スタジオエンジニアが教えられる程度の役者向けアフレコ基礎(準備編)※4/10改訂

はじめに

なんでこんなモノを書こうと思ったか・・・。
コロナ禍における分散収録の弊害か、本来現場などで先輩から後輩に、時には”たまたま”他人の台本が見えちゃって。と、受け継がれていっていたハズの基礎的な部分が途絶えてしまいそうだったから。
正直、これから書き連ねるものが、すぐに役立たずになることを願ってやみません。
が、とりあえず役立てて頂ければ幸いです。

映像チェック

0)映像の見かた

アニメと吹替で映像の状況が違いますので説明します。
何が違うかと言うと、吹替の場合は完成形の画と音、アニメの場合は未完成の画と無音であることが多いという点。
故に、映像データから読み取る情報が違います。

アニメの場合(一例)

アニメの場合、画の状況に寄りますが、フルカラーでない限りは大体上図のような情報が表示されています。逆に、フルカラーの場合カット番号とボールドが消えることが多いです。

外画吹替の場合(一例)

外画の場合、制作国から完成したデータが届いて、それに対して吹替を作る事が多いので、カット番号やボールドは無く、タイミングを計る情報としてはタイムコードと、本国の映像と音(原音)になります。
映画などだと、映像技術者が必要な様々な文字情報が画面の至る所に有ったりしますし、セキュリティがかかる作品などは、映像の色合いが薄くなってたり上記のように薄く文字が画面全体に入ってたり、厳しい物だと画面全体がボカシや黒塗りされてて、役者の口だけが見える状態などの制限がかかってる状態でアフレコしないとならない作品もあります。
とりあえず、アフレコに一番必要なタイムコードが何処にあるのかを把握しておくことは結構重要です。

1)タイムを台本に書き込む

外画吹替にしろ、アニメにしろ、映像と台本が手元に揃ったらやってほしい事の一番最初。自分の役のセリフのタイムコード(分秒)を台本に書き込む。
外画吹替の台本の場合、台詞のタイムが全部書いてる場合もありますが、
アニメの場合はほぼ書いてありません。
また、タイムが書いてあったとしても、時々印字ミス等で正確なタイムが書かれていない場合もありますので、チェックは必須です。

アニメの場合カット番号があるしタイム控えなくても良いじゃないかと思ってる方もいるかもしれませんが、時々アフレコ当日や別日にリテイク収録が発生した時に、画の状況がよくなってフルカラーになってたりします。そうなるとカット番号とボールドが消えますよね?
となると、頼りになるのはタイムコードのみ。
また、1カットが長く複数人のキャラのやり取りがあるところで、カット頭ではない所のリテイクや切り返しが発生した場合、今が何処のセリフのボールドなのかを把握するうえでも、やはりタイム控えるのは必要なことです。

余談ですが、とある役者さんは自分のセリフの前後のキャラのセリフの頭やお尻(要は言い始めや言い終わり)を書き込んでるそうです。
準備しやすく、かつ次のセリフに迷惑を掛けない為・・・なんでしょうか。

2)ト書きやセリフをチェックする

下図をご覧ください。

一般的な台本の体裁の図です。アニメと外画吹替とでは結構違います。これは完成形があっての作業なのか、無い上での作業なのかの違いに起因しているかと思います。アニメの方が画の状況を説明したト書きが細かく書かれていたりしますが、吹替の場合は作品が出来上がっているので、補足説明的なものが多いです。

アニメでも吹替でも、ト書きの中に感情の情報や、アドリブの為のヒントなどが書かれていたりします。
セリフをチェックする際に、同時に必ずト書きを一読するようにしましょう。

※以下、知り合いの演者さんから頂いたアドバイス
(1)自分のセリフや、自キャラに影響がありそうなト書きに
   ラインマーカーで色を付けると、ぱっと見でわかりやすくなる。
(2)漢字という漢字にルビを振っておくと、
   文字を読む事に注力せず、芝居に集中できる。
   特に複数読み方がある漢字(例えば金、きんorかね)を
   とっさの判断で読むための準備として有効。
(3)台本のページめくってすぐに自キャラのセリフがある場合、
   前のページ欄外などに書き写しておくと、心に余裕が持てる。

3)映像に合わせ実際に声に出して尺感などを測る

先に断っておくと、話の内容や演技の流れを把握する為に時間を割くの大前提なので、省かせていただきます。

まず、アニメについて。
実際に本番のつもりでボールドのタイミングで発声しながら当ててみましょう。ここで、先ほどのタイムを取ったのが活きてきます。
ボールドの出る数秒前に息を吸って待ち、ボールドのタイミングで発声するとラグが少なく尺感の長い短いが測りやすいです。
また、読んでみて余りにも尺が長すぎたり短すぎたりした時は、ト書きや画の表情等がヒントになることもあります。そこで監督さんや演出さんがどうしてこの長さにしたのか・・・前後の演技含めて考察したりすると意図が読めてくるかもしれません。

また、映像を見ているとセリフにもト書きにも書かれてないが、自キャラに動きや表情変化がある場合があります。
その場合はタイムとどういう動きなのかを台本にメモしておき、アドリブを考えておくと良いでしょう。

つづいて、外画吹替について。
吹替の場合は、映像情報以外にも本国でMIXされた音(原音)も情報として拾う必要があります。
特に語気や句読点の位置は、映像の役者がさも日本語を喋っているよう口パクの長さを合わせる必要があるので、翻訳された台本もなるべく句読点の位置を意識して作られてることが多いです。
実際に原音に合わせて読むときに、映像の役者の口の開け具合や、文節の切れ目等は良くチェックしておくと良いでしょう。

また、時々普通の会話だったら言わなそうな文法のセリフが有るかとおもいます。
それは、句読点の調整の為だったり、日本語と外国語の文法の関係で、特定の単語を原音と同じ位置に持っていかないと、周りのリアクションに合わない等の調整の為の策だったりします。不思議に思うかもしれませんが、そういった理由を理解したうえで読み込んでいたければと思います。

※以下、知り合いの演者さんから頂いたアドバイス
(1)同じセリフを何度も発声して当ててみる。
   その際、その尺の中でできる芝居のパターンや可能性を考えておく。
(2)実際にそのパターン毎にボールドに当てながら発声して練習する。
(3)セリフにアドリブ指定がある場合(例えば「(食べる音)」)、
   ボールドの尺や画の動きで「もぐもぐ」等の音の回数を明確に
   台本に書いておくと良い。
   また、息遣いを「ハァハァ」や「ハァ・・ハァ・・ハーーー」など、
   書き方で、テンポや長さの違いが見た目でわかるように書くと良い。


以上、とりあえず思い付く限りの事前準備について書いてみました。
ここに書き記したものはあくまで基礎中の基礎、それ以上の上積みを一線級の方々はしてるハズです。
その部分に関しては、是非現場で、休憩中や待ち時間で、先輩から教えてもらったりしてください。

次回は、スタジオのマイク関係などについて触れていきたいと思います。しばし、お待ちくださいませ。


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