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めぐりめぐってめぐり逢う



これはおじいワンれふとを看取った数日後のお話。
滞りなく火葬が終わり、小さくなって帰ってきたれふとは兄犬らいとの遺骨と並んで今は一番目に留まる場所にいます。

仕事をしている時はいい。でも自宅に帰るとれふとがいないことを実感する。
ごはんの準備がないこと。今まであったところにトイレやベットがないこと。だんだんと目につくところかられふとの痕跡がなくなっていく。それがえらく寂しかった。

母はとにかく早く片付けをしてしまった。
洋服も使っていた毛布も気づいた時には処分していた。汚れているし残しておいても使えないからと言っていた。多分母なりに心の整理をしているんだと思った。

れふとが亡くなって数日後に猫のご飯を買いにホームセンターへ。
もうご飯も買わないで済むのかと思ったら途端に悲しくなってきて半べそをかいていると明るい電光の中にいる子犬たちが目についた。
そういえばしばらく(と言っても数日)犬を愛でていないな…犬ってどんなだったっけと吸い寄せられるように見に行った。

するとなんとも可愛らしい小さな子犬に惹きつけられた。
まると同じ白黒で、仮面を被っているような柄もそっくり。

生後2ヶ月になるパピヨンの女の子。猫たちに負けちゃうだろうなと思うほどに小さく、ふわふわの綿毛のようだった。
結局買えないし飼うとしてももう犬は一生飼う事はないだろうとも思っていたのでその日は普通に帰宅した。れふとを亡くしてまだ数日しか経っていないのにこんな事して薄情な人間だなと自分にがっかりもしたが、反面こんなに惹きつけられる経験は今までなかったなと驚きもした。

それからずっとあの子の事が忘れられないでいる。
願わくばどこかの誰かに幸せにしてもらってほしいと思いながらも母を連れて再度見に行った。ペットショップに同じ犬を何度も見にいくのは初めての経験だったし、ここまで心惹かれる子には今後二度と出会わないだろうから記念にと思ってパピヨンちゃんの写真が載っているお名刺をいただいてきた。

さらに翌週。友達に「写真だけでも撮らせてもらえないかお願いしてみたら」と背中を押され、でも買えないのに写真撮らせてほしいなんてどの分際で言えようかと再度の来店を迷い、そうだ!ホームページに写真が掲載されているのでは?と検索したらヒットせず、いくら探しても見つける事ができず、誰かの家族に決まっちゃったんだな〜と嬉しいかたわらもう一目だけでも会いたかったし写真欲しかったな、なんてわがままな気持ちを残して私の一目惚れ片思いが終わった3月。


HPの掲載がなく、もう誰かの家族になっちゃったんだなと失恋した私はその話を職場の人に話し、パピヨンちゃんの名刺を見せながら「これを大事に残しておこうと思う」なんて話までして思い出にしておりました。

そんなある日、母と別のペットショップに猫の用品を買い足しに訪れた時でした。
何気なく目をやったケージの中にいるじゃないか。あの仮面をかぶったパピヨンが!

「あなたここにいたの!?」と思わず声をかけた。
私があまりに真っ直ぐ向かっていったので驚いた母が「別の子じゃない?だってもういなかったんでしょ?」と否定してきたけど、絶対に間違いないと確信していた。

すると近くにいた店員さんが「どこかで見たんですか?」と聞いてきたので経緯を説明すると、どうも前回行ったホームセンターのペットショップは系列店で移動があったらしい。
もう家族が決まったと思っていたと言うと、せっかくだから抱っこしてみませんか?と言っていただき触れ合う事ができた。抱いてみると本当に綿毛のように飛んでしまいそうなほど軽かった。

母が「正直次飼うなら保護犬を検討しているし犬が亡くなったばかりだしな」と言っていたので飼えないと思っていた。そもそもまるちゃんが我が家に来て以降完全なる猫派が開花した私が犬に惹かれる日が来るとは思ってもいなかった。多分連れてくるのは母だろうと思っていたし、その時は絶対に止めるとすら決めていた。

しかしこうして何度も同じ子を見にお店に行く事がいままでなかった事。
もういないと思っていたのに再度巡り会えた事で家族会議が開かれ、家族にお迎えすることが決まりました。

どこかの誰かじゃなく、私が幸せにしてあげることになった。

自宅に来て初日の写真


実際のところ家族に迎え入れる事について色々と葛藤した。
こんなに早く新しい子を迎え入れるなんてれふとに失礼じゃないか。そもそも今保護犬・猫をお迎えしよう、ペットショップでの売買は良くないといった風潮の中で私もペットショップでこの子をお迎えしていいものなのか。そもそも飼育できるのか。猫とうまくやっていけるのか。本当にたくさん悩みました。

でも、この子じゃない子は他の場所にはいないし、今決めなければ今後巡り会うことなんかできない。そもそも私の都合や葛藤や心配事や不安その他諸々のことでずっと悩み続けるのはこの子にもれふとにも失礼なことだと思い直し、とにかく頑張って迎え入れようと決心して今に至ります。

名前はいちご。女の子です。
彼女との日々も少しづつ書き溜めておりますので、主共々見守っていただけるとありがたいです。よろしくお願いします。


薄味

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