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LGBT禁止ゾーン

1つのnote記事を教えてもらった。そこに貼られたウェブページの内容があまりにも衝撃的で、もう3時間ぐらいぼんやりしている。英語で書かれた文章で、かなり長い。ざっと目を通して呆然としたあと、今度は翻訳機能を使って日本語でじっくり読んだら、頭が砂漠になってしまった。いまもまだ乾いた砂が舞っている状態で、迷ったけれど紹介したいからここに書くことにする。

その記事はこんな書き出しで始まる。

ドミニクの写真を見て最初に気付くのは、彼の大きな青い目です。とても青いので、荒れ狂う海を見つめているように感じます。 その次に目に入るのは、額をやさしく覆っている明るいブロンドの髪。 そして、まだまだ子供のように輝く恥ずかしそうな笑顔。
ドミニクは、仲間や教師による同性愛嫌悪のいじめの結果、ひもを使って首を吊りました。14歳でした。

The first you will probably notice looking at Dominik’s pictures are his big blue eyes — so blue it feels like staring into a raging ocean. The second — a light, blond hair softly covering his forehead. And then, a shy smile, brightening his still quite childlike face. Dominik was 14 when he hanged himself using his laces, as a result of homophobic bullying conducted by his peers and a teacher.

“Russia and Hungary’s younger sibling: how Poland is becoming a no country for the LGBTQ+ people” by Amaal Julia Paterczyk

これはポーランドに住む二十歳の人が、去年ウェブメディアに公開した記事だ。タイトルには『ポーランドがどのようにして、LGBTQ+の人たちにとって居場所のない国になったか』と書いてある。

上のサムネイルの写真にあるステッカー。LGBTを象徴する6色レインボーがデザインされていて、支援のためのものかと一瞬勘違いしそうになったがそうではない。大きなバツ印がその上に描かれている。これはLGBTに反対するためのステッカーなのだ。

日本の約5分の4の大きさであるポーランドには16の県があり、そのうち南部の5つの県が「LGBTフリーゾーン」に指定されている。フリーというのは自由という意味ではない。禁止するという意味だ。この5つの県では、「LGBTの人たちを受け入れない」という宣言が公的になされている。らしい。

私はポーランドにまったく詳しくないが、テレビや動画でのフィギュアスケート観戦を通じて、選手が親日家であること、首都ワルシャワは国際大会が開かれるほど栄えた都市であることをおぼろげにイメージしている。
歴史の上で二度国が消滅したにも関わらず独立を成し遂げたことはアニメ『ヘタリア』で知ったし、同じくアニメの『ピアノの森』で熱戦が繰り広げられた「ショパンコンクール」のシーンでは、愛国心の強いポーランドの人がショパンを同郷の偉人としてどれほど誇りに思っているかを教わった。

上のステッカーにはなかなか強烈なインパクトがある。デザインの攻撃性もすごいが、わざわざステッカーにしているということは、これをmacbookや店の窓やタクシーなんかに貼っていたりするのだろうか。

なぜポーランドでこれほど強くLGBTが排斥されているのか。国民の大半が厳格なカトリック教徒であることは大きな要因のひとつだろう。先祖代々から引き継いだ家庭を守り、それを子々孫々へと繁栄させるのが人間のあるべき健全な姿だという規範が彼らにある。同性愛者がたとえ夫婦のように暮らしていたとしても、子どもを授かることはできない。子孫が残せないのだから不健全であり、排除されるべき存在なのだと。

数年前、同じようなことを日本の国会議員も言っていた。「生産性がない」との発言に、国民からかなりの批判が寄せられた。このような発言がポーランドでは支持される。

「LGBTのないポーランドは最も美しい」と欧州議会でポーランドの国会議員がツイートしました。 「LGBTは人ではない」と法と正義の連立党の議員はテレビのトークショーで言いました。 「人権や平等について彼らが語る、わけのわからない話を聞くのはやめましょう。 彼らは普通の人々と同等ではありません」と別の国会議員が国営テレビで言いました。

“Poland without LGBT is the most beautiful” tweeted a polish MP in European Parliament. “LGBT is not people” said an MP from Law and Justice’s coalition party in a television talk show. “Let’s stop listening to this gibberish about human rights or equality. These people are not equal to normal people” said another MP in state-owned television.

“Russia and Hungary’s younger sibling: how Poland is becoming a no country for the LGBTQ+ people” by Amaal Julia Paterczyk

この記事では、2015年から2020年の5年間にポーランドで起こった、LGBTに関する出来事が紹介されている。上のような政治家の発言や、禁止ステッカーの配布、プライドパレードに参加した1000人に対して4000人以上が抗議し、卵やレンガを投げつけるなどの暴力が振るわれたことなど。

悲惨な実情が綴られる段落と段落の間に、太字で書かれているニュースがある。同性愛嫌悪によるいじめを苦に自殺した人の紹介だ。10代から20代。全部で5人。

記事を書いた二十歳の人はノンバイナリーで、自身はいじめを受けなかったがポーランドに住み続けるのは難しいだろうと語っている。一方で、自分はポーランドを永久に去ることができるけれど、住み続けたい人までが出国を余儀なくされることがあってはならないとも主張する。

2020年に書かれてから1年が経ち、もしや現状が少しでもいい方向に変わってはいないかと、LGBTフリーゾーンのその後について調べてみた。BBCが今年の11月に現地を取材したニュースがあった。「LGBTを受け入れない」と宣言していた5つの県は、加盟しているEUからその政策への批判を理由に補助金を凍結するとの通達を受け、宣言を取りやめにしたという。

BBCキャスターのインタビューに、議員がこう答えていた。「宣言を取り下げたのは緩和政策の一環です。LGBTの人も平等に扱っており、彼らを個人的にどうこう言うわけではない。これは社会一般の価値観の問題です。もしこの価値観を破壊すれば、社会や家族、特に子どもに悪影響を及ぼします」

同キャスターに訴えたいことがあるとの連絡があり、高校生が顔を出さずにマイクに向かうシーンがあった。「自分はLGBTQの当事者でもっと知識を得たいのに、学校では何も教えてくれない。そういうことが無視されている。不公平だし、悲しい」と高校生は語った。



私が作った『ビューティフル・レインボー』というマガジンに、共同運営者である水野うたさんが追加してくれたnoteです。

お互い18歳で出会った私たちは、今月共に20歳になった。そして先日、リディアはポーランドのLGBTQ+についての記事を公開した。
私たちの普段の会話の中でもよく話題に上がったのが、お互いに同性愛者として感じる苦労、悲しみや怒りだった。地球の反対側に住んでいても、私たちはお互いに共感することが出来た。

EU内で一番LGBTQ+に厳しい国と言われるポーランドで今、何が起きているのか。この記事を読めばまさにその国に住む当事者の悲痛な叫びが聞こえるように思う。
是非読んでもらえたら嬉しい。

“インターネット時代の友だち作り” Yunaさん

ポーランドから窮状を訴える公開記事のコメント欄で、言葉がないと前置きしながらも温かい声援を投げかける人に対してお礼を述べ、これからも戦っていきますと決意を述べるYunaさんの友人。これからの未来が少しでも明るいものになるよう、私も見守っていきたい。

【追記】
Yunaさんが、ご自身で作成された日本語訳のウェブページを教えてくれました。興味のある方はぜひご一読ください。


最後まで読んでくださってありがとうございます。あなたにいいことありますように。