5月12日 黒いパン クリームチーズとみかんの缶詰のせ

 私は個人的に黒いパンが好きだ。噛みしめたくなるパンだと思う。ほのかな甘み、穀物の香りを感じる少し硬いパン。「アルプスの少女ハイジ」では白いパンがとても魅力的に描かれているが、むしろ私は黒いパンに心惹かれる。あの手作りの、ヤギの乳で作られたクセのあるチーズと、黒いパンの相性はさぞかし美味しいことだろう。幼い時(現在もだが)どれほどあのパンとチーズに憧れたか。

 なぜこの話をするかというと、まさに今日そのパンを食べたからだ。これは昨日から食べようと画策していて、多少わくわくした気持ちでお昼を迎えた。画策していた内容は「黒いパンを焼いて、その上にクリームチーズとみかんの缶詰をのせて食べてやろう」というもの。みかんの缶詰を昨日に開けて、それが余っていたし、クリームチーズはこのパンに合う(別日に検証済)から、組み合わせて食べてみようと思い立ったのだ。クリームチーズとフルーツの組み合わせは好きなのだが、合わせるなら私はベリー系が好きという傾向にある。スイーツに入っている柑橘系には苦手意識がある方なので、この組み合わせは自分にとって挑戦だった。最近では柑橘系がスイーツに入っていたとしても食べるのだが、香りがすると「あ、オレンジがいる」とか「ああ、レモンだ」と心の中で必ず呟いてしまう。

 お昼といっても二時になっていたが、早速その組み合わせを試そうと浮ついた気持ちで冷蔵庫の前に立つ。缶詰を保存していたお皿があることと、クリームチーズの残りを確認して二つとも取り出した。クリームチーズは小皿にあらかじめたっぷり取り分けておき、みかんの缶詰の方はラップを途中くらいまで剥がすに止めておいた(もしも組み合わせが合わなかった時の為にまた保存しておくためです)。黒いパンはスライスされたもので、残り四枚ほど残っていた。億劫なので二枚ずつ重ねてオーブントースターへと入れてしまう。これを書いていると自分の雑さを暴いていくことになるので、どうなのだろうと思うのだが、日常を素直に書こうと決めた今、行儀の悪さには目を瞑っていただきたい。焼き上がるのを待ちながら、小さめのフォークを用意してオレンジを一つだけ味見する。シロップと生のみかんとは違う酸味。生のみかんと違う風味を何かに例えて説明したいのだが、良い例えが浮かばなかった。伝わる人には伝わると思う。

 オーブントースターのチーンという音がしたので、手で少しパンの表面を触り焼き加減を確認した。少し焼き目がついていて、いい感じ。行儀は悪いが、台所に立ってそのまま食べた。まずは何もつけずにそのまま。パンには色々な穀物(種類まではわからない)が練り込まれていて、噛むと甘みがあり美味しい。そのままでも十分好きな味。焼き加減もさくっと、少しもっちりとした食感。完璧。さて次はクリームチーズをつけて食べてみる。フォークでクリームチーズを切るように掬い取って、そのままパンに塗り広げた。塗った部分を噛みしめると、クリームチーズの酸味とパンの風味が本当に美味しかった。「うま」と声が漏れるくらいに。シンプルな組み合わせって一番満たされる気がするのは、私だけだろうか。クリームチーズだけ食べても美味しかった。基本乳製品は全般的に好き。

 さあ次はずっと試したかった、みかんの缶詰をのせる。クリームチーズを先程の要領で塗り広げた上に、ちょこんと一つのせてみた。まずくはないだろうが、食べるのは少しだけ緊張する。いざ食べてみると、目を見開いてしまった(少しオーバーかもしれないが多分見開いていたのだと思う)。美味しい。とても美味しかった。フレッシュなみかんの果肉感と酸味、クリームチーズがそれを優しく受け止めていて、パンも普通のパンより風味があるためか味は負けていなかった。これはコーヒーを飲まなければと思い立ち、カップに牛乳を注いでレンジへと旅立たせる。牛乳を温めている間も立ったまま(本当に行儀が悪いですね、ご了承ください)パンを食べ進める。牛乳が温まると、インスタントコーヒーの粉を気持ち多めに投入して混ぜ、一口飲んだ。ホットの飲み物はどうしてこんなに安心するのだろう。パンとの相性も抜群。これを森の中で食べられたらどんなにいいだろうなんて思いながら、台所でマイペースに食べ進めた。

 みかんを自分で砂糖漬けにして、いつかまたこの組み合わせで食べてみたい。少し皮も残したみかんをてんさい糖で漬けておいたら、もっとやわらかい味わいになるだろうか。それを炭酸水で割ったら美味しいソーダになるだろうし、アレンジの幅も広そうだ。自分のささやかな夢として、いつかはカフェをできたらというものがある。そのメニューに勝手にラインナップした。黒いパン、クリームチーズとみかんのせ。クリームチーズには色々なフルーツが合うだろうし、季節のフルーツと合わせるのもよさそう。コーヒーにも紅茶にもきっと合うから、軽食やおやつになっていくだろうな。そんな妄想をしながら、カフェラテとパンを味わう。とても良いお昼ごはん、癒しの時間だった。

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