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ターンカードは誰のもの?~ボードファクター別EQ・EV分布~

こうして記事を書いていると、有難いことに、たまにnoteでサポート(投げ銭)を頂いたりします。

これまで、そのお金の使い道は特に決めていなかったんですが、ふと、貰ったサポートをプライズプールにして、フリロトナメを定期的に開催したら面白いかな、とか考えているところです。

趣味で続けている集合分析の記事を起点に、サポートがフリロを通じてまたプレイヤーに分配されていけば、一種の経済循環みたいで綺麗ですね。
(とはいえ、今のところ$40ほどのプライズプールしかありませんが。)

そのうち試験的にやってみようかなと思います。
最近では、ポーカーやるよりも、ポーカーの場そのものが好きなんです。


1.導入

今回は、各ターンカードを一般化したボードファクターについて、EQ・EV分布を重回帰分析しました。

シチュエーションは、BBvsBTN(3bet pot)において、フロップでレンジベッティング(全レンジ35%potとストレート・モノトーンボードのみ全レンジ25%potの二枚刃戦略)に対し、BTNがコールした後のターンです。


なお、詳細なレンジやPot Size等は、前回記事もご参照ください。


2.シチュエーション状況のおさらい

BTNvsBBの3bet potは、他のポジション間における3bet potに比べ、お互いに広いレンジでスタートしています。

フロップでは、3betをしたオリジナルのBBがハンドレンジで優位性があり、ほぼ全てのボードで50%を超えるEQとなります。
(ストレート・モノトーンボードの場合に、BBのEQは低くなりますが、それでも50%を下回ることはほぼありません。)

また、上記の高いEQを背景として、BBのEVについても、BBは9.09bb/16.0bbものEV(1,000フロップの平均値)が見込めることがわかっています。

こうした広いレンジvs広いレンジのフロップにおいて、GTOは、幅広く小さいCBを打つことを推奨してきました。

このBB側のCB戦略は、いわゆる少し前に流行った「レンジベッティング」によって、概ね代替可能であることもわかっています。

BB側のレンジベッティングに対して、BTN側の対抗戦略としては、基本的に広いレンジでCallすることになります。

上図は、[Ks7d3c]ボードにおいて、BBのレンジベッティングに対するBTN側の対抗戦略です。

驚くべきことに、BB側の3bet⇒レンジベッティングに対し、BTN側はあらゆるペア(22のポケットペアも含む)はもちろん、Aハイやバックドア2種からコールしていることがわかります。

このように、広いレンジ間における3bet potのレンジベッティングに対しては、BTN側はフィットorフォールド戦略(フロップでヒットした時のみディフェンスする)で対抗するにはあまりに弱すぎるため、幅広くディフェンスしなければならないことがわかります。

よって、CB⇒Callで進んだターンのストリートにおいても、BBvsBTNは、フロップ同様の優位性と広いレンジを保ったまま進行しています。


3.分析条件

まず、分析対象については、フロップで分岐した
①35%レンジベッティング(76.6%のボード):30通り
②25%レンジベッティング(23.4%のボード):10通り
の計40ボードにおけるターンカードを分析しています。

ただ、1つのボードに49通りのターンカードがあるため、総計は1,960通りのターンをサンプルとしています。

シート40個に及ぶ、なかなか果てしない作業でした。

ちなみに、データの体裁は整えていませんが、ファイルで欲しい方は、連絡くれれば送信するので好きに使ってください。


次に、ボードファクターですが、あまりに説明変数の数が多かったため、以下の2つの重回帰分析に分割しています。

①:ターンカードのボードにおける大小について(ボードナンバー)
②:ターンカードによるテクスチャの変化について(ボードファクター)

それぞれの定義については、前回記事で扱ったとおりとします。
(下記の図中にも、説明変数の概要は書いています。)


最後に、分析方法としては、以下の4パターンとしました。

<EQ>
1.説明変数①(ボードナンバー)の影響によるターンのBBのEQ変化についての重回帰分析
2.説明変数②(ボードファクター)の影響によるターンのBBのEQ変化についての重回帰分析

<EV>
3.説明変数①の影響によるターンのBBのEV変化についての重回帰分析
4.説明変数②の影響によるターンのBBのEV変化についての重回帰分析


4.ボードファクター別EQ分布

上記EQ-1.ボードナンバーによるBBのEQ分布は、下図のようになりました。

ここでの「係数」とは、特定のボードでのターンカード49通りにおけるBBの平均EQ値を基準として、各説明変数が該当したターンが落ちた場合に、何%増加するか(または減少するか)を表しています。

