【創作】バスを降りた彼女
「そんなんだから日本がダメになるっっ!!」
おばさんの金切り声が、夕刻の満員のバスの中に響いた。
目をやると、優先席の前で立っている中年の女の声のようだ。その横には、年配のおばあさんがしゃんとした姿勢で立っている。
優先先に座っていた若い女の人がか細い声で「すみません…すみません…気づかなかったので…」と言って立ち上がると、中年女は誇らしげな顔でおばあさんに空いた席を促した。
席を立った女の人は、大学生か社会人なりたてか判別できないくらいの年齢に見える。隙間なく人が立って