夜の海の君

あなたに電話をする理由に
今日は旧暦の七夕だから
なんて
おかしいだろうか
そもそも
私が声を聞きたい理由なんて
数えたらきりがないのに

あなたがすきなんです
どうしようにもないんです
そちらでは晴れていますか?
織姫星と彦星は見えていますか?
こちらでは土星が見えます。

高校の英語の教科書に載っていそうな他愛ない一行ばかり。

いくらがんばっても終わらない仕事
そんなものたちと
闘っては迷い
迷っては見つけてひた走る

それでも
私は月を眺めたら幸せを想ってしまう単純な生き物
それでもいいのですか
それでも

それでもあなたは私を必要としてくれるの?

私にとってあなたは切ないひと
静かな海の花火の欠片みたいなひと
だけどそんな切ないあなたがいることだけで
私は凪ぐから溢れない

晴れた涼やかな晩には
あなたから夜の海に浮かぶ月の写真が送られてくる
私にとってはあなたが夜の海そのもの

私のこころもからだも全部
あなたの海へ
連れていってくれてありがとう


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