれで最後にしよう、そう決意した日、最悪な事故が起こってしまいます、、、

これは実話を元にした、えげつない内容の映画です。
このような地味で凄惨な映画は、興行的にはヒットしません。
当初、日本では配給会社がつかず、公開を見合わせていたそうです。

人間は誰しもが、自分の見たくない現実は直視せず、ありもしない幻想を生きているように思います。「フローズン・リバー」のように社会の深い闇の真相に迫ると、多くの人にとって「不快で観たく無い世界」が立ち現れてきます。実際にアメリカで起こっている厳しい現実も、娯楽を求める人達にとっては「存在しないモノ」であり、『セックス・アンド・ザ・シティ』のような、イメージで描かれた虚構世界にこそ現実を見ているのではないでしょうか。

そう考えると芸術というのは、多くの人間の拒絶の中にひっそりと存在する、ある隠された真理のようなものではないかと思えてきます。


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笹山直規

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