取り残された感情の収拾について

感情の回収は日曜日の夜に行う
まるで大掃除のように
日々の
些細な感情を掬い上げるとき
だいたい取りこぼすので
全てを手帳に記録することにしたら
大変厄介なことに
生きづらいのが更に増してしまった
手元に手帳が無いと私は不安だ
いついまここどこを忘れてしまうのかと
そればかり考える
そして書けなくなったら死ねと
私は生まれたときに言われていたので
じゃあ書けばいいんですね
書きたいと赤子のことばで産声を上げたらしい
書けなくなったら
死ね
早く鉛筆の持ち方を覚えたくて
私は生き急いでしまった。
早く歳を取ったのか
それとも時空が歪んだのか
今は皆が焦り
走っているような気がしてならない
話をもとに戻そう
このように感情を採集していると
自分自身がたいへん興味深いものであることに気がつく
感情を採集するとは
自分を採集することであって
つまり感情は自分であるという方程式がここで成り立つんですね、先生。
雨のけぶる透明な夜に
一閃の光、先生にそう話しかける

ーーさん、大変成長しましたね
どうでしょうか、成長するということについて思考を掬い上げて金魚の脳内に話しかけたら彼女たちは浮き沈みが激しくなったのですが
ははは、それは君のメタファだ
そうですね、はは、私のメタファ。

取り残された感情の収集帳
手帳の始めにそう書き込んだ


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