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FRUTA*FRACTION

スペインのサグラダ・ファミリアだとか、日本の横浜駅だとか、そういった建造物を知っているか? 何百年も昔から延々と増築工事が繰り返され、今じゃその全貌を知る者は誰もいないって話だ。この町も似たようなものさ。

そして今、その片隅がド派手に吹き飛んだ。

「バカ! 少しは加減しろって言ったろ!」

爆風にネオンブルーの髪をなびかせ、サイバーネコミミの女が叫ぶ。
傍らに立つもう一人のネコミミ女は、ランチャーを投げ捨てて言い返した。

「あいつらの武器が誘爆しやがったんだ」

そんな会話が聴こえたってことは、聴力は失っていないらしい。それに視力も無事だ。青髪の女がこっちに近づいてくるのが見えた。

「あんた大丈夫? わたしはミイ。あっちがノラ」

彼女はそう言うと、俺が抱えていた黒いバインダーを奪い取った。
昨晩、謎の男に託されたものだ。

「……なんなんだ、それ」

「禁断の果実の断片、世界の回路図ってね。……あんたも一緒に来る?」

【続く】


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