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かく語りき、一輪の星

「ワット・ドゥ・ユー・ニード?」

俺は小さく呟いた。冷や汗が額を滑り落ちる。何が必要だ?決めるのはいつも自分だけ。微かな手の震えを悟られないよう、選び取ったカードを一枚、テーブルに滑らす。対面に座る男は、それを見てニヤリと笑った。

俺は通算三桁目の敗北を確信する。

「お前はな、深く考え過ぎる癖がある。どんな時でも最善の選択を取ろうとするだろ。だから読まれやすいんだ」

その男、ジョウはそう言って笑った。

「昔っから、お前のそういうところを気に入ってはいるんだがな」

俺は溜息を吐くと、彼になけなしの小銭を投げ渡し、その場を後にした。

寂れた街路に出てみると、乾いた風が吹き抜けた。微かに血の匂いがする。黄昏に染まる街は、どこか物悲しい。

「ワット・ドゥ・ユー・ニード?」

いつもの決まり文句を、口に出してみる。
何が必要だ?これは祖父の口癖だった。なんでも昔、マイアミで知り合った男から感染ったらしい。そんなくだらない話も、今となっては真偽を確かめる術はないが。

アメリカが世界地図からその名を消して、もうかなり経つ。その頃はここも、コウ・ベイと呼ばれていた。だが、灰被りの街にそんな洒落た名前は似合わない。頻発する核戦争が全てを変えた。きっとどさくさ紛れに、神も死んだに違いない。

その日は結局、そのまま眠った。
次にジョウの元を訪ねると、彼は既に死んでいた。

俺は淡紫の花を一輪、彼に手向けてやった。
乱暴に書かれた遺書にはこうあった。曰く、俺は自由を手に入れた、後はお前の好きにしろ、と。
彼の手に握り締められたままの回転式拳銃を、そっと拾い上げる。シリンダーに残された弾は五発。残りの一発は彼の頭を貫通し、床に転がっていた。

俺はまた、いつもの冗句、常套句を口に出す。

「ワット・ドゥ・ユー・ニード?」

何が必要だ?俺は、何を為せばいい?
いつだって決めるのは自分だけだ。
その手の中には、五回限りの自由が黒く輝いていた。

【続く】

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