L字プレートに照準器を載せる
最近、私(@neko_ptx)は望遠レンズを使った野鳥の撮影にハマりつつあるのだが、肉眼で被写体を認識してから狭い画角のファインダーに捉えるまでが大変なので、照準器を導入することにした。この記事では、選定したパーツと使用感をまとめる。
照準器とは銃などの狙いを定めるために使う機器で、野鳥撮影では光像式の「ドットサイト」がよく使われている。等倍のドットサイトを使うと肉眼で捉えた野鳥を違和感なくドットサイトで追うことができ、ドットサイトの光点とファインダーの中心が一致するように調整しておけば、そのまま被写体がファインダーにも収まる。
カメラにドットサイトを付ける場合、一般的にはカメラ上部にホットシューを利用してマウントする。このマウント方法はスポットを決めて、三脚+単焦点レンズで撮影するのに向いている。手持ちで歩き回りながら撮影する場合は、カメラ左側面にL字プレートや専用のブラケットでマウントし、左目でドットサイト、右目でファインダーを覗く「両眼視」という手法が有効なようだ。ドットサイトとファインダーの両眼視についてはOMDS(OLYMPUSから分社化)の記事に詳しい。
私の場合は手持ち撮影が主で、愛機のPENTAX K-3 Mark Ⅲには常にL字ブラケットが装着されている。そこで、L字ブラケットを利用してドットサイトをカメラ左側面に装着する方法を検討することにした。
ドットサイトの選定
私がPENTAX K-3 Mark Ⅲのファインダーを右目で覗くと、左目の中心はボディ左端のちょっと外側に位置する。使用するレンズは鏡筒が太い「HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW」であるから、両眼視をするにはレンズの鏡筒に接するギリギリまでドットサイトを近づける必要がある。ドットサイトにもいくつかの種類があるが、最もコンパクトな「オープン式」を選ぶことにした。
カメラメーカーからは、OLYMPUS EE-1(2015年)とNikon DF-M1(2018年)というドットサイトが発売されており、どちらも高機能である。しかし、いずれも筐体が大きくレンズの鏡筒とドットサイトとの距離が開いてしまうため、私の場合はこれらで両眼視をすることが難しい。従ってエアガンや実銃用のコンパクトなオープン式ドットサイトを探すことにした。まずは、両眼視が役立つのかを確認する目的で、安価なパーツで「試作1号」を作成することにした。
試作1号の構成
まずは以下のような構成で試作した。
ドットサイトはANS Opticalの「x_dt-006rd」というモデルを選んだ。性能には期待できない安物レプリカだが、左側面と本体上側だけで全ての調節ダイヤルを使用できる。つまり、L字プレートにつけたままで全ての調整ができるのである。加えて、右側面には突起物がないためレンズの鏡筒にギリギリまで寄せて設置できる。
クイックリリースクランプは、余っていたものを使用した。特にこだわりはない。
ここに、以下の金物を組み合わせて20mmレールを載せる土台を作る。
アルミステーの上に20mmレールを載せて、ドットサイトをマウントすれば完成である。
上記のパーツを組み立てると、このようになる。
試作1号の使用感
実際に試作1号を装着して野鳥を撮りに行った。レンズの鏡筒が死角を生むため、左目でドットサイトを覗くとカメラの右側はほぼ見えない。ただ、元から左目のみの視界はそんなものであるし、案外違和感はなかった。
照準は早く正確になった。焦点距離450mm(画角は換算で690mm)のレンズで、飛んでいる小鳥を一発でファインダーに導入できるし、追尾も楽である。だからといって「いい写真」が撮れるというわけでは全くないが、少なくとも第一関門として「野鳥をファインダーに捉えて追尾する」ことは楽にクリアできるようになる。
フィールドの特性次第ではあるが、ドットサイトのゼロイン調整の距離は30~50m程度が使いやすいように思う。ゼロイン調整した距離以外ではレンズの光軸と、ドットサイトの疑似的な光軸のずれに由来する「視差」が発生するのだが、案外ファインダー内には収まるものだ。
試作1号を使用してみて、以下のような改善点が考えられた。
①ドットサイトを替える
今回使用したドットサイトは光点の滲みと暗さが気になる。できれば小さな被写体が隠れないように、1~3MOA (minutes of angle) 程度の明るい「点」を滲みなく照射できるものが良い。また、下方向の視界がドットサイトの照度ダイヤルに制限されていることも気になる。これらの改善点をクリアできるドッットサイトは複数あるが、武器輸出規制・送料・供給の関係で、国産の製品を選ぶのが良いと思う。
