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iOS14.5 アップデート・オプトイン率の現状 (アドネットワークnend)

アプリディベロッパーの皆さん こんにちは!アドネットワークnend (ネンド) の「えばんじぇりすととーる」です。iOS/iPadOS/tvOS 14.5のリリースから1ヶ月が経たったこともあり、関連事業社さんは続々とプライバシー周りの数値出してますね。計測ツールのMMPであればATTオプトイン率、アドネットワークであればSKAdNetworkを使用してプロモーションしているアプリの割合、国内外のデータがバンバン入ってきます。皆さん積極的に内部情報を外部に提供してますね。nendも出します!では行きましょう!っていう流れがある意味普通かと思いますが、余り他社さんが触れていない側面にも触れながら冷静に数値を見ていきましょう。

14.5以降がインストールされた端末の普及率

何はともあれ、この数字が今を把握する上で一番重要です。関連各社が積極的に発表しているオプトイン率よりも注目度は上がります。なぜか?広告マネタイズ用のnendSDKの様に、AppleはAppleが定義する「トラッキング」を行うSDK搭載のアプリに対して、ATTポップアップ(詳細は以前の記事をご参照)を必須にし始めたOSのバージョンが、iOS/iPadOS14.5以降だからです。この普及率が高くなればなるほど、スマートフォンの広告業界がプライバシーを軸に、変革していく見込みが高まります。nendは日本向けのアドネットワークになるので、手馴らしとして、nendが連携する海外事業社さんの中で公表されている数値から見ていきましょう。

adjust - "Currently, the iOS 14.5 adoption is below 15%" (15%以下/グローバル - 5月26日リリース記事)
appsflyer - 「iOS14.5のアップデート率」「Japan」選択→カーソルを青色のゲージの上に置く。最終更新5月25日:16%【日本
Kochava - ATTの考察はあるが29日時点での発表なし
Singular - 1つ目のグラフ 5月17-20日計測で、19%【日本
Flurry - 1つ目のグラフ 5月16日 15%【グローバル
nend (以下グラフ) - 5月28日 18.8%【日本

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少しそれぞれの数値について説明します。nend以外は所謂「トラッキング」を行うプロモーションのアプリ内に実装されているSDKになるので、彼らの数値は恐らく、その広告主アプリをインストールしたユーザーの内、14.5以降のiOS/iPadOSを搭載した端末の割合です。それに対してnendの数値は、iOS/iPadOS向けの広告マネタイズnendSDKを搭載したパブリッシャーアプリの中で、nendの広告が表示された端末の内、14.5以降にOSアップデートされた割合です。それぞれのSDKの日本でのリーチと、広告表示からのインストール割合で考えると、nendの数値の方がざっくりとした感覚で言うと正確かなと言えると思います。アプリ市場の6-7割のアプリが導入していると言われるfirebase SDKの数値をGoogleが発表すれば、そちらの方がより正確になりますが、彼らはまだ公式に発表していません

14.5以降の端末は20%未満

このそれぞれの数値からの考察は、iOS/iPadOS14.5のリリースから1ヶ月も経っているのに、まだ国内のiPhone/iPod/iPadの端末で14.5以降のアップデートがされているものは、20%も満たないということです。計測ツールSDKの内、Flurryがこのアップデートのトレンドを過去OSアップデートから解説しています。中のグラフは見やすく分かりやすいと思いますが、あるタイミングでアップデート率の坂が急になっています。これまでは、新しいiPhoneが販売されたタイミングを境に、iOSアップデート率が上昇する事はnendでもありましたが、今回のFlurryのデータは新しいiPhoneのリリースと被らないiOS14.3~14.4.2の数値で、iOS14.5以降のアップデートも新iPhoneと被っていません。OSをアップデートする主な理由の一つにバグの修正があるので、アップデート対象にしたいOSバージョンの端末をめがけて、Appleはアップデートのプッシュを掛けているのかもしれません。20%未満という数値から、今は所謂アーリーアダプターを中心に端末がiOS14.5以降にアップデートされていると考えて良いのではないでしょうか。その認識を元に、ATTの数値を見てみましょう。

ATTオプトイン率

各社の数値を見ていく前に、このオプトイン率について少し説明します。この数値が高ければ高い(ATTダイアログでトラッキングを許可するユーザーが多い)ほど、これまでと変わらないアプリマーケティングができる認識があります。積極的にこのオプトイン率が高い分析結果を外部に公表、もしくは意識的に受け入れることで、これまでの既存路線の維持ができる企業もあります。前回のATTの回で触れましたが、少しこのオプトインについて関連する箇所をおさらいをしましょう。

■ ATTが3=authorizedの状態の時に、初めてIDFAが取得できる (14.5以降は0, 1, 2の時に取得ができない)
■ 端末を特定して、広告の成果計測ができるIDFAマッチングを行うためには、プロモーションする広告主のアプリ、その広告を表示するパブリッシャーのアプリ、この双方のアプリで3=authorizedの状態になっている必要がある。
■ オプトインしたユーザーは、端末の「プライバシー」→「トラッキング」の設定で、ATTのステータスを3から2=denied (拒否) にアプリごとに切り替えることが出来る(以下Appleの端末内での「トラッキング」「詳しい情報」の該当箇所を抜粋)

"Appからのトラッキング要求を許可"を無効にすると、許可を求めようとするAppからの許可の要求はすべてブロックされ、あなたがトラッキングされないように要求したことが自動的にAppに通知されます。さらに、以前にトラッキングの許可を与えていたApp以外のすべてのAppで、デバイスの広告識別子へのアクセスがブロックされます。以前にトラッキングの許可を与えたAppについては、"Appからのトラッキング要求を許可"の設定を無効にすると、同時にそれらのAppにトラッキングを停止するように指示することができます。

