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がんばれ、King Nun まけるな、King Nun


ライター:滝田 優樹

お待たせしました、お待たせし過ぎたのかもしれません。

初投稿です。私の記事では直近リリースの新譜を中心にレビュー、キュレーションしていきます。ただ、他に面白そうなことがあればフォーマットは変わるかもしれません。あくまでもここでは書きたいことを書きたいように書いていきます。

閑話休題。

ここ数年のインディ・ロック絡みの記事でやたらと目にする“UKインディー・ロックシーンがアツい”。サウス、ノースロンドンからマンチェスター、リヴァプールを中心に各地で活きのいい若手インディ・ロックバンドたちが次々と頭角を現し、活躍を果たしているのはもう周知の事実だろう。
ex. )Shame、Goat Girl、The Big Moon、Sorry、Dream Wife、etc…。

しかし、続々とめぼしいバンドが生まれてもただアツいだけで全くムーブメントの気配はない。完全に今年の主役はビリー・アイリッシュだ。
かくいう私もインディー・ロックシーンに期待をし、必至に追っていたけどビリーには完全に骨抜きにされた。

確固たるアイデンティティも持ち合わせているし、ポテンシャルも兼ね備えた猛者たちがひしめき合っていることは認めるが、少なくともテン年代以降このシーンからは発明的なサウンドも引用したくなるフレーズも生まれていない。

The 1975のマシュー・ヒーリーやPALE WAVESのヘザー・バロン・グレイシー、Wolf Aliceのエリー・ロウゼルなど、アイコンはいるのだけれど。てか、全員Dirty Hit所属でしたね…。

それを踏まえて今回のKing Nun。ググると

なんて言われちゃう可哀そうな奴ら。彼らもロンドンを拠点に活動するガレージ~グランジ、パンクを鳴らす若手バンドで、上記のDirty Hit所属。ニューウェーブ、インディー・ポップ色の強いDirty Hit内ではやや異端な存在。雑な言い方をしてしまうとオシャレで優等生的なイメージのある他バンドに比べるとやや泥臭いイメージ。テクニカルなことではなく、メンタリティなところで勝負な感じ。

そしてMV。敢えてチープに撮っていたり、やたらとアップにしちゃったりとか、なんともダサ可愛い…。

そんなところも含めて愛らしくて応援したくなっちゃう(笑)。

デビューEP『Family Portrait』では、グランジをより甘美に、時にスペクタクルに表現。ただ、レーベル内では異端でもシーンから見ればそんなに目立つものでなくて、圧倒的な輝きは確認できなかった。

先日リリースされた記念すべきファースト・フルアルバム『MASS』。タイトルを和訳すると大衆、集団という意味だけど、今作は決して“MASS”に埋もれるような凡作ではない。サウンド・プロダクションの面で言えばダイナミズムは確実に倍増しているし、ベースのフレーズが充実しているおかげでローの爽快感はかなりのもの。90年代USエモを彷彿とさせる多彩なメロディラインも相まって、結果耳愉しい。

感覚的に、衝動的に作られたものではなく、かなり作りこまれた印象を受けた。そういう意味でも“MASS”を意識したものなのかもしれない。そして、これは完全に蛇足だけど、今作は決してマスかきでもない。

まだまだ発展途上のバンドだし、みんな大好きDirty Hitには偉大なバンドが数多くいる。そんな中で末っ子的な存在として扱われているけれど、いつか彼らに噛み付く、いや、打ち負かすような圧倒的な作品を作って欲しい。


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