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料理は実験、失敗してなんぼ



帰国して実家にいる間、夕食をときどき作る。
普段は母が作るが、気分転換もかねて代わりに作らせてもらう。

身内以外に振舞う食事は、美味しいものでないと申し訳ないという気持ちからあまり挑戦せず何度も作り失敗しない自信のあるものを作ってしまいがちだ。
きんぴら、野菜の卵とじとか。

しかし実家だと、多少失敗してもなんとかごまかせるしいいか、と日本に帰国したら作りたかったものを片っ端から試す。
旬の食材、家の冷蔵庫にあるものとSNSやクックパッドを見比べて献立を考えるのが楽しい。

「料理が上手な人は賢い。完成図をイメージして、そこへたどり着くまでのプロセスを考え、一つずつこなしていくから」


以前言われたことがある。

たしかに数学の証明は証明する内容、着地点を決めそこにたどり着くように一つずつ要素を立証していく。国語にせよ世界史にせよ、目標点や克服する分野を決めたらそれに合わせた勉強方法を考える。

作り慣れた料理だと、適当に作っても美味しくできる。目や手が正しい動きや量を覚えているから。
しかし未知の料理だと、すべてのステップ一つ一つに慎重になる。

にんじんは切り方で合っているか
玉ねぎ一個って何グラムのを使えばいいのか
じゃがいも、茹ですぎたかも


微妙な違いが大きな変化に繋がるから気が抜けない。
完成品は想像していたものと違うこともあるし、期待以上になることもある。

もう少し小さく切ればよかったかな
醤油は少なめでよかったかも
味噌入れすぎたと思ったけど調度いいや

食べて初めて発見がある


完璧なものを出さないといけない、と緊張して作るのと違い、肩の力を抜いて作れるので失敗が怖くないし実験感覚で楽しい。


小さいころ、台所にいると「包丁は危ないから触るな」「鍋は熱くてやけどするから近づくな」など禁止になっているものが多かった。

約束を破ると怒られるのでおとなしくしていたが、今その反動で台所を自由に使えることが嬉しいのかもしれない。
私はもう誰にも文句を言われないし、思ったことはちゃんと言えるし反論もできる。はっはっは。


実家を出るのは、夏真っ只中か秋が近づくころ。

留学先に出発するまで、私の実験はもうしばらく続く。


頂いたお礼は知識と経験を得て世界を知るために使わせていただきます。