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Mz² vol.22 『Frontrooms Rescue and Exploration Service / yanagamiyuki』

ども、意味ないなりにも生きたいほう担当のねこむらだよ。
vol.22ということだそうで。今夜紹介するのはこの楽曲です。

『Frontrooms Rescue and Exploration Service / yanagamiyuki』

miyuki氏の形作る世界は本当にすげえなこいつって毎回のように思わされているんですが、昨年の締めとして放たれたこの楽曲がマジで良すぎたので、その辺の話をして今回の企画も一旦の区切りというわけで。最後に紹介する本楽曲は「The Backrooms」といういわゆる“裏世界”のようなものを題材とするクリーピーパスタ、及びそれを元ネタとする同人ゲームなんかを下敷きとした作品となっているんですが、その辺の話はぜんぶ端折ります。興味のある方は調べてみてください。SCPとかすきなら多分刺さるよ。

『my name is』がすげえバズってたので知ってる人も多いかもだけど、ここ最近はずっとボカロでラップを歌っている表現者といった感じでしょうか。彼の楽曲はやっぱ押韻がすごい気持ち良いし、多彩ながらもパキっと巧みに切り替わるフロウが最高すぎる。もう純粋にラッパーとしてめちゃくちゃに好きです。今年リリースされたやつぜんぶありえんほど聴いた。だから今回の企画において、どの曲を推すべきかめちゃくちゃ迷ったんですよね。いやまあ一つに絞らなきゃいけないことはないって前にも書いたけど。創作者の魂の叫びである『食えないアート』や、個人的に過去最高の傑作だと思っている『ミザリーai』なんかはもう確実に外せなかったんですけど、それでもこの曲のたった一言に全てが持っていかれたので、その話をします。

おれがこれまで個人的に感じていたこととして、yanagamiyukiの創作というのは、自身やこの世界に対する陰鬱としたネガティブな想いや無常観なんかをボーカロイドというフィルター、一種のアバターを通しながら、ひたすらに吐き出しているものだと思っていました。プロデューサータグの“enemy wa itsumo miyuki!”や“watashi tachi wa misery”も自らこそが最も憎むべき敵であり、それも含めてすべてはこの悲惨な世界の被害者なんだという想いが抒情的に、それでいて酷く端的に表されていて本当に素晴らしいな。なんて思っていたんですが、これめちゃくちゃ勘違いだったのかも。はずかし。

昨年秋に公開されたインタビュー記事でかなり核心に触れた話をされているのでまあ詳しくはそこ参照してもらうとして、この人おれが思っていた以上に、ラッパーである以前にボカロリスナーだったんですね。そも最初から、ボカロの“機械としてのキャラクター性”に惹かれていた男だったんだ。人間ありきじゃなくて、ボカロありきで世界観を形作っていたんだ。ここ最近はあまりにも人の苦悩をありありと描きすぎてて逆に忘れてたや。すげえ腑に落ちました。でもたぶん世界への不満は決してFakeというわけじゃなくて、彼の中で確かに燃え続ける原動力になっているんだろうな。

さて本題。本楽曲の最後に呟かれる“その命で助けて他者を”というリリックが、もうめちゃくちゃに食らっちまったって話。上記の記事を踏まえて、あっ、この人はおれが思っていたよりも遥かに深い優しさを抱えている人間なんだなとは感じていました。それでも、これまでずっとどこか侘しく絶望的な世界を主張してきた男が、こんな希望を言葉にしたんですよ。そこから一気に盛り上がるサウンドも相まってなんかもう泣きそうになっちゃった。“助けて他者を”なんて、ちょっと美しすぎやしねぇか!?眩しすぎる……
その流れを汲んだ……かはわからないですが、今年公開された新曲もマジで冷たい絶望と優しげな音色が同居していて最高だったので、ぜひ。

あとこれはもう蛇足ではあるんですけどアウトロで『点在するエブリー』が流れる構成は、ヒラサワの『パレード』ラストで遠くからP-MODELの『MONSTER A GO GO』が聴こえてくるのを彷彿とさせますね。こういうのおもろいからみんなどんどんやって欲しい。そのうち逆再生で遊んだりとかも始めちゃったりなんかしてね。これからも楽しみにしています。

ひとまず毎日更新はここでおしまい。今後は気が向いたらなんか書いたり、書かなかったりするんじゃないですかね。そのうちお会いしましょう。

ってな感じで、またこんど!

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