ATTオプトイン率 - 各社公表値

***数値は前述のリンク先記事からの抜粋 (Flurryを除く)
adjust - Wordscapes (30.64%) Animal Transform (70.36%) Blockscapes (26.71%) Save the Girl (74.74%)【グローバル (恐らく)】
appsflyer - (既存を含む) アクティブユーザー 全体:38% / アプリごと:36%、新規ユーザー 全体:29% / アプリごと:26%日本
Kochava - 公表なし
Singular - 23.22% (グラフ4つ目: How many iOS 14.5 users give apps tracking permission?)【日本
Flurry - 14%グローバル
nend - (以下グラフ) 11%日本

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nendの数値はアプリ内で広告を表示させるパブリッシャー向けのnendSDKの数値で、iOS14.5以上、iOS14.5未満の各数値はそれぞれのバージョンごとの全体割合におけるIDFA取得率になります。「iOS14.5以上」はATTダイアログを出している、出していない(ATT対応していない)に関わらず、端末が14.5バージョン以上の端末の内、IDFAが取得できている割合。ATT対応しているパブリッシャーアプリで更にセグメントを切れば、表示の11%より高い数値になり、今のところ大体20~30%の数値に落ち着く感じでしょうか。「iOS14.5未満」は上述と同様、ATTダイアログに関わらず(iOS14からATTダイアログの表示可能)、IDFAが取得できている割合です。Appsflyerはこの記事 (昨年10月28日付) で、iOS14の公式リリース以降、LAT (Limited Ad Tracking) 率が上昇した=IDFAが取得できない割合が増えたことを指摘しています。この傾向はnendでも同様で、iOS14リリース以降、iOS/iPadOS全体のLAT率は日ごとに増え続けています。

ざっと各社の数値も含めて書きましたが、ご覧の通り、精度の差こそあれ、ATTオプトイン率に対しての発表の基準がバラバラなので、ATTオプトイン率は参考程度として捉えると良い気がします。ただ、nendからの視点で各社含めたオプトイン率とその考察を見たときに、ある程度の傾向は出てきます。100%必ず当てはまるわけではありませんが、それを書いていきましょう。

オプトイン率:カジュアルゲーム > コアゲーム

adjustが発表しているカジュアルゲームの高いオプトイン率が示す通り、nendでもゲームのカジュアル要素が強ければ強いほど、オプトイン率が高くなる傾向はあるように思います。全体平均が20~30%に落ち着く様であれば、カジュアル度が強いゲームは30~40%越えていても珍しくない。(ハイパー) カジュアルゲームは50%越えのオプトイン率を目標にPDCAを回してもしても良いかもしれない。アプリ内広告の全体平均eCPMで、IDFA取得あり、なしの違いで、場合によって20~40%程度の収益差が生まれることもあるので、広告マネタイズを主軸とするアプリでは、いかにオプトイン率を高めるかにも注目する必要が出てくると思います。

オプトイン率:ブランディング > ノンブランディング

この傾向は海外事業社の周りでも良く話される傾向の一つで、nendでも当てはまるかと思います。所謂固定のファン層がいる会社やゲームのタイトル(シリーズ)、あるいは一般社会で認知度が高い会社の製品などはユーザーがオプトインする確率が高くなる。ここでは、TVCMを打つ=ブランディング力が強い、といった明確な基準はない様に思いますが、我々の立場からすると、nendの様な大規模な広告ネットワークで、ダイレクトレスポンス型のパフォーマンス広告をガンガン回すことで、その製品(アプリ)の認知度はかなり上がります。計測ツールMMPの立場からすると、アプリのジャンルを問わずそういったアプリはインストール数が多い=ブランド力(認知度が高い)がある=オプトイン率が高い、という風に捉えられるのかもしれません。

オプトイン率のコホート・デモグラフィーが出せる

これも海外事業社の周りでよく聞かれる話の一つです。既に傾向が出始めているようなので、オプトインするユーザーの分析は今後広く行われていくことになるかと思います。例えば、年齢層の違い。カジュアルゲームを好むユーザー層は、どちらかというと若年層寄りになるので、アプリによってはオプトイン率も若年層 > 中高年齢層。性別/ジェンダーで見ると、例えば男性 > 女性 になっているなど。時間軸、起動回数の軸でオプトイン率を分析することも可能かと思います。ただ、ここで考慮しないといけないことは、1つの端末の中に無数のアプリがあり、その端末の所有者は全てのアプリに対して同じオプトイン、オプトアウトの選択をしないだろうということです。その選択の違いを決めるものは何になるのか、それに対しての細かい分析が進んでいけば、今後その指標を元にオプトイン率を改善していく動きが生まれるかもしれません。

終わりに一言

ここまでざっくりと、iOS14.5リリースから1ヶ月経って把握できる傾向をまとめてみました。いかがでしたでしょうか。広告プラットフォーム(アドネットワーク)がオプトインの数値とその考察を外部に出すこと自体珍しいことの様に思います。今回のnoteを通して、プライバシーマーケティングについての理解と準備が進むようでしたら、私も時間の折を見て書いた甲斐が出てきて、嬉しいなあと思います。

nendでは「プライバシーMktg/marketing」のオープンSlackチャンネルを用意しています。このリンクからどなたでも参加できます。今回公表したnend数値、国内の14.5アップデート状況の推移、今後の数値など、外部共有して意味のあるものを積極的にSlack限定で出していきたいと考えています。是非参加して、チェックしてください!

次回は予定していたiOS14の最後のトピック、Private Click Measurement周りのweb-app, app-webについて書きたいと思います。それでは皆さん、次回お会いするまでお元気で!