にせもので嘘つき
大切な友達の精神状態が悪いという。電話をした。僕はただただ彼女の話を聞いて、彼女の沈黙に寄り添うことしかできなかったけれど。
彼女は自分をにせもので嘘つきだと言う。どういうことなのだろう。にせもので嘘つき。
フェデリコ・フェリーニが言っていた。
「わたしは嘘つきだ。しかし誠実な人間だ」
彼女はいつかボロがでるんじゃないかとヒヤヒヤしていると言った。ボロ。
大丈夫だよ、と言ってあげたい。たとえ君がどんな人間であっても、誰にも見せることのできない本性を隠し持っていたとしても、僕は君のことが好きだよと言いたい。なぜか電話では言えなかったけれど。
人間、みんな嘘つきだよ。たまに嘘をつかない日があるよ。村上春樹さんもそのようなことを言っていたよ。みんなとは言っていなかったかもしれない。少なくとも、村上春樹さんご自身は嘘つきで、たまに嘘をつかない日があると言っていた。
人間は複雑だ。でも大丈夫。落ち込まないで。君はたくさんの人に愛されている。
愛には愛で応えよう。優しさで応えよう。喜びで応えよう。悲しさをそっと慈しみながら。
そうして夜はふける。それでも朝はくる。それは人間がどうあがいても変えることのできない真実。
大丈夫だよ。僕らは愛されている。傷つけあっても愛を交換している。嘘ばかりついて愛を探している。そうして見つける。
大丈夫だよ。僕らは生まれてきた。その個性を両手いっぱいに表現すればいい。そうすることでこの宇宙は煌めく。
いっぱい嘘をつこう。にせものにでもなってやろう。ボロもいくつでも出してやろう。それでも愛してくれる人はいる。
隣人を大切にしよう。愛そう。慈しもう。それはこの世界の淀みから僕らを掬い上げてくれる光。
僕らは光。いざ行こう。光の射す方へ。影を引き連れながら。
僕らは生まれてきた。そのことを祝おう。病める時も、健やかなる時も。
それは光。僕らという光。生きていこう。清濁併せ持つこの宇宙をまるごと愛そう。そうしていこう。
愛そう。すべてを愛そう。始めよう。
(2024.5.4)
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