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『SUNABACO今治』へ行ったら2回も生き返った話 【前編】

地元へ向かってひた走るバスは、集中工事のため一旦高速を降り、暗い下道を走っている。

二泊三日の全行程を終え、疲れ切っていた僕は、普段なら「勘弁してくれよ」と呟いていたかもしれない。一刻も早く家に帰りたいのだから。

でも、僕は運転手からの遅延に関するお詫びのアナウンスも耳に入らなかった。

SUNABACO今治で体験したこと。それを頭の中で反芻し、再構築し、消化しようと必死だったからだ。

SUNABACO今治で、僕は何を得たのか?

工事で到着時間が遅れることがありがたいと感じる。誰も知らない、誰も喋らないこの空間は、集中するには悪くない。


思考を縦横に巡らせる。すると、徐々に形を帯びてくる。まるで織りあげられてく布のように。


蘇生。


そうだ、僕は確かに蘇生したのだ。

それも2回も。



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SUNABACO今治でのセミナーは、またしてもSUNABACO代表のなかまこさんからのお声がけだった。

その頃、僕は重度の「SUNABACOロス」状態になっていた。

令和5年は、1月にSUNABACO高松、4月はSUNABACO江別、6月にSUNABACO八代、同月にSUNABACO今治へ行っていた。明らかに行き過ぎだ。どうかしている。

なので、普通に考えれば「もうSUNABACOはお腹いっぱい」となるはずだが、そうはならないのがSUNABACOだ。

最後のひと口と決めてレンゲでラーメンスープを口に運ぶ。満足と思い結露が終わりかけたコップの水を飲む。そうすると、またひとすすりしたくなる……

口の中から幸福な味が消え去ってしまうのが惜しくなる。それと同じような魔力が、SUNABACOにはある。

「SUNABACO行きたいなあ」

そんな願望をナチュラルにポストしたら、なかまこさんから

「イベントやりますか」

とのご返答が来た。即来た。

なんか催促したみたいで申し訳ないと猛省したが、口元と目はしっかり笑っていたと思う。

どうやらJAZZイベントをやるらしい。よくわからない。

僕の出番はJAZZイベントの翌日、資金調達のための事業計画書作成セミナーに決まった。

よっしゃやったるぜ!!! と気合が入った数日後、SUNABACO今治の主人あるじであるSUNABACOスタッフのあきさんからDMが来た。

あきさんはSUNABACO今治を地元に浸透させるべく頑張っている。頼みを断れるわけがないが、1日にセミナー2本なんてできるのだろうか? さすがにやったことがない。

と、カッコつけて返信した。バッチコイみたいな感じで。このとき真顔だったと思う。

安請け合いでセミナーを連続で2本やることになった。オイオイできんのかよ? 大丈夫なの? 死ぬの?

まあ、なんとかなるだろう。なんとかする男なんだ俺は。

そう念じて覚悟を決める。


僕は、SUNABACO今治に行く。


+++++++

2023年9月2日
《1日目 今治》

今回の旅もすべて公共交通機関をつかう。

前回のSUNABACO今治へのサプライズアタックですっかり味をしめてしまったのだ。ラク。とにかくラクなんだもん。LOVEである。

そして、旅行中に焦って仕事(note等書き物)は絶対したくない。もうこりごりだと思い、前日までに仕事を全部終えると決めてガムシャラに頑張った。

特に、秋に出版される書籍の原稿チェックがやばかった。出版社への返送期日は結構タイトで、旅行から帰ってきてからでは間に合いそうもない。

原稿と一緒に返送用の伝票も送られてきた。日付がすでに記入されている。

なので速攻でチェックした。全240ページのチェックはラクではなかったが、目を擦りながらやった。おかげで出発前に返送することができた。やればできる。

なんの憂いもなく出発できることがこんなにも素晴らしいなんて。昨日までの自分を褒めたい。

しかし、身体は相当疲れているのを感じる。行きで寝まくって回復に努めるのがベターだろう。よし、寝よう。そう決めてバスに乗り込む。

「高速道路工事のため、到着は遅れる見込みです。ご理解のほどよろしくお願いいたします…」

腕を組み寝る体制に入るやいなや、運転手さんが不吉なアナウンスをかましてきた。バスが……遅れる……だと?!

バスで名古屋駅に着いたあと、新幹線までの時間は約40分ほどだ。普通なら相当余裕がある。しかし、工事渋滞となるとどうなるかわからない。今日は土曜日だからいつもより混む可能性もあるだろう。

バスの遅延で乗り遅れた場合、払い戻しってしてもらえる? 次の新幹線予約しておいた方がいい?

考えが巡って、寝ていられる状況じゃない。

「またトラブルか。まったく俺の旅はどうしてこう……」

つい愚痴が出そうになる。でも愚痴ったところで問題は解決しない。

ああ、もうどうでもいい。知らん。俺は寝る。

そう覚悟を決めて、シートにどっかりと身体をあずけてしまう。

ありがたいことに、今日の僕の出番は夜の9時だ。最悪それまでに着けばいい。どう考えたって間に合うはずだ。


今回のイベントは2日間行われる。

初日はJAZZの生演奏が聴けるライブイベントだ。

自慢じゃないがこの猫山、音楽は全然わからない。ライブなど行ったこともない。JAZZなんてお話にならないくらいわからん。

でも、せっかくプロの演奏を間近で聴ける機会なのだ。新しい体験として望外の条件である。行くしかない。

行くしかないというか、行かないとダメなのだ。

なぜなら、こんなイベントがライブの後にあるから。

は?