②マウント用パーツを替える
クイックリリースクランプをアクセサリー用のネジ穴がついたモデルに替える。L字金具を1つ減らしシンプルで強固な構造にできる。
コインドライバー仕様のDリング付きネジを六角穴付きボルトに変更し、固定力を増す。
座金と六角ロックナットを使用し、緩みを防ぐ。
金物をスチール製からアルミ製に変更し、軽量化する。
そこで早速パーツを集めて試作2号を作ることにした。コンセプトは「単純、頑丈、コンパクト」である。
試作2号の構成
パーツの一覧は以下のとおりである。いずれもAmazonに掲載されているので画像は省略する。
【ドットサイト】
NOVEL ARMS ABSOLUTE PRO
国産のマイクロオープンドットサイトで、実銃での試験も行われているモデル。ドットのサイズは3MOA。筐体がコンパクトで、右側にでっぱりがないため、L字プレートにマウントしやすい。レンズが大きく、基本性能の評価が高い。しかも比較的安価。海外の機種になると武器輸出規制や送料等で、同程度の機能でも2万円以上割高になる。
【クイックリリースクランプ】
Leofoto DC-12
小型のアクセサリークランプで、クランプ側面に1/4インチネジ穴がある。マウント金具を簡略化できる。
【マウント金具】
HWZ New Set of 3 Black 20mm 1913 Picatinny Weaver Rail Sections 2.5" & 4" Picatini Rail for MAGP MOE Handguard
TRUSCO 低頭六角穴付ボルト ステンレス全ネジ M4×12 13本入 B089-0412
TRUSCO ボンデッドワッシャー ステンレス M6 20個入 B200006
uxcell 六角ロックナット M4 x 0.7mm 高さ5mm 304ステンレス鋼 六角幅7mm 10個入り
軽量なL字アルミステーに長さ55mmの20mmレールを載せる。六角穴付きボルトと六角ロックナットを使い、耐候性のあるボンデッドワッシャーを使った。
上記のパーツを組み立てると、以下のようになる。
試作2号の使用感
試作1号で使用したANS Optical x_dt-006rdと比べると、試作2号で使用したNOVEL ARMS ABSOLUTE PROのドットは格段に見やすい。流石に模造品と実物は違う。晴天の逆光でもドットの光量は十分であり、滲みもほとんどない。
ABSOLUTE PROは大型のレンズを使用しており、かつ電池ボックスが非常にコンパクトに作られているため、下方向への視界が広い。カワセミのダイビングのような下方向への追尾でもストレスは感じなかった。
試作2号は全体に軽量コンパクトであるため、取り回しがしやすく撮影中に意識することはほとんどなかった。一点気を付けることとしては、パーツをどう吟味してもボルトは温度差で緩むので、使用前の点検・締め増しは必須である。中強度のネジロック剤を使用すればより確実だろう。
「試作2号」という名前ではあるが、これで完成としフィールドで使い込んで行く予定だ。何かしら改善点が出たら、いつか「試作3号」を検討するかもしれない。
おまけ:定番パーツ
照準器のマウント方法は人によって様々だが、両眼視仕様でよく使われる定番パーツをいくつか記載しておく。
・ETSUMI ドットサイトブラケット E-6673
特定のOMDS機+OMDSの照準器の組み合わせ用である。他機種で使うためにはスペーサー等が必要だ。
・Leofoto DC-12
側面に1/4インチネジ穴が1つあるクランプ。試作2号で使用した。
・Leofoto DC-22Q
裏面に1/4インチネジ穴が2つあるクランプ。本来はQDスリングシステムのストラップ用である。
・SmallRig コールドシューマウント BUC2736
上記のDC-22Qなどと組み合わせて使う。NikonやOMDSの照準器をマウントする場合に使える。DC-12&小型自由雲台とセットで使う方も見受けられた。
・ホビーズワールド SPプレートL
ホットシューからアームを伸ばし、照準器を上下逆さにマウントする。重量はあるが、右側面に出っ張りがある照準器も使用できるようになる。
そのほかにも、マジックアームを使うなど様々な方法があり、興味深く実例を拝見した。工夫して楽しく野鳥を撮りたいものである。