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"kawaii"による新世界秩序

誰も「大人」になれない現代社会において、"kawaii"こそが私達の新たな規範となりえる概念ではないでしょうか? そもそも"kawaii"とはなんでしょうか? ちょっと真面目に考えてみました。

「kawaii」とは何か?

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美術研究家の山田五郎さんがこの動画 (10:20~12:20) で語っている「kawaii」 の概念が非常に興味深いです! 
・現代においても欧米には「カワイイの概念が無い」
・「カワイイ」は「子供っぽさ」「未熟さ」をポジティブに捉える日本独自の新しい価値観
・女性に「カワイイ」は未熟さの指摘に当たるので失礼になってしまう。日本でも1960年代まではそうだった。

肉体年齢が意味消失するVTuber/VRアバター時代において、相手の「不完全性」に萌える「kawaii」は最重要概念ではないかと私は考えているのですが、実は「kawaii」って1970年代の日本のサブカル美少女ブームが産んだ、日本においてさえ比較的新しい概念なんですよね。

普段ネットで触れ合う機会の多い外国の方は「美少女」を始めとした日本のサブカルチャーに理解がある方が多いので勘違いしがちですが、世界的にはまだまだ「kawaii」は浸透していないと言っていいでしょう。

この「kawaii」という発明は私達に何をもたらすでしょうか?

誰も「大人」になれない現代社会

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人類の古典的な価値観は、生活の中で成長・成熟し、尊敬される「大人になること」でした。世界は「かわいくて未熟」な子供と「尊敬されるべき成熟」した大人に分けられ、社会の秩序を保っていました。

大人になって、蓄えた知識を子供に還元していく。社会の進歩が遅く、ヒトの寿命が短かった旧社会ではそれでよかったのかもしれません。遺伝子をバトンタッチする中で、しっかり次世代に情報をバトンタッチしていく事が至上命題だったからです。

しかし、AI技術の登場や社会の情報化が全てを変えてしまいました。現代社会では、文化や情報は永遠にインターネットに残る「ミーム」となりました。技術進化の加速により、あらゆる技術や知識の価値は陳腐化していくのが当たり前になり「永遠に新しい事を学び続けていく」事が求められる世界になりつつあります。もはや成長に終わりはないのです。誰も大人になることはありません。

この世界において「大人になること」「成熟すること」「尊敬されること」を求め続けるのは、もはや「呪い」だと言っていいでしょう。すべての人が永遠に「未熟」であることを受け入れざるを得ない社会。むしろ「未熟であることにこそ価値がある」社会。「大人としての自尊心」に変わる、価値観のアップデートが求められています。

また、外見上年をとっている人を尊敬すること、これはDNAに刻み込まれた本能です。これは差別とか以前の問題だと思います。

相手の外見上の年齢に関わらず、世代を超えてフラットにつきあうことは正直言ってほとんどの人には不可能でしょう。自分より若い人に教えを請うのにも、ほとんどの人は抵抗があるでしょう。それは本能に刻まれた呪いであるからです。


「kawaii」による新社会秩序

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しかし、今私達は手にしつつあります。それがVTuberやVR技術の進展がもたらした「バーチャルアバター」という手段です。

バーチャル世界でアバターを纏うことで、容易に認識をハックし、美醜・年齢・性別などの固定観念を強制的に消去し、魂と魂で触れ合うより本質的なコミュニケーションが可能になったのです。そして、その時代において求められている価値観こそが「kawaii」ではないでしょうか。

"kawaii"とは、公平な存在として、お互いの「未熟さ」を愛しいと思う価値観。永遠に成長し続けるなかで、もはや変化を受け入れる「心の揺らぎ」こそ何よりも尊いと思える価値観。

「成長が不要になった」わけではありません。「無限の成長が求められる」という意味で、より過酷な時代です。誰もが未熟な存在として、永久に成長し続けざるを得ない時代をサバイバルするための、私たちの新しい生存戦略。成熟という呪縛から逃れ、無限に高みを目指し続ける時代の。

みんなの感想

"kawaii"は成長を諦める甘えではなく、無限の成長が求められる時代を「永遠に未熟な存在」として生きる上で避けられない「心の揺らぎ」こそ尊いと思える価値観かなと思っています。ある意味、大人になって安定することよりも、はるかに過酷な決断です。

かつて生命が世代を超えてようやく実現していた「進化」それに個体で対応しないといけないので、受ける負荷は凄まじいものになります。それをサバイバルするために、変わり続けるために、揺らぎ続けるために、辿り着いたのが「kawaii」っていう、新しい愛のかたちなのかなって。


人類美少女計画

私「バーチャル美少女ねむ」は「バーチャルでなりたい自分になる」「人類美少女計画」を掲げて活動しています。

よく勘違いされるのですが、私は別に美少女が好きなので全人類をムリヤリ美少女にしようとしてるわけではですw 単に現代社会の矛盾を埋めるためには他に選択肢がないし、必然的にそういう形に収束していくだろうと考えているだけです。

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実際に、現代のソーシャルVRにおいて、殆どの人は自主的に美少女アバターを選択しています。

平たく言うと、現代社会においては大人になる事は不可能なので、大人を目指すのを止めて、お互いの未熟さを「kawaii」という概念によって認め合う新秩序が生まれていくのはないか。

いずれ人々は「kawaii」の象徴たる「美少女」* に収束していくのではないか。そのパラダイムシフトを私は「仮想美少女シンギュラリティ」(特異点)と呼んでいます。その特異点を観測することが「人類美少女計画」の主な活動目的です。

*ここで言う「美少女」とは、読んで字のごとく「若くて美しい女性」のことではなく、サブカル文脈におけるkawaiiを象徴する存在全般のことです。私は性別を超えた存在と捉えています。

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