HIT! 杉田陽平(じゃぽにか)が語る、現代ミニ四駆の凄さとは?

No.023
表紙写真・著作者 Jesse Clockwork

杉田陽平くんは、主に東京で活動してる、関西出身の画家です。彼と僕は過去には喧嘩もしたけれど(※一方的に僕から挑発しただけですが)今では親しい間柄で、大阪で展覧会を開催した時などは何度も足を運んでくれました。それで、杉田くんは決まって、大きくて重たそうなボックスを持っていて、なにそれ?と聞くとミニ四駆が入っているわけです。関西でレースの試合があるから参加してきて、その帰りなのだと。

ある時ふと、僕ら美術家は、美術には詳しいけれど、美術以外のモノを知らな過ぎる、という問題があることに気付きました。このアートコラムのテーマでもあるのですが、「美術外美術」というモノに迫ってみたいという想いがあります。それは、芸術、美術、アートという制度や価値観にはまだ回収されていない、得体のしれないヤバイくて素晴らしいモノ・コト をもっと知りたいという欲求です。

杉田くんが毎回ラーメンの出前のようにボックスにミニ四駆を入れて大阪にくる姿を見る度、これは何なんだろうなと感じており、一度ガッツリ取材してみようと思いました。この取材は1年半ほど前に、彼のアトリエまで直接出向いて行ったものです。発表までに少し時間が掛かってしまったこと(タイミングがなかなか無くて)をお詫びします。


杉田陽平とミニ四駆との出会い

(杉田)僕は、『爆走兄弟レッツアンドゴー!!』が流行っていた二次ブーム世代からの復帰組になると思います。当時の地元のレースでは、大人が作った本気マシンが優勝を独占している状態で、金銭的な面、技術的な面、時間に制約がある中でどう太刀打ちするか、そればかり考えていました。

理科のテストの裏とかにアイデアと設計図を書いては、それを試しての繰り返し。そうこうしていると、レースの試合方式やレイアウトによっては、マシンの速さより試合勘の方が大事な時もあって、子供でも勝ったりするのですよね。

勝った日は暫くヒーローになれる。マシンはレースのコースで走り出した瞬間、年齢や、誰が作ったとか、練習で速かったとか、関係がないんです。アイデア、工夫次第で誰でも等しくチャンスがある。面白いですよ。大きなコースが置いてあるおもちゃ屋で練習していた時、学校の好きな子がたまたま来て見られたりすると恥ずかしかったりしたなぁ。



現代ミニ四駆にハマった理由、何が凄いか?

東京に住むようになって何気無く「ミニ四駆」とググッてみたら、僕の小さい頃にやっていたマシンとは、速さも見た目もまるで違うのに兎に角圧倒されました。具体的に言うと、ネジを使わずモーターの軸をネジ替わりにする事や、バンパーを最初から斬り落として新たにFRPで再構成する井桁改造、レギュレーションギリギリまで直径を大きくした超大径など、そこまでやるか!って突っ込みたくなる改造方法なのですが、レギュレーションの中で如何に楽しめるか、それもレーサーのスキルであり、楽しみ方なんですよね。

僕が小学生だった頃は、今より更にブームだったので抽選に洩れ続け、結局タミヤ公認の公式大会にはエントリーさえ出来ぬまま終わってしまいました。

今は年齢制限も無くなり、始発で会場に向かえばエントリーが出来るようになりました。もう良い歳したオヤジになってしまったかつての子供達が、当時と変わらず瞳を輝かせて誰よりも速くゴールを目指します。子供の頃ミニ四駆を弄っていると勉強をしなさいと叱られたり、お小遣いで買えないパーツがあったりと不自由であったのが、色々な意味で大人である自由を楽しんでいるんですよね。子供=自由、大人=不自由とされている世間とは真逆なのが面白いですよね。



アーティストがミニ四駆から学べる事とは?

僕は、アートに携わる仕事をしている訳ですが、ミニ四駆から学べる事は大変多いです。先ず、環境のせいにしたりしない。イコールコンディション。レギュレーション。出逢いを大事にする。真剣勝負を楽しむ。現実と寄り添う。あくまでもプラモデル。金銭的、社会的ステータスは皆無。走り切らないと意味はない。創意工夫。知識があったとしてもそれを具現化する造形力と、何より弛まぬ情熱、最後には本人が想像していなかった程の結果がついてきたりするのですよね。

これって僕達の日々にも同じ事が言えると思うんです。アーティストなら同業者が自分より売れてしまったり有名になったりすると足の引っ張り合いをしてしまったりするのですが、ミニ四駆をしていると速くて安定しているマシンを作る人は確実に血の滲むよう努力をしてる事を知っているので、他人の評価は素直に受け入れられたりする訳です



なぜ、ミニ四駆にそこまで真剣なのか?

友人などにミニ四駆が趣味だというと、オタク、根暗、ダサい。といったイメージらしいのですが、ワールドチャンピオンなんてDJだし、ジャパンカップ・ファイナル優勝者は女の子だし、戦隊モノの有名俳優さんや、有名芸人さん、歯医者さん、ドワンゴの方や有名漫画家さん、メイド喫茶の社長さん、ファッションブランドの社長さん、有名レーベルの社長さん、建築家さん、皆さんあり得ない位にイケてませんか?

何でミニ四駆なんかに真剣なの?て突っ込みたくなる。
もしかすると僕もそのひとりかもしれませんが。


現代ミニ四駆について

2000年初頭に両軸シャーシが発売されて以来、改造方は更に多様化したように思います。何とシャーシにバネを仕込んだサスペンション・システムのマシンや、シャーシをグニャグニャにして地面にへばりついて走るマシン、電池の接点を緩めてバランスを崩した時に制御するマシン、ボディ前後を敢えて逆にして走る人。最近見た中で熱いなぁと感じたマシンは、バンパーを切って前後タイヤの間に替わりのローラーを作って後ろのテールで制御しているホイールシステムのマシン。大ジャンプの後の着地の綺麗さ、初めてみた時はビックリしたのを覚えています。

挙げたらキリがないですが、それぞれに全く違うスタイルで優勝しているのだから、まだまだ新しい必勝改造法はあるのかもしれません。

レースの様子を見ていると、普通ならあり得ないヒエラルキーの人同士がレースにおいては真逆になっている事もよくあります。皆さんもこの真剣勝負を一度楽しんでみては如何でしょう?(2014年12月、杉田陽平氏の自宅兼アトリエより)



<!!!告知!!!>

杉田陽平くんも所属しているアーティスト集団「じゃぽにか」が東京の TAV GALLERY で個展を開催中です。この機会に是非足をお運び下さい。

「じゃぽにか国真理教 ~TAVサティアン 僕たちを追い出さないで~」

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

1

笹山直規

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。