満ち汐_002

コメント欄に赤い糸が降りてきた話(2)

昨日の記事の続きです。

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私、女に生まれたけど男になりたい時期があった。

LGBTがテーマの漫画をいつか描いてみたいな〜。

性差に揺れる人たちのドキュメンタリー映画「恋とボルバキア」を観た。これだ!

苦心して読み切り漫画「夕凪を写しに」を描く。数ヶ月温めたのち、SNSに公開。

読んでくださった方からコメントをいただく。続きが読みたいとのご所望。

2作め「満ち汐」に着手。

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前回、ここまで書きました。
1作めの「夕凪を写しに」の公開までに数ヶ月温めた理由は2つあります。テーマがテーマだし、小説が融合したやけに字の多い漫画になってしまったので、こんなの読んでくれる人いないよなーと思っていたのと、詩が気に入らなかった。

特に詩は、自分でもかなり苦労して書いたというのにしっくりこなかったので、2作めを描くと決めたときに、もう詩は入れないと誓いました。実際、書かなくていいとなったらかなり気が楽になった。

ペン入れが半分ぐらい済んだところで、私はTwitterに縦に長い絵本さんのツイートを見たのです。素晴らしい詩を讃える内容の。
その詩が前回の最後に紹介した「矜持」で、作者の名前がtamitoさんでした。

縦に長い絵本さんは、その愛らしく切なく美しい童話「カナシベリー」をたまたまnoteで見つけた私が惚れ込み、すぐにフォローした作家さんです。彼が時々Twitterで紹介している記事や作家さんを、私も好きになる傾向があったので、tamitoさんのnoteも速攻で見に行きました。

速攻で胸打たれました。

なんという透明感……繊細さ……美しさ……深さ……。
これが詩だ……詩というものだ、これが!

「満ち汐」を描いている最中にも、私の頭にtamitoさんの詩が渦巻くようになりました。tamitoさんがストレートの男性だということは、彼の小説を読んでみてすぐに察したのですが、彼の言葉の中にはなんだか女性のやわらかさも混じっているような気がしました。男性のごつごつした角ばった感じがない。女性の立場からも自然に言葉を綴ることができるような、ふんわりした心地よさが彼の言葉にはあるのです。

「満ち汐」の主人公、心の中に女性性を持つ詩人の静(せい)を描きながら、tamitoさんの詩が重なりました。tamitoさんならきっと、静の書く詩を再現することができるだろうな。静の詩の世界を見事に表現してくれるだろうなと。

しかしこれはあくまで私の頭の中だけでの空想です。tamitoさんの詩の世界を壊したくなくてnoteにコメントすら書けず、100回分の想いを込めて「スキ」を1回ぽちっと押す。
tamitoさんがもしも静の詩を書いてくれたらどうなるだろう。どんな詩を書いてくださるかしら。詩の背景にはどんな絵が合うかしら。な〜んてね、ふふ。

空想にニヤケながら、詩を割愛した漫画を仕上げ、noteにアップしました。
すると。


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・・・・・・・・・・・・・・・・・え?


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二度見。



え、tamitoさん?あのtamitoさん?
「満ち汐」読んでくださったの?ほんとに?

「とても揺さぶられました」って……。


マジっすかーーーーーー!!!!!!

おーい、母さん、水くれ、水!



あまりにも夢のような出来事に水をがぶ飲みし、缶チューハイをあおり、75分間ほど身悶えしたあと、コメントに返事をしました。

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返事はしましたが、あなた、これほどの奇跡ですよ?ありがとうございますで終わっていいのか。コメント欄に降りてきた(と勝手に私が思い込んでいる)赤い糸を、ぐっと手繰り寄せるチャンスですよ、これは。

何しろtamitoさんとは、これまで一度も言葉を交わしたことがなかったのです。仮に清水の舞台から飛び降りるつもりで、「tamitoさん、私の漫画に詩を書いてください、お願いします!」と頭を下げる決心をしたとしても、本来ならまず「こういう漫画を描いてまして、もしご賛同いただけるなら、考えてみてくださいませんか?ダメならいいです、すみません!」となるはずのところを、そこ全部すっ飛ばして、tamitoさんのほうから私の目の前に来てくださったのです、自らの足で。

ここで引いては女がすたる。
あおったチューハイでほどよく酔った勢いも手伝い、私はtamitoさんに個人メッセージを送りました。

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……恥ずかしい。
翌日はどよーんと一人反省会です。面識がないに等しい人に向かって、いきなりこんな暑苦しいメッセージを送った私は本当にバカだった。もうちょっとこう、前置きとか時候の挨拶とか、大人のクッション的な言葉がいろいろあったはずなのに。酔って書くからこうなるんだ。うう、穴があったら入りたい。

ところがtamitoさん、さすが優しく細やかなお方。丁寧なお返事をくださいました。私が詩のオファーを考えていたことへの驚き、参加したい旨、これに限らず今後もよろしくとのご挨拶。

キャーーーーー!と再び舞い上がった私は、先ほどまでの反省をすっかり忘れ、思いの丈を込めまくった、三倍の長さのメッセージを送りつけてしまいました。
そのあとやりとりを続ける中で、tamitoさんが私の想像以上に、同じ詩人である静に対して心を寄せてくださっていることがわかり、これはもうやりましょう!次作は一緒に作りましょう!と、私が頭で描いていたことがそのまま現実になりそうな流れになってきたのです。

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と、ここまで書いたところでnoteから通知がありました。昨日のかねきょさんの紹介記事がきっかけで、新たにまた紹介を書いてくださった方がいるというではありませんか!

森とーまさん、ありがとうございます!褒めすぎです!
「無言で紹介したい」とタイトルにあったので、ほんとに無言で紹介してくださっているのかと思いきや、めちゃくちゃ丁寧な解説&奥深い読解力!読んでいる途中から、なんか別の人の漫画のこと言ってるんじゃないかと怖くなってきました。

私以上に読み込み、感じ取り、それを言葉にしてくださる感激!
「あさひとゆうひ」などの漫画をほかのサイトに投稿し、嬉しいコメントをいただいた経験は多くあるけれど、noteユーザーはそこから先がすごい。深い。さすがクリエイター。森とーまさんは、「特に内容は無いぞ!BLもないぞ!男の子がずっとふたりで遊んでるかご飯食べてるだけだぞ!」という、なにやらおもしろそうな小説を書かれています。

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また長くなってしまったので、この記事はこのへんで。tamitoさんとのエピソード、次回はいよいよコラボとなった3作め「胸によせる波」にまつわる話をお届けします。

赤い糸は引くべし。

最後まで読んでくださってありがとうございます。あなたにいいことありますように。