新規事業につまずいたら ~ アニマルスピリッツを呼び覚ます3冊

明治以降の日本は、世界に名だたる企業を、数多く輩出してきました。しかし、バブル経済崩壊後の90年代以降は「選択と集中」の掛け声のもとに、既存事業の利益強化に意識と資源が投下され、企業内外で事業領域を広げる挑戦を怠ってきた感があります。

同時期の米国や中国では、アマゾン、フェイスブック、ネットフリックス、アリババ、テンセントなどの新興企業が大きく成長し、世界中に展開しました。また、既存大企業でも、ハードウェアからソフトウェアへ軸を移し、さらに現在はサービス事業へとシフトするアップルや、デジタルトランスフォーメーションを実行する流通大手のウォルマートなど、変化を厭わず、新たな領域を取り込み拡大する企業をみると、我々はどんどん置いて行かれている感覚になります。

昔のようには新たなグローバル企業が生まれない、また既存の大手企業が新たな事業領域にどんどん展開するダイナミズムが失われているのは、少子高齢問題を抱え、成熟した経済の中で、容易には新規事業の成長を見出せないという構造的な問題のせいかもしれません。一方で、短期的な利益を重視したここ数十年の「選択と集中」の結果として、本来持っていた起業家精神を忘れてしまっていつつあるのかもしれません。

そんな中で、大手企業でも収縮する既存事業に危機感を持った経営者が、イノベーションを最大の経営課題とし、新事業の創出に躍起になりつつありますが、一朝一夕で順風満帆に成功するとは限らないので、何度も障害を乗り越える、アニマルスピリッツを取り戻さなければ、勝率は上がりません。

挑戦は諦めたら即座に負けです。新規事業に挑戦しているイントラプレナー、アントレプレナーが壁にぶつかったときに、読むと勇気を奮い立たせる書籍を紹介します。

① 破天荒フェニックス オンデーズ再生物語

債務超過に陥ったメガネ屋のオンデーズの社長になった著者が、再生と成長のために戦い続ける実話に基づいた小説。

前のめりの挑戦は倒産の危機を生み出し続けるが、「火事を消すなら爆弾を」、「仕事の苦しみは成長によって洗い流すしかない」といった姿勢は、人を動かし事業を前進させていく。

自分はここまで挑戦できているのか、問い直す良い機会を提供してくれるはずです。

② HARD THINGS 

エアビーアンドビー、ギットハブ、フェイスブック、ツイッターなど現代を代表する企業に投資をしてきたベン・ホロウィッツ氏自身の資金難、株価急落、レイオフなど壮絶な体験を描き、孤独で過酷で、そして逃げ場のない状況において、どう考えて、どう行動するべきかの指針を示している。

「起業家にとって人生は苦闘である。苦闘を愛せ。苦闘は、偉大さが生まれる場所である」、「困難だが正しい決断をするたびに、人は少しずつ勇気を得る。逆に安易な間違った決断をするたびに、人は少しずつ臆病になっていく」といった言葉には重みがあり、自分の心をコントロールする重要性を体感できる事例を紹介している。

平坦な道などないことを理解し、自分の覚悟を再確認できる良著です。

③ ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

ペイパル創業者のピーター・ティール氏が、新しい時代を切り開く事業を、ゼロから事業を立ち上げる基礎となる考えを提示している。

一般的に、新規事業は多くの反対意見と対峙することになるが、そもそも時代を切り開くような事業は、これまで見過ごされてきたからこそ創造できるものであり、大勢の人が手放しで称賛するようなものであってはいけないという当然の事実に気付かせてくれる。

誰も解決しようと思わないような問題こそ、いちばん取り組む価値がある。そして、解くのが不可能な課題と難しい課題を見分けることを諦めない。

改めて、新規事業に取り組んでいる理由や姿勢を明確にする機会を与えてくれる書籍です。


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コメント2件

新規事業や新産業創出を目指す必要があるという危機感に共感いたします。
 日本において有効な方法は、すでに成立している企業の事業ポートフォリオを若返らせることであろうかと思います。
 私自身、大手企業を渡り、現在6つ目の新規事業創出に取り組んでいますが、直近3つは失敗しています。平成後半を振り返り、既存事業の成功率は変わらなかったのですが、新規事業は非常に難しくなったと感じています。
 こういった状況の中、明治期のようなゼロからのスタートという考えではなく、昭和平成を超え、弱りきった企業内から創出する新しい起業精神と方法論を必要としています。
 ぜひご紹介いただければと思います。よろしくお願いします。
tedさん、6つも事業に取り組まれたことは、非常に稀有なご経験だと存じます。

おっしゃられる通り、右肩上がりでない時代の新規事業創造は、限られたパイの中での過当競争に巻き込まれる可能性が高いですし、物質的に満たされた状況において新たな課題を発見すること自体も難易度が高いと感じております。

どのくらいの規模の事業創造目指すかで方法論は変わってくるかと存じます。新産業創造を目指す場合は、ピーター・ティール氏がリーン方法論を否定しているように、試行錯誤ではなく、骨太に社会課題をとらえるべきだと思っています。
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