例えば、一番上段のOverでは、ターンカードがフロップの3枚よりも大きいカードが落ちた場合([Qd8c5c]におけるA,Kなど)に、平均的なターンより+2.54%のEQが見込めることを表しています。


次に、EQ-2.ボードファクターによるBBのEQ分布は、下図のようになりました。

上記のボードナンバーおよびボードファクターについて、表からわかることをまとめてみました。

<ボードナンバー>
・OverCardのターンは、オリジナルであるBB側のEQを平均から+2.54%上昇させる。
・Topが重なるパターン([K85]のターンKなど)は、BB側のEQを+0.70%上昇させる。同様に、Botが重なるのも+0.48%ほど上昇。
・Midが重なるパターンの評価はまちまち。
・Top未満でボードにペアを作らないカードは、全体的にBB側に不利となり、EQを平均から▲0.70%~▲1.10%ほど低下させる。
<ボードファクター>
・ボードにペアを作るカードは、BB側のEQに+0.42%ほど有利に働く。
・ストレートコンボを作るカードやフラッシュを作るカードは、BB側のEQに▲1.37%~▲1.52%と大きく不利。
・2nd未満かつペア・コネクタ・ストレート・フラッシュを作らないような([QcTc6d]におけるクラブ以外の7、5~2など)、一見関係ないラグのターンカードは、BB側のEQを+0.48%ほど上昇させる。

※本来、%の差分を表す単位は「ポイント」なんですが、見やすさを優先したので、そこはお見逃しを。


5.ボードファクター別EV分布

EV-3.ボードナンバーによるBBのEV分布は、下図のようになりました。

ここでの「係数」とは、特定のボードでのターンカード49通りにおけるBBの平均EV値(bb換算)を基準として、各説明変数が該当したターンが落ちた場合に、何bb増加するか(または減少するか)を表しています。

同じような例ですが、一番上段のOverでは、ターンカードがフロップの3枚よりも大きいカードが落ちた場合([Qd8c5c]におけるA,Kなど)に、平均的なターンより+0.98bbのEVが見込めることを表しています。


次に、EV-4.ボードファクターによるBBのEV分布は、下図のようになりました。

上記のボードナンバーおよびボードファクターについて、表からわかることをまとめてみました。

<ボードナンバー>
・OverCardのターンは、オリジナルであるBB側のEVを平均から+0.98bbほど上昇させる。
・Botに重なるパターンも、BB側のEVを+0.30bbほど上昇させる。
・Midに重なるパターンは、BB側のEVを▲0.21bbほど低下させる。
・そのほか、全般的にTop以下のカードは、BB側のEVを▲0.20bb~▲0.40bbほど低下させる。
<ボードファクター>
・ペアやコネクタを作るカードは、EVに対してはほぼ横ばい。
・ストレートコンボ・フラッシュコンボを作るターンカードは、BB側のEVを平均から▲0.54bb~▲0.63bbほど低下させる。
・反対に、ラグ(ストレートやフラッシュを作らず、ボードにあまり絡まないターンカード)は、EVを平均から+0.36bbほど上昇させる。


6.まとめ

上記の図を全てまとめて1枚の画像にしました。
図の左がBBのEQ分布図、右がEV分布図です。

この図から、BBのEQおよびEVは、どうやら正の相関を持っており、EQが高くなればEVが高くなり、EQが低くなればEVが低くなる関係にあることがわかります。

そのうえで、今回の分析の結果をまとめると、以下のようになりました。

<BB側に有利なターンカード(EV値基準、上から影響が強い順)>
・ターンでOverCardが落ちるパターン
・ラグのカードが落ちるパターン
・ボードにペアを作るパターン(特にTopまたはBot)

<BB側に不利なターンカード(EV値基準、上から影響が強い順)>
・ターンでフラッシュコンボを作るカードが落ちるパターン
・ターンでストレートコンボを作るカードが落ちるパターン
・Top未満でボードと重ならないカードが落ちるパターン
・ボードのMidと重なるパターン


7.終わりに

以上が40ボード1,960通りのターンカードのEQ・EV分析の結果になります。

ただ、一般論としての「ターンカードの良し悪し」の傾向はわかりましたが、疑問はまだまだ残っています。

・結局、BB側のアクションはどうすりゃいいの?

・フロップのボードテクスチャごとに分類すれば(ハイボードやローボード、モノトーンボードなど)、もうちょっと特徴が出るのでは?

それはそれとして、これから分析を頑張っていきましょう。

なにせ、ターンカード集合分析の道のりは、まだ始まったばっかりです。


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