【映画感想】『ザ・フラッシュ』 ★★★☆☆ 3.8点

 超高速で活動することができる力を手に入れた青年バリー・アレンが、スーパーヒーロー・フラッシュとして活躍する姿を描いた作品。

 DCコミックスを原作とし、各作品が世界観を共有したDCエクステンデッドユニバース(DCEU)の通算14作目の作品であり、これまでのDCEUの設定を色濃く踏襲した作品となっている。特にDCEUのIFが描かれるところが作品の面白さの何割かを担っているため、これまでの過去作をある程度は履修していることが求められる作品だ。

 とは言え一方で、「2017年公開の『ジャスティス・リーグ』以来、DCEU内でそんなにがっつりクロスオーバーやってなかったし、その間にホアキン・フェニックスの『ジョーカー(2019)』とかロバート・パティンソンの『THE BATMAN -ザ・バットマン-』とかあったから、DCEUってどんなんだったか正直ぼんやりですわ」程度の感覚で見ても、十分に内容を理解できたので、そこまでシリーズを追ってきた筋金入りのファン向けというわけでもなく、ライトなファンにも丁寧な作りになっている。


 フラッシュのスーパーヒーローとしての特徴は前述の通り、超高速移動能力で、特に序盤の崩落する病院からの看護師と赤ん坊の救助シーンは見応えがあって面白い。超高速移動描写自体は、数多の映像作品で擦られに擦られてきた演出だけあってフレッシュさはないものの、独特のオレンジがかったねばっとしたエフェクトがはったりが効いているし、超高速アクションにおける1個1個のギミックの置き方が丁寧なので映像体験としてポップで楽しいものに仕上がっている。

 ただ、物語のかなり早い段階で主人公のバリーが高速移動能力を別の世界線のバリーに譲り渡してしまい、もう一人のバリーは新人がゆえに高速移動能力をうまく扱えないため、面白い高速移動描写が見られるのはほぼこの序盤だけとなっている。終盤こそ、バリーが高速移動能力を取り戻すものの、ラストバトルでは敵も高速移動にある程度対応できてしまうために、あまりカタルシスは感じられないものになっている。

 どちらかと言うと、本作では、この超高速移動能力の延長線上にある過去へのタイムトラベル描写の方が力が入っており、フェナキストスコープとコロセウムが合わさったような独特なデザインのタイムスリップ演出はかなり新鮮なものとなっている。さらに、この時点で十分フレッシュな演出に最終盤ではもう一捻り加えられ、ここにあるサプライズも乗っかってくるため、クライマックスは映像表現とストーリーのサプライズが同時に訪れ、非常に熱量の高いものとなっている。


 本作はDCEUやこれまでのDC映画を観てきた人たちへのサプライズとファンサービスが半分、タイムトラベルとパラレルワールドを巡るSFアドベンチャーが半分といった内容で、かなりエンターテインメントに振った作品となっているが、一方で、母の死を乗り越え再起する青年の物語として普遍性も同時に備えている。

 歴史改変やり放題の設定を敷きながらも、作品のメッセージは「過去に囚われず未来を生きよ」という地に足のついたものとなっており、特にバリーがある決断を下した後の最終盤のシーンは非常に胸が熱くなる名シーンとなっている。

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