自慢じゃないがこの猫山、バーテンダーなどやったことはない。お酒を作ったこともない。なんなん? なあ、なんなん?

まあとにかくだ。最悪9時までに着けばいい。大丈夫だ。

さあ、寝てしまおう。



名古屋に着く。なんと定刻通りついてしまう。寝ていたからルートはわからないが、おそらく下道を使ったのだろう。なんにせよラッキー。

朝食を食べていないので駅の中をうろついて食べられるところを探す。しかし、朝の9時はどの店も開店していない。

となれば、ここしかない。

マックは裏切らない

マックである。前回のSUNABACO今治でもここで同じものを食べている。進歩というものがない。熱々のハッシュドポテトにかぶりつきながら自分のしょーもなさに呆れる。ぜんぜん楽しい気分になってこない。

まあとにかく腹は膨れたので、新幹線に乗り込む。その前になかまこさんから下記のポストが

とてもゲストに放つ言葉とは思えない。相変わらずのクレイジーさである。てか、自分めっちゃ忙しいんちゃうんか。なんでイジる暇あんねん。

呪いをものともせず、新幹線は順調に進み、なんの問題もなく福山に着く。新幹線大好き。

途中で乗り換えた岡山で一発入れておく。疲れは簡単には去ってくれない。ドリンク系はほとんど飲んだことがなかったのだが、最近ここぞと言う時は飲むようになった。稼働時間が増やせるならなんだって飲む。

いつもの魔剤(BBハイパー)はなかった

福山でちょうどお昼ころになる。ここで昼食を食べておきたい。

福山駅の並びには飲食店がいくつか並んでいる。前回も入ったラーメン屋に引かれるが、暑くてとても食べる気にならない。なので居酒屋っぽいお店にダイブ。

マグロ刺身定食

やはり海の幸でしょう。ということでマグロ刺身定食。中トロっぽい部分はとても美味しかったのだけど、赤身の部分をよく見るとちょーーーっとグリーンに光っている。

ド新鮮なマグロは少し緑に光るものだ。なんて話は聞いたことがない、が、僕が無知なだけなのかもしれない。とりあえず食べる。特段の感動はない。俺は一体何をしているんだろうという気になっている。

店内には僕の他におっさんが1人いて、競艇だかの新聞に赤ペンで書き込んでいる。こっちは赤緑のマグロを黙々と食っている。

窓の外は曇天。冷房は入っているが湿度は高い。右も左もわからない土地で、なんとも言えない環境に包まれている。ああ、旅してんだなと実感する。


今治に向けてしまなみ海道バスに乗り込む。このバスに乗るのはもう3回目だ。前回の反省を生かして進行方向左側の席を確保する。こっちの方が景色がよく見える。

晴天が欲しかった!

バスの中で急に不安になり、MacBookを取り出して明日のセミナースライドをチェックする。ここからは景色を全然見ていない。馬鹿なんじゃないかと思う。

今治駅に到着する。前回来たのは6月。こんなに早く来ることになるとは思っていなかった。思わず「ただいま」と口をついて出る。

またきたよ

ホテルにチェックインし、まずはSUNABACO今治へ向かう。

SUNABACO今治が入っている「しまべ」ビル

入るとすぐにSUNABACO代表者のお一人であるカリンさんがいた。とても忙しそうである。あきさんにもご挨拶させていただく。いぐおさんも降りてきた。いぐおさんは髭がだいぶ伸びている。ハードな数日であったことを物語っている。

SUNABACO今治のスタッフであるみずきさんもいた。彼女は地元であり、SUNABACO今治の広報活動に力を発揮されているとのこと。地元で生まれ育ち、地元を愛する人がSUNABACOに在籍してくれるのは本当にありがたいことだ。感謝の気持ちでいっぱいになる。

なかまこさんとカンパネルラさんは2Fでリハーサル中だという。ちょっと覗きに行ったが、只事ではない雰囲気であった。

リハ中

演者の皆さんとリハ中であり、とても声をかけられる雰囲気じゃない。僕は音楽はド素人だが、ここはいまプロの現場であり、全員が集中していることが空気で感じられた。

「こんにちは!来ました!よろしくお願いします!」

なんて声は絶対にかけられない。1ミリでも邪魔してはいけないオーラが舞台を包んでいる。今夜のライブのために、全員がプロモードに入っている。

完全に場違い。お邪魔でしかない。僕は音もなくその場を後にした。


開演までは時間がある。特段行くところもない。一旦ホテルに戻って寝ることにした。何せ、疲れが残っている。

一体どんな夜になるのか、どんな出会いがあるのか、不安と期待が入り混じる。

イベント前にいつも感じる、形容し難い感覚。

これまでの僕なら、この感覚から逃げていたのだろう。不確定なものが怖いのだ。

でも、もうそんなことはしない。

この感覚の向こうに、多くの豊穣な体験があることを知っているから。

「もっと早く気がつけばよかったのにな」

そんな後悔がいつもある。

まあ、でもいいじゃないか。僕は気がつくことができた。それを喜ぼう。

もう、ロストすることはない。




さあ、とびきり刺激的な夜が始まる。




【中編】↓へ続きます!!




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