レイビョウレイ03

1日で作ったゲームで第12回ぷちコン最優秀賞を取った話

こんちは、noteはじめました。

前回のUE4ぷちコンに応募した「交点の輪舞」の話をしようと思っていたはずなのに、あれよあれよと時は過ぎ、いつの間にか次のUE4ぷちコンが来てしまい・・・そして、今回応募した「レイビョウレイ」で最優秀賞をとりました。びっくりですね。

「面白そうだから」という理由でノミネートされ「面白かった」という理由で得票一位になる。まさにゲーム製作者として冥利に尽きるというものです。
なので今日は細かいこと抜きにしてその話をします。技術的な話はまた後で。

どんなゲーム?

こんなゲーム。
説明するより見てもらったほうが良い。
ゲーム自体は既に自サイト上で公開しているので、遊んでもらえるとなお良し。

さて、終わったあとだから言えることですけど、このゲームそもそも作るつもりはありませんでした。
1ボタンで、障害物を避けて進む。このゲームの内容はそれだけ。ステージが進んでもタイミングが変化するだけ。言葉で説明しても全く面白くないんですよね。

これは、審査結果発表会で『ここらまで「あ、そういうゲームか~」と思ってたんですけど』と言及されていたことからも客観的に理解できることで、当時の自分の頭の中には、まさに「そういうゲーム」という段階までしか想像が働いていなかった。

ところが作ってみたところ、この内容でちゃんと楽しめるように仕立て上げられるし、実際高く評価されたわけです。改めて考えてみると、面白そうだと思ったものが実際に面白いか検証するだけでなく、面白くなさそうだと早合点したものが本当に面白くないのかについても、一手間かけて検証する必要があるということなのでしょう。プロトタイピングまじ大事。

ちなみに、ルールの想起元は記憶に薄っすらと残っているゲームなんですけど、名前が出てこないんですよね・・・そのゲームは、左から右に向かって、通路が重なった瞬間にレーザーを打つとコアを破壊できる、みたいな内容だったはず。もしなにか知ってたら教えてもらえるとありがたい。NewgroundsかKongregateあたりにあるかも。
(追記:Twitterでしろまるさんから一瞬のスキマというゲームでは?というタレコミがありました。あ~、これだ。完全に同じというわけではないですけど、独自性で評価してくれた人には申し訳が立たないくらいにはそのまんまですね・・・)

約1日で完成

では何故、作るつもりがないゲームを作ったのか?それは単純に「もったいないから」としか言いようがない。
技術的に作れる目処が立っていて、応募できるだけの余暇があり、音楽とキャラデザインはできている。作れるんだから、作っておいたほうがいい。
問題は、そう思い立ったのが〆切当日の午前2時だったということで・・・

起床時間がずんずん伸びていき、気を抜いて寝てしまえば全てが水泡に帰してしまう遭難者のような精神状況のなか、それは完成しました。諦めないことって大事だな、と思うと同時に美談にしちゃダメなやつだとも思わされます。

約1日というのは、UE4ぷちコンの応募が〆切翌日の10時までは受け付けているからですね。これはポスター画像をよく見るとちゃんと書いてあります。やさしい

モデル作りはぶっつけ本番

一念発起してまず最初に行ったのは、YouTubeを開き、YonaoshiさんのBlender2.8講座を開くところからでした。〆切当日にこんな悠長なことやってて完成する不思議!
前作でもモデルは自前で用意したものの、交点の輪舞のキャラクターは単純図形の組み合わせで作られた、製作の都合から逆算したビジュアルでした。今回は見た目の下書きが用意してあるので、ちゃんとモデリングから学ばなければ作れません。
人キャラでも小物でもなく、丸っこいデフォルメされたキャラがちょうど求めているものと一致しており、そしてその手法はサブディビジョンサーフェスを前提に少ない編集頂点から自由曲面のモデルを作るというもので、ここが個人的にはものすごくカルチャーショックを受けた部分でもあります。それハイポリ化以外にも使い道があったのか・・・

(余談ですが、最近公開されたzenさんBlender2.8講座はこの手法をとらず球体を直接配置しています。このような差が生まれる理由の一つとして、zenさんの講座がゴールとするVRChatが頂点数についてナーバスでなければならない環境なのに対し、Yonaoshiさんの講座はFacerigやゲームエンジンのような、とりあえず自分のPCに表示されれば御の字な状態を目標にしている、というのがありそうです)

実際、この手法は用意したデザインを作るあげるのにものすごくマッチし、習得わずか数時間でモデルの完成に至りました。モーションについてはFlashで多関節アニメに触れていた知識がここにきて役に立っています。基本は同じなんですね。
キャラクターができたことで、ようやくUE4でのゲーム製作にスイッチが入ることになります。この時点でお昼の11時。

動画ができればこっちのもん

ここからはUE4のターン。とはいえ、やることといえば特筆することもなく、ここはひたすらゲームを実装していくしかない行程です。
ぷちコンのちょっと特殊なところとして動画ができれば応募ができるというのがあり、目標はそこに置かれます。「完成してないのに動画ができてるだけで本当にそれでいいの?」と思ってしまうけれど、実はこれゲームショーとかでもよくある話らしく、トレイラーができているのにゲームは全然できてなかった、みたいな与太話は、まれにニュースや開発後記として流れてくる。ある意味ゲーム業界的なレギュレーションらしい・・・。

モデル作成から13時間半、動画作成も含め計30時間ほどかかっているものの、それでゲーム一本が作れるなら早いものでしょう。まあ、動画で見える範囲しか完成してないんですけど。
実際にゲームを公開する義務を伴うのはノミネートされた場合だけで、それ以外は自由意志に委ねられるようです。もっとも、この時点では「ノミネートされることもないだろう」と高を括っていたので、審査発表会で紹介されて焦ることになるんですが。

いざ会場へ

前日になぜか大阪にいた私が難波発の夜行バスでUE4Festの会場に駆けつけて目にしたものは、ほぼ全ての展示作品がひっきりなしに遊ばれている光景でした。登壇者のプレゼンテーションが始まっている時間ですら誰かがなにかを遊んでいる。
私はゲーム関係のつきあいが全くないので、自分のゲームを誰かにテストさせることはほぼありません。自分のゲームが見ず知らずの人たちにプレイされているのは新鮮です。それこそ展示会場の壁になってずっと眺めていたいくらい。

そもそも会場に来るまで一般投票で順位を決めるものだと知らなかったんですけど、これメチャ重要というか、フェアなようでフェアではない。
プレイを観察する中で、いくつか気付いたことがありました。
まずは回転率です。プレイヤーがひっきりなしに訪れるということは、待ち時間があるゲームが相対的に損をしているはずです。
この点で、かなり得してました。強制的に1:30で終わるので腕で差が出ない。腕前が良くても長引かないし、下手でもそれなりに遊べる。

次に思ったのは間口の広さですね。
本来は腰を据えて自宅でやるゲームとして作られているであろう作品が、展示会場だと基本1プレイ離脱のゲーセン状態になるわけなので、習熟に時間を割くことになるとなかなか厳しいものがあるのでしょう。これは単純にルールに救われたとしか言いようがない部分です。

もう一つ思ったのが先を見る楽しみです。
この会場で初めて遊べるわけですから、誰も先のことを知らない。その中で、リソースを食い尽くすことなく強制的に区切られてしまう。そして先を見るために意固地になって繰り返しプレイしたり、上手い人を求めて立ち見が発生したりする。
誰も知らないゲームをみんなでプレイするというのは、動画共有が普及した現代だとものすごく珍しいし、こういう時しか発生しない眺望でしょう。
私はその景色にアーケードゲーム黎明期の光を見たような気持ちになりました。いや、リアルタイムでゲーセン通ってなかったのでわかんないんですけど。でも、だからこそ新鮮に感じるのかもしれませんね。

この3点を鑑みて、最も得票が高いのは私かOJIGIのどちらかだろう、とアタリをつけてました。(実際OJIGIは2位でした)
個人的には、ここが技術者のたまり場でなければ、OJIGIが1位だったのではないか、と予想してます。一般票に強いんですよ、単純に笑えるようなものは・・・しかしここはレイトレーシングの仕組みが3位につけるような場所なので、おそらくバカゲーには敢えて入れない、という人も結構いたんじゃないかと。

ルールも実装も、突発的に作り上げた間に合わせの内容だったわけで、いろいろな事象がたまたまうまく噛み合った結果の評価だったのでしょう。

終わってみて

ぷちコンは実際いいきっかけになりました。作品を完成させて公開することはやはり楽しいし、色々なことに挑戦するきっかけになっています。レガシーを捨てる選択肢の一つとして捉えていましたが、このままUE4を使い続けることになるかもしれません。

懇親会もご厚意により参加させてもらえたんですが、やはり生きている世界が違いますよね・・・。強い肩書と人生経験をもつ人たちに囲まれる中、私だけ現状ほぼ無職の日雇い着ぐるみアクターなのでかなり浮いてるような気が・・・エンジニアとして偉大な仕事をしている人たちが、私と同い年とか、私より若いとか全然珍しくないわけです。多少なりと何かができることが何の自慢にもならない年齢に、もうとっくになっていたんだなあと改めて実感させられる環境でした。
そんな中で、こうして最優秀賞という実績を持ち帰れることは大変ありがたいわけです。とはいえすぐに状況が劇的に変わるわけではなく、次の見通しも立たないので、自分のできることを考えながらしばらくは暗中模索を続けてみるつもりです。

今日はこのへんで